可愛こぶっても可愛くない

wano

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日常

いつもの距離

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「ん、じゃ俺帰るな」
「帰っちゃうの?」
「まぁな、母さんも飯作ってんだろうし」
それだけじゃないのもまた事実なのだが、とりあえずは口をつぐみカバンを手に取る。
「あらぁ椿ちゃん帰るの?」
「あ、はい」
「椿ちゃんのお母さんにも宜しくね、あとめんどくさい無い範囲で良いから桃のこと宜しくね」
また答えづらい話題に適当に笑ってリビングを出た。

「椿ちゃん」
玄関で靴を履いていると桃が声をかけてきた。
その声はすこし強ばっていて、俺もすこし身構える。
「ん?」
「椿ちゃん...あの、」
「やめてくれ桃」
「...分かった...また明日ね!」
「うん」
バカのくせに気を利かせて、それでいて慣れてないことをするものだから繕うのが下手くそで
またそんな顔をしてなんて思うけれど
ここで俺が何も言わなければまた戻れるから、変な風に意固地にならずに気持ちに蓋をしていつも通りの距離に戻れるのだからと痛む心を無視して、ニシっと笑って桃の家を出た。


「ただいま」
「おかえりー、仲直りできたー?」
「あー...ん」
仲直りとか喧嘩したわけでもないが今の状況を客観的に見るとそうかと頷いた。自分への洗脳も込めてそのまま2、3回首を揺らす。
何も無かった。
そう、特に何も無かった。
「ご飯食べるー?」
「いや、うーん...後で食べる」
「もう、一緒に食べないと面倒でしょう!洗い物する訳でもないのに全くもうあんたは!」
聞いといて流石に理不尽だとは思いつつ適当に謝り自分の部屋に入る。なんだかんだと文句は言われるものこういう時無理やり何かさせようとしない母親はきっと優しいんだろう。
俺もそんな人と結婚して子供作って...それこそ親父のように。
「っだぁぁぁ!なんで桃だ!」
結婚相手を想像しようとしても背が低くてふわっとしているような女の子がイメージできず、何度やっても自分より背が高くてがっしりとしてちょっと抜けてる男しか想像出来ない。
暫くじたばたと枕に顔を押し付けて想像を振り払おうとしたが、全く効果は現れず桃の笑顔だとか泣き顔だとかが流れていく。

「...いつもの距離」
1歩後ろから俺を目指して歩く桃と、桃の前を堂々と歩く俺。
時々喧嘩もしたけどずっと変わらなかった距離。
努力して作ったわけでもない関係を俺は修復しようと努力した。
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