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連絡先
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佐山君は目を白黒させてる姉にきちんと挨拶をしてから、私に向き直った。
あの、これ、と神妙な顔をして差し出してくれたのは、いかにも手作りな名刺カードだ。『1年1組 さやま あきら』と書いてある。その下に、手書きの、多分SNSのIDだ。
あ、この前授業で作ったやつだ!と甥っ子が言う。くろーむぶっくでうんぬんかんぬん。最近の子は、ダブレットだのパソコンに強い。お絵かきだとかプログラム作成なんてしちゃうみたいだ。1年生なのに!
モノクロ一択のレポート作成くらいしかできないわたしは、黙ってそれを受け取ったのだけど。
そのわたしの腕を、ガシッと姉が掴んだ。
「どゆこと」
「や、あの、実は、小学生の時の同級生で……」
幼い頃から言葉でわかり合うなんて必要のなかった姉にド迫力な低い声で問い質されて、咄嗟に適切な説明が出るか。いや出ない。
しどろもどろの私に代わって、佐山君が真面目な顔で応えてくれた。
「再会できたのが嬉しくて、お食事に誘わせていただいたのですが、今日はご予定があるとのことでした。それはもちろん構いませんが、せめて次の機会を相談するために、連絡先をお知らせしたくて。お呼び止めして、申し訳ありませんでした」
いやいや、正直に話すぎじゃないですかね!?
きっちりお辞儀をした佐山君を、姉がいえいえ先生顔を上げて下さい、と押し留める。姉のよそ行きは、何故か背筋が伸びる。
「家族のご飯なんていつでも食べられるから。いいから連れて行ってください」
でも佐山君は、にっこりと笑って首を振った。
「家族のご飯なんて、って言わないでください。今日はゆうくんの初めての運動会ですから、たくさん話をしたいと思います。な、ゆうくん」
それはまさに、大人で先生で、分別というものがあって。私はすでに、心臓が高鳴っていたのだけど。
「あの、代わりに明日誘ってもいいかな。代休なんだ」
と少し照れたように誘いをかけられて、断れるだろうか、いや――。
「この子いつでも暇してますので、是非誘ってやってください! この子ったら、後輩庇ってパワハラ上司と喧嘩して、辞表叩きつけて辞めたんですって。
気が強いのは、でも幼馴染ならご存知よね?」
姉ーーーーーーー!!!
「今彼氏いないし。このままだとカビが生えそうだし。ぜひよろしくお願いします!」
ほんとに、やめてええええ。
私は魂が抜けそうになったけど、佐山君はどうしてか、少し眩しげに目を細めた。
「誰かのために一生懸命になれる人なのは知ってます。……明日、いいかな」
はい、よろしくお願いします。
私はかろうじて残っていた意識を叱咤して、なんとか返事をしたのだった。
姉、そのぬるい目をやめて!
あの、これ、と神妙な顔をして差し出してくれたのは、いかにも手作りな名刺カードだ。『1年1組 さやま あきら』と書いてある。その下に、手書きの、多分SNSのIDだ。
あ、この前授業で作ったやつだ!と甥っ子が言う。くろーむぶっくでうんぬんかんぬん。最近の子は、ダブレットだのパソコンに強い。お絵かきだとかプログラム作成なんてしちゃうみたいだ。1年生なのに!
モノクロ一択のレポート作成くらいしかできないわたしは、黙ってそれを受け取ったのだけど。
そのわたしの腕を、ガシッと姉が掴んだ。
「どゆこと」
「や、あの、実は、小学生の時の同級生で……」
幼い頃から言葉でわかり合うなんて必要のなかった姉にド迫力な低い声で問い質されて、咄嗟に適切な説明が出るか。いや出ない。
しどろもどろの私に代わって、佐山君が真面目な顔で応えてくれた。
「再会できたのが嬉しくて、お食事に誘わせていただいたのですが、今日はご予定があるとのことでした。それはもちろん構いませんが、せめて次の機会を相談するために、連絡先をお知らせしたくて。お呼び止めして、申し訳ありませんでした」
いやいや、正直に話すぎじゃないですかね!?
きっちりお辞儀をした佐山君を、姉がいえいえ先生顔を上げて下さい、と押し留める。姉のよそ行きは、何故か背筋が伸びる。
「家族のご飯なんていつでも食べられるから。いいから連れて行ってください」
でも佐山君は、にっこりと笑って首を振った。
「家族のご飯なんて、って言わないでください。今日はゆうくんの初めての運動会ですから、たくさん話をしたいと思います。な、ゆうくん」
それはまさに、大人で先生で、分別というものがあって。私はすでに、心臓が高鳴っていたのだけど。
「あの、代わりに明日誘ってもいいかな。代休なんだ」
と少し照れたように誘いをかけられて、断れるだろうか、いや――。
「この子いつでも暇してますので、是非誘ってやってください! この子ったら、後輩庇ってパワハラ上司と喧嘩して、辞表叩きつけて辞めたんですって。
気が強いのは、でも幼馴染ならご存知よね?」
姉ーーーーーーー!!!
「今彼氏いないし。このままだとカビが生えそうだし。ぜひよろしくお願いします!」
ほんとに、やめてええええ。
私は魂が抜けそうになったけど、佐山君はどうしてか、少し眩しげに目を細めた。
「誰かのために一生懸命になれる人なのは知ってます。……明日、いいかな」
はい、よろしくお願いします。
私はかろうじて残っていた意識を叱咤して、なんとか返事をしたのだった。
姉、そのぬるい目をやめて!
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