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第3章 内乱の初秋
第8話 反射神経
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もう少し踏み出せば私の姿が観客に見えるというようなところで私は待機していた。
「……うるさい……」
歓声が……と、私は耳を塞ぐ。
『まもなく、非戦闘部門第8試合が開始されます。観客の皆様はご着席ください』
いつも通り感情のこもっていないアナウンスが流れ、全ての観客が自分の席に着いた。
数分後、ソラさんの声が耳朶を打った。
『これより、非戦闘部門第8試合を開始しまぁす!』
「……ふぅ」
私は深呼吸をして息を整えた。
『対決するのはぁ、本年度の魔法対戦でも大活躍したメンバーの内の1年1組39番、ジュア・ライフィンとぉ!』
私はソラさんの発言とタイミングを合わせて前へ進み出る。私が“舞台”に登ると、これまでと同じく、私が待機していた真上ぐらいから歓声が起こった。
小刀は、左右の脇腹辺りの服と体の間に、服のゴムを利用して挟んでいるから、変な動きさえしなければ、余程鋭い人じゃなければ誰にも知られないだろう。
相手の武器が何なのかが分からないというのは、上庄さんにとっては苦しい……かもしれない。というか、そうであることを願うばかりだ。
『身体能力の高さが持ち味の1年5組11番、上庄 姦の対戦で~す!』
そう彼女が言うと同時に今度は上庄さんが出てきた。恐らく彼がいたと思われる場所の真上辺りから歓声が聞こえた。
初めて彼を見るが、髪は黒緑色に染められており、耳にはピアス、左腕には刺青が見られた。相当グレてるな、この人……。
『アメ、この2人はそれぞれどういう特徴があるんでしょう?』
ソラさんがアメさんに訊いた。それを受け、アメさんが解説する。
『ライフィン選手は、魔法対戦では驚くべき作戦の要になったよね~。魔力値も高いし。上庄選手は、ライフィン選手に比べれば魔力値は低いけど、でも彼女にはない身体能力を彼は有してるからねぇ。これはどっちが勝つか分かんないよ~』
『なるほどぉ! さてさて、2人の強さも十分わかったところで、始めていきますよ! 両者見合って~! 3! 2! 1! スタートぉぉぉぉぉぉ!!』
ソラさんのカウントダウンが終了した後、上庄さんが動き出した。
『試合開始直後から、上庄選手が動きました! 流石の身体能力です、数メートルの高さを軽々と跳んだぁぁ!』
『流石だねぇ。いい意味で化け物だよね~。まだ魔法は使わないのかな?』
ウミさんの実況やアメさんの解説を聞き流しながら、私は頭を回転させる。
――私は、傷を瞬時に癒す刹那全快を持っている。そのある特長を利用すれば、彼に触れるだけで勝てるだろう。最悪、組み伏せられた時でもいい。
だから、今するべきなのは……私の真上数メートルから落ちてくる上庄さんの攻撃を避け、彼に触れることっ!
「はぁっ!」
力み声とともに、握った両手を私に向けて彼は振り下ろす。私はそれを避け、彼に触れ――ようとしたけれど、できなかった。
彼があまりにも早く私と距離を取ったからだ。まだ着地してほとんど時間は経っていなかったのに。反射神経よすぎでしょう……。
「くっ……」
すぐに彼に触ることができると思っていた私は、顔を歪ませた。
『ライフィン選手、上庄選手の攻撃は避けましたが、自分の攻撃が当たらず少し苦しいようです!』
「ふん、予想が外れたか? 悪ぃが、俺は反射神経もいいんだ」
『身体能力だけじゃなくて、反射神経もいいとか、ほんとに化け物だよ~』
結構、ヤバいかもしれない……!
「……うるさい……」
歓声が……と、私は耳を塞ぐ。
『まもなく、非戦闘部門第8試合が開始されます。観客の皆様はご着席ください』
いつも通り感情のこもっていないアナウンスが流れ、全ての観客が自分の席に着いた。
数分後、ソラさんの声が耳朶を打った。
『これより、非戦闘部門第8試合を開始しまぁす!』
「……ふぅ」
私は深呼吸をして息を整えた。
『対決するのはぁ、本年度の魔法対戦でも大活躍したメンバーの内の1年1組39番、ジュア・ライフィンとぉ!』
私はソラさんの発言とタイミングを合わせて前へ進み出る。私が“舞台”に登ると、これまでと同じく、私が待機していた真上ぐらいから歓声が起こった。
小刀は、左右の脇腹辺りの服と体の間に、服のゴムを利用して挟んでいるから、変な動きさえしなければ、余程鋭い人じゃなければ誰にも知られないだろう。
相手の武器が何なのかが分からないというのは、上庄さんにとっては苦しい……かもしれない。というか、そうであることを願うばかりだ。
『身体能力の高さが持ち味の1年5組11番、上庄 姦の対戦で~す!』
そう彼女が言うと同時に今度は上庄さんが出てきた。恐らく彼がいたと思われる場所の真上辺りから歓声が聞こえた。
初めて彼を見るが、髪は黒緑色に染められており、耳にはピアス、左腕には刺青が見られた。相当グレてるな、この人……。
『アメ、この2人はそれぞれどういう特徴があるんでしょう?』
ソラさんがアメさんに訊いた。それを受け、アメさんが解説する。
『ライフィン選手は、魔法対戦では驚くべき作戦の要になったよね~。魔力値も高いし。上庄選手は、ライフィン選手に比べれば魔力値は低いけど、でも彼女にはない身体能力を彼は有してるからねぇ。これはどっちが勝つか分かんないよ~』
『なるほどぉ! さてさて、2人の強さも十分わかったところで、始めていきますよ! 両者見合って~! 3! 2! 1! スタートぉぉぉぉぉぉ!!』
ソラさんのカウントダウンが終了した後、上庄さんが動き出した。
『試合開始直後から、上庄選手が動きました! 流石の身体能力です、数メートルの高さを軽々と跳んだぁぁ!』
『流石だねぇ。いい意味で化け物だよね~。まだ魔法は使わないのかな?』
ウミさんの実況やアメさんの解説を聞き流しながら、私は頭を回転させる。
――私は、傷を瞬時に癒す刹那全快を持っている。そのある特長を利用すれば、彼に触れるだけで勝てるだろう。最悪、組み伏せられた時でもいい。
だから、今するべきなのは……私の真上数メートルから落ちてくる上庄さんの攻撃を避け、彼に触れることっ!
「はぁっ!」
力み声とともに、握った両手を私に向けて彼は振り下ろす。私はそれを避け、彼に触れ――ようとしたけれど、できなかった。
彼があまりにも早く私と距離を取ったからだ。まだ着地してほとんど時間は経っていなかったのに。反射神経よすぎでしょう……。
「くっ……」
すぐに彼に触ることができると思っていた私は、顔を歪ませた。
『ライフィン選手、上庄選手の攻撃は避けましたが、自分の攻撃が当たらず少し苦しいようです!』
「ふん、予想が外れたか? 悪ぃが、俺は反射神経もいいんだ」
『身体能力だけじゃなくて、反射神経もいいとか、ほんとに化け物だよ~』
結構、ヤバいかもしれない……!
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