現代詩集 電脳

lil-pesoa

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・焦り

目を覚ますと、マットレスにカビが生え、浸食し始めていた。
暗示的な浸食は心の焦燥を掻き立て、動悸を引き起こした。
もはやどう転んでも、見切り発車で逃げ出すしかない。それにしたって、もう少し準備を整える必要があるというのに。無数の黒点と対峙しながらいくら考えても、事態は好転しない。無意識の内に奥歯を歯ぎしりする。


・不安

スクリーンの中で犬がぐったりとして、動かない。
何があったのだろうかと考え始めると、いつもすぐに心が落ち着かなくなる。俺は動悸を抑えながら席をたつ。だが俺が座っていた座席の窪みは消えず、体温もしばらく残る。


・怯え

乾いた皮膚で若草を撫でると、緩やかな夜風が発生する。しばらくすると、遠くの木立から、細枝が折れる音がした。何か悪いものに見られていると気がついて、俺は動くのをやめる。


・怒り

熱という概念が物理的な形を帯びて隆起する
よく観察すると毛細血管みたいに細かく枝分かれしながらモコモコと歪に増殖していて、支配するのは困難を極める


・死

内ポケットに、隠す(何を)
蛾を握り潰した感触(閉口を求む)
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