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❖ 壱 ❖
予 兆 ──まえぶれ──《五》
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『汝の目で確かめよ』
そう書かれた「神託」に、可依はとまどった。
今までこんな抽象的な文言はなかった。
例えば「今年は豊作か?」と問われれば「前年より実り多し。
ただし、苗は前年より早めに植えるべし」といった具合に、助言も入るくらいだ。
「確かめる? どういうこと……?」
思わず口をついた疑問に応えるかのように、目の前の景色が一変した。
夢にしか出てこない社から、現に存在する大神社の境内に、可依は立っていた。
「お母さま」
突然、自分の手をにぎる童女が現れた。
身なりの良い、どこぞの貴族の子女に思われ、可依はとっさに身をかがめた。
「母上様をお探しですか? 失礼ながら、お父上の御名をお伺いしても?」
参拝か祈祷か。解らないが、父親の名前を知ることができれば遣いをやれる。
可依は、ここが夢の中で、しかも夢占であることも忘れ、そんな現実的な対応をしてしまう。
だが、童女はいたずらが見つかったかのように、可愛らしく首をすくめた。
「お母さま、ここで会ったこと、ないしょね?
──お父さま!」
ふふっと、自分の小さな口を両手で押さえ、直後に走りだした童女の行く先。
(……え?)
そう書かれた「神託」に、可依はとまどった。
今までこんな抽象的な文言はなかった。
例えば「今年は豊作か?」と問われれば「前年より実り多し。
ただし、苗は前年より早めに植えるべし」といった具合に、助言も入るくらいだ。
「確かめる? どういうこと……?」
思わず口をついた疑問に応えるかのように、目の前の景色が一変した。
夢にしか出てこない社から、現に存在する大神社の境内に、可依は立っていた。
「お母さま」
突然、自分の手をにぎる童女が現れた。
身なりの良い、どこぞの貴族の子女に思われ、可依はとっさに身をかがめた。
「母上様をお探しですか? 失礼ながら、お父上の御名をお伺いしても?」
参拝か祈祷か。解らないが、父親の名前を知ることができれば遣いをやれる。
可依は、ここが夢の中で、しかも夢占であることも忘れ、そんな現実的な対応をしてしまう。
だが、童女はいたずらが見つかったかのように、可愛らしく首をすくめた。
「お母さま、ここで会ったこと、ないしょね?
──お父さま!」
ふふっと、自分の小さな口を両手で押さえ、直後に走りだした童女の行く先。
(……え?)
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