現代詩集 電脳

lil-pesoa

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食器をダンボールに詰める母は時々ぼーっとして固まり、思い出したかのように作業を再開していた。
父はリビングの金魚がいる水槽に最後の餌やりをする。
どのチャンネルをつけても夜は通販番組ばかりやっていて、雨戸に張り付いたヤモリだけがそれを見ている。
僕が捕まえた蜘蛛を玄関に持っていって、逃そうとした時、後ろから低い声で「靴を履け」と言われたあの夜の、

感情のない父の顔のように、

静かな夜だった。
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