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番外編『邯鄲(かんたん)の夢』
僕の世界の中心は【1】
「───……なに? どうしたの?」
すっかり冷めてしまったオムレツを、電子レンジで温めて、まいさんと向かい合う夕飯。
おかわりの入ったお茶碗を受け取って、またオムレツに箸を差しこんだところで、まいさんの視線に微笑んで尋ねる。
僕がまいさんを見つめ続けることはあっても、その逆はあまりないから───僕はわざと気づかない振りをして、まいさんの物言いたげな眼差しを独占していた。
まいさんは、僕のうながしを待っていたようで、間、髪を入れずに言った。
「あんた……いつもアレ、持ってるの?」
「あれって、コンドームのこと?」
僕の答えに、まいさんの手からゴトンとお茶碗が転がり落ちる。
……ええっと、訊いてきたのは、まいさんのほうだよね?
苦笑いしながら、まいさんの質問の意図を考える。
うーんと……学校から帰って来て、着替えもしないでいたから───。
「……持ち物検査されたら、お父さんが学校に呼ばれちゃうかなぁ?」
ふふっと笑う僕を、まいさんはうろんな目付きで見返してきた。
「なんで、学校に……持っていく必要なんか、あるのよ?」
あれ? まいさんが気にしてるのって、持ち歩いてる理由なのかな?
「なんで、って……。
だって、今日みたいに、急にまいさんとエッチしたくなったら困るでしょ? だから」
にっこりと笑ってみせた。
他に理由なんて、あるわけなかった。
こんな単純なこと……なんでまいさんには解らないんだろう。
「あんたって……」
言ったきり、絶句するまいさん。
困ったな、こんな言葉が聞きたかったわけじゃないのかな?
まいさんは思いだしたように、食事に戻った。
釈然としない様子のまいさんに、僕は口を開く。
「ねぇ……まさかとは思うけど……。まいさん、僕が浮気してるとか、思ってたり……する?」
探るように、まいさんを見つめる。
一瞬だけ動きを止めて僕を見返したまいさんは、気まずそうな表情で僕から視線をそらした。
「───だって、あんた、すっごくモテそうだし。なんか……そういう誘惑多そうじゃない。
あ、だからって別に、あんたが学校でエッチしまくってるんじゃないかとか、そんなこと思ったんじゃないから……って! もうっ……、私、なに言ってるんだろう……。
───あーっ、ゴメン! いまの話、全部忘れて!」
まいさんの言葉は支離滅裂で。とうてい、論理的とは言い難くて。
なのに、僕にはまいさんが、
「本当は何を一番に伝えたいのか」
が、解ってしまった。
……僕の脳内にある『まいさん語翻訳機能』は、とてつもなく優れているようだ。
……なんだか少し、胸のあたりがくすぐったいな。
「……忘れないよ。それって、ひょっとしなくても……まいさんのヤキモチからくる言葉でしょう?」
ふわふわとした不思議で愛しい感覚でいる僕とは対照的に、まいさんは、たえきれないといわんばかりに、自分の両耳をふさいで頭を抱えた。
「うーっ。やな女だよね、私! もう、これだから恋愛モードに入るのって苦手なのよーっ。
私、人好きになると、ホント独占欲強くなって……自分でもヤんなるっていうか……。
あーもう、嫌ッ。こっち見ないで、さっき言ったこと、全部なしにするから!」
ガタンと椅子を引いて、まいさんはテーブルと平行に頭を下げた。
見ないでって言われても、こんなに可愛いまいさんを、僕が見ないでいられるわけがないのに。
ちょっと笑って箸を置き、立ち上がった。
テーブルを回りこんで、まいさんの側にひざまずく。
伏せられたまいさんの顔を下からのぞきこんだ。
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