【完結】無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります

ルー

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皇帝

「ユリアお嬢様!こちらのドレスとかどうでしょうか?」

今日は皇帝陛下に謁見する日。

サツキとフェナもいつも以上に張り切っていた。

そしてその日ばかりは東の宮の侍女総出でユリアの着付けをしていた。

「もうなんでもいいわよ!」

ユリアの言葉に東の宮勤務最長45年を誇る年配の侍女ヘレンが咎める。

「皇帝陛下との謁見の場にふさわしい恰好をしていかなくてはなりません。総帥閣下が10着もドレスを買ってくださったのですからどれか1着を選んで着ていかなくては!総帥閣下が買ってくださったドレスを着ないで行けば総帥閣下は間違いなく残念がると思います。」

ユリアお嬢様をご自分の妹ようにかわいがっているのですから、とヘレンが言う。

「そう。」

ユリアは少し不満気にしながらもサツキが選んだドレスを着る。

「お美しいですユリアお嬢様!」

ヘレンが心底嬉しそうに言う。

「磨きがいのあるお方ですね。」

ヘレンは汗をぬぐう。

「あら、私の買ったドレスを着てくれたのね。」

まだ準備が終わらないのかと東の宮に様子を見に来たハルはユリアの着ているドレスを見て嬉しそうに言う。

その喜びようにユリアはこのドレスを着てよかったと内心思った。

「あの、復讐のことで話があるのですがいつあいてますか?」

ユリアは思い切って言う。

「最短でも1週間後ね。」

まとまった時間が取れるのは1週間後だと言うハルにユリアはうなずいた。

「わかりました。では1週間後に話し合いたいです。」

「了解。時間あけとくわね。」

ハルが言う。

「そろそろ謁見の時間だから玄関に来てちょうだい。」

「わかりました。」

玄関に行ったユリアは目を丸くした。

「びっくりした?」

ハルはユリアに尋ねる。

「はい。こんな豪華な馬車初めて見ました。それに家紋もクリムゾン大公家の家紋ではないですよね?」

ユリアはじいっと馬車を見る。

馬車には精霊神ティターニアの絵姿が彫られている。

「そうなの。実はね、この馬車は精霊の愛し子専用の馬車なの。」

ハルは誇らしげに言う。

「精霊の愛し子専用ですか!?」

驚愕するユリアにハルは茶目っ気のある笑顔を返す。

「ええ。代々の精霊の愛し子が使っている伝統ある馬車なの。この馬車には特殊な精霊術がかけられていて、外部からの攻撃を一切受け付けないの。」

ぽかんとするユリアにハルは言う。

「ほら、早く乗って。皇帝が待っているわ。」

「は、はい!」

緊張しているユリアにハルは微笑んだ。

「謁見と言ったけどそんな堅苦しいものではないから安心して行ってきて。」

「はい!」

ユリアはハルに微笑むと馬車に乗った。

「フェナ・・・あなたついていきなさい。」

ハルは自分の後ろに控えるフェナに言った。

「かしこまりました。」

フェナは一礼すると馬車に乗り込んだ。

「お嬢様、私がお供いたします。」

「まあ、フェナが?心強いわ!」

馬車の中からフェナとユリアのやり取りが聞こえる。

馬車が動き出し、ハル達はそれを見送る。

「・・・メリィ、サツキ。頼みがあるの。」

ハルは自分の専属侍女のメリィとユリアの専属侍女サツキに声をかけた。

「「はい、何なりとお申し付けくださいませ。」」

ハルが苦笑いする。

そして2人の耳元でささやいた。

「魔女の店を探しなさい。そして魔女にこう言うの。『契約するべきはどっち?』って。」

「「仰せのままに。」」

2人は同時に頭を下げた。







「ユリアお嬢様。到着しました。」

御者が外から声をかける。

「お手をお出しください。」

扉を開け、先に外に出たフェナがユリアに手をのばす。

「ありがとう。」

馬車から降りたユリアは目の前の皇宮に目を奪われた。

「なんて綺麗なのかしら。」

「そう言って貰えてうれしいよ精霊の愛し子ユリア嬢。」

不意に声が聞こえてユリアは驚く。

いつの間にか目の前に銀髪の男性が立っていた。

「初めましてユリア嬢。私はラピスラズリ大帝国の皇帝フィオレンス・ヴァン・ラピスラズリという。これからよろしくお願いするよ。」

男性フィオレンスはにこやかに挨拶する。

「皇帝陛下だとは知らずにご無礼をしました。申し訳ございません。クリムゾン大公家にお世話になっていますユリア・シェーラと申します。どうぞお見知りおきくださいませ。」

ユリアは慌てて挨拶をする。

「そんなに固くならないでくれ。これはそんなに堅苦しいものではないから安心して。今日は少しユリア嬢と話てみたかっただけなんだ。」

「はぁ・・・。」

話の展開について行けないユリアにフィオレンスはクスリと笑う。

「とりあえず詳しい話は応接室でしよう。」

皇帝自らの案内でユリアは応接室にに通された。

「それで、話というのは王国でのこと、そしてこれからどうしたいか。この国に留まりまたいかヴィ―ルヘミア王国に戻りたいか。それともまた別の違う国に行きたいのか。どれを選ぼうと皇室はその判断を尊重するよ。」

ハルはどうか知らないけど、とフィオレンスは言う。

ユリアは自分の王国での扱いを真実のみ話した。

自分がわざと無能のふりをしていたことも。

「ふむ。そんなことが。それがユリア嬢の策略だったとしても信じられないことだね。精霊の愛し子を追い出すだなんて。だけれどそのリリア・ミーナという男爵令嬢は確かに広範囲の治癒術を使えたんだね?」

「はい、そう聞いています。」

「それはおかしいね。確か禁術で精霊術を一定の期間奪うというものがあった。あとで禁術に詳しいものに聞いてみよう。」

フィオレンスはそう言った。

「そのリリアとやらが精霊術を使ったとき、ユリア嬢の力は健在だったんだね?」

「はい、定期的・・・いえ一応毎日治癒術は使っていましたのでその時も力が消えたという感覚はありませんでした。」

「そうか、これはますます不思議だね。」

フィオレンスは眉をひそめる。

「それで次にこれからどうしたいかだけど・・・。」

「私はこの国に留まりたいです。だけどずっとクリムゾン大公家にお世話になっているのは気が引けて・・・。」

「つまりひとり立ちしたいと?」

「はい。」

フィオレンスの問いにユリアは大きくうなずいた。

「それならユリア嬢の復讐とやらが終わったら君に爵位を与えよう。どうかな?」

「それでお願いします。」

ユリアが頭を下げるとフィオレンスは鷹揚にうなずいた。

「そうだ。あと半月後にヴィ―ルヘミア王国の第一王子が留学から戻る。国王が死んだときにパーティーとは少々不謹慎な気がするがまあそこは置いといて、記念のパーティーをやるらしい。その記念パーティーの時に同時に戴冠式をするという話もあると聞く。ユリア嬢もそのパーティーにシオンを同伴して参加してほしい。ハルも行くらしい。それまでに復讐の方法を考え置いてくれ。」

フィオレンスはそう告げると立ち上がった。

「話は以上だ。戻ってよい。」

「はい。」

フィオレンスは応接室から去って行き、ユリアはその後ろ姿をフェナとともに見送った。



――――――――――――――――――
本日3話目です。
昨日よりも更新早いかもしれません。
今日のこの後の更新はできるかちょっとわからないです。
週明けは更新速度が落ちるので今のうちに頑張ります!





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