繋がれた右手

小鞠

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稲妻

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 「…………! 」
大きな光が広がった。その光が弾けた瞬間、一面の暗闇が私を支配した。

 「……」
微かな物音が耳を霞め、意識を目覚めさせようとする。
真っ暗な目の前に微かに光が見えてきた。あと一歩踏み出せばこの暗闇から解放されるのが感覚的にわかった。

 これが生き物の本能なのだろうか。
あと一歩。わかっているはずなのに、その一歩がとてつもなく遠く感じる。
また意識を手放そうとした時、背中に風を感じた。
右足を踏み出した途端、あたり一面白い光に包まれた。

 目も開けられない強い光を感じた後、すぐに光は引いていった。
ピッピッピッ。
機械的な冷たい音が刻みこまれる。
手に雫を感じた。
目を開けると何人かの顔が上から私を囲っていた。
「よかった……」
女がハンカチを握りしめ、自分の胸を押さえながら嗚咽混じりに言った。
その声を詰め切りに周りが慌ただしくなる。さっきまでの機械音は気にならないくらいだった。

 白衣姿の人が押しかけてくる。
みんなが色々話しかけてくるがそれを理解するほど頭は回転していなかった。
ただハンカチを持つ女の両手がずっとずっと右手をきつく握りしめていた。
白衣の人達がずっと話しかけている中、回らない頭で考えたのは先ほどまでの光景だった。

 どこまでも続く暗闇。
足元はくるぶし位まで水が張っていた。
一歩踏み出せば落ちてしまいそうな断崖絶壁の孤島に一人たたずむ。
そのずっと先に見える光。

 そこまで思い出して、また意識を手放してしまった。
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