万年Fランク冒険者は成り上がる ~僕のスキルの正しい使用法~

ルー

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万年Fランク冒険者

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「よお、セイカ。今日も薬草採集か?」

セイカ・ランロッグは毎日採集クエストのみを受注して、それをクリアすることで生計を立てていた。

やはり冒険者と言えば魔物を倒すのがかっこいいと思われるもので冒険者になってから二年間ずっと採集クエストしかこなせていないセイカに対して同じ冒険者からのあたりはきつかった。

「おはようございます、ルシウスさん。」

セイカは冒険者ギルドの中で待ち構えていたBランク冒険者ルシウス・グレイに挨拶をした。

「ああん?俺は今日も薬草採集やんのかって聞いてんだよ!」

ルシウスの怒声にセイカは身を縮こまらせる。

「あ、はい。そうです。」

「ふーん。おいよかったら今日だけ限定で俺のパーティーに入るか?今日はスモールドラゴンと十体狩りに行くんだ。素材が落ちりゃちょっとだがやるぜ。」

ルシウスが下卑た笑みを浮かべる。

「え、ルシウスさん。今日はこいつも行くんですか?」

ルシウスの後ろからDランク冒険者でルシウスの腰巾着とも言われているシオン・サルシアが現れた。

「文句あんのか?」

振り向いたルシウスの顔を見てシオンは震えあがった。

「ヒッ!な、なんでもありません。ただ足手まといになるのではと思っただけでして・・・。」

「はん。こいつが戦闘力になるだなんてこれっぽちも思っちゃいないよ。こいつは荷物持ち。討伐の際に落ちた安物をちょっとやるだけだ。」

「なんだ、そうだったんですね。」

シオンがどこかほっとしたように言った。

「ねえ、ルシウス。またその子を連れ出すの?」

不意にルシウスに声がかかった。

冒険者ギルドの奥からAランク冒険者ヴィアンカ・ルシェアが現れる。

「ヴィアンカさんじゃねえか。なんだ?俺のすることに文句でもあんのか?」

ルシウスは機嫌悪そうにヴィアンカに突っかかる。

「ルシウス。貴方のランクはBよね。残念だけど私のランクはAなの。冒険者ギルド規則の上のランクの者に逆らってはいけない・・・覚えているかしら?」

ヴィアンカはルシウスに微笑みかける。

優し気な諭すような微笑みだが、どこか棘がある。

「は?ヴィアンカさんがAランク?聞いてねえよ。」

「言ってないもの。とりあえずその子はここに置いていきなさい。」

ヴィアンカの言葉にルシウスは舌打ちをするとシオンを引き連れてギルドから出て行った。

「あ、え・・・?」

おろおろとしているセイカにヴィアンカは近づいた。

「ねえ、貴方、どうしてルシウスの話を断らなかったのかしら?あの男のことだものギルド規則なんてとうに忘れているわ。」

「あ、えっと・・・その・・・。」

口ごもるセイカにヴィアンカのパーティーメンバーの一人リシア・フィースが言う。

「あんたヴィアンカ様が聞いてんだからちゃんと答えなさいよね。」

「こ、怖かったからです!」

思い切ってセイカは言った。

「怖かったから?あなたまさか恐怖耐性・・・持っていないの?」

「ええと・・・なんですかその恐怖耐性っていうのは?」

首を傾げたセイカにヴィアンカは呆れながらも言う。

「耐性には何種類かあって代表が恐怖耐性、状態異常耐性、攻撃耐性の三つよ。その中にも攻撃耐性は二種類あって魔法攻撃耐性と物理攻撃耐性よ。恐怖耐性は初心者ならば持っておいて損はないわ。」

「どこで手に入れられるんですか?」

「それも知らないの!?」

ヴィアンカは驚きながらも教えてくれた。

「恐怖耐性はここ王都近郊の森、フェヴィスの森のボス「ミノタウロス」を倒した時に低確率で手に入るスキル書を使用して覚えるのよ。貴方フェヴィスの森にさえ行ったことがないの?」

「はい。今まで薬草採集しかやってこなかったので。」

「そ、そうなの。恐怖耐性のスキル書はマーケットでも安価で手に入るわ。危険をおかしてミノタウロス討伐を周回するか、安全をとってマーケットで買うかはあなたの好きにしなさい。マーケットでは・・・確か1000ルドで売っていたわね。」

「ありがとうございます。探してみます。」

セイカはお礼を言うとそのままギルドの受付嬢のもとに行った。

「おはようございます、セイカさん。本日のクエストは薬草採集の中でもどれにしますか?」

セイカが来ると、待っていたかのように受付嬢のアリスはクエストの紙を広げる。

「ええと・・・じゃあ一番稼げるので。」

「一番稼げるの・・・となりますとルセニア火山の山頂付近に生えているルーザ草の採集クエストですね。危険度は25、報酬は30枚を一セットと考え、一セットあたり5000ルドです。」

「5000ルド!それにします!」

セイカがうなづくとアリスはクエストの紙に自分の名前を書き、印鑑を押した。

「ええと、僕はサインしなくていいんですか?」

今までサインしていたのに突然なんでだろうと首を傾げたセイカにアリスは言い放った。

「どうせセイカさんは魔物とは戦わないでしょう。怪我をする可能性もほぼないのでサインをする必要はありません。」

クエストの紙にサインを求められないのはクエストで負った怪我に関して、ギルドは一切責任をおわないという意味だった。

「ま、待ってくださいよ。そんなルセニア火山は魔物は出ないけどいつ噴火するか分からないんですよ。一切責任をおわないってそんな。」

慌てるセイカにアリスはため息をついた。

「セイカさん、運だけはあるんですからそんなことにはなりませんって。それにギルドマスター直々のお達しなんですからね。」

「え?ギルマス直々のお達し?」

セイカは嫌な予感がした。

まさか・・・

「セイカさんはギルドのお荷物だから心配するだけ無駄だそうです。怪我をしたところでギルドには一切影響はないのでいくらでも怪我をしてきてくださいだそうです!」

アリスはにっこりと笑ってセイカを追い出した。

「セイカさん、頑張ってください。このクエストの締め切り、明後日までですよ!」

背中の向こう側から聞こえるアリスの声はどこか楽し気だった。



















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