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第3章 内乱の初秋
第10話 心
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ジュアが話した内容を要約すると、こうだ。
ジュアは、詳しいことは言えないが、小さい頃から“心”と呼ばれるものを、親から教わっていたそうだ。
心とは、簡単に言えば、全ての意識を認識能力に当てることで認識速度を格段に上げること、らしい。スローモーションのような体験ができるそうだ。
その心によって集中力や認知力が上がった状態で、ジュアは上庄の動きを読んだらしい。そして、どれが本命か、どんな攻撃が来るのかを予測した。その攻撃が来たタイミングで、ダメージを最小限に止めるために前へ倒れた。あとは回復魔法の応用で、魔力を送れるのなら吸い取ることもできるはずだと考え、実際に魔法を使ってみると、予想は当たっていた、ということだ。
「いや、すげぇな」
「それもう津熊くん以上のチート能力じゃん」
「汝が学校に最強なればはあらずや(君が学校の中で最強なんじゃないかな)」
俺たち3人は、そう驚く他ない。
「いえ、これにもデメリットはありますよ」
「どんなデメ――」
そこで、巴に口を手で遮られた。
「誰?」
彼女は、控え室の入り口の扉を睨んでいる。見れば、ジュアも時を同じくして睨んでいた。
「……逃げたようですね」
俺と月登は、どういうことだ? と言わんばかりの表情で2人を見る。
「ドアの外に、誰かがいたんです」
「やっぱりジュアちゃんもそう感じた? わしもなんだよね」
2人が同時に気配を感じたということは、本当なのはほぼ間違いない。だが、何のために?
「恐らく、ジュアちゃんの弱点を知るため……だろうね」
「ですね。友好的な雰囲気ではなさそうでしたし」
あの一瞬でそれだけ分かるのか……2人ともすげぇな。
「わしは大地属性だから周辺の状況はある程度分かるけど、ジュアちゃんは何で……?」
俺もそう思った。
「あ~、それは……ちょっと、言いたくありませんね……」
「言いたくないなら、無理に問い詰めるのはよくねぇな」
「ごめんなさい……」
ジュアは項垂た。
「ジュアが謝ることじゃねぇよ」
誰にだって、隠したいことはあるものだ。
俺だって結構あるぞ。女子に対する気持ちのアレやコレとかな。
「さて、と。そろそろ部屋に戻らねぇか? ジュアが立てるなら、だが」
「そうですね。ここにいても意味はありませんから。私はもう歩けるので大丈夫ですよ」
ということで、俺たちは各自室に戻ることになった。
――その日の夕方。
いつも通り、修二が顔を伏せている間に私は服を脱ぎ、浴室に入った。
シャワーを取ろうとして、ふと目の前の等身大の鏡に反射した自分の体が目に入る。
「……」
醜い傷。
私は、右脇腹上方から腰辺りまでの傷跡を、左手でなぞった。
まだ“あの日”までかなりあるというのに、思い出してしまった。なんでだろう……。
そうか、心を久しぶりに使ったからか。
自然に目に涙が溜まる。
駄目だ。今は思い出すべき時じゃない。
そう思うのに、雫は止まらない。
あぁ、もう無理。
私はシャワーを全開にした。
ジュアは、詳しいことは言えないが、小さい頃から“心”と呼ばれるものを、親から教わっていたそうだ。
心とは、簡単に言えば、全ての意識を認識能力に当てることで認識速度を格段に上げること、らしい。スローモーションのような体験ができるそうだ。
その心によって集中力や認知力が上がった状態で、ジュアは上庄の動きを読んだらしい。そして、どれが本命か、どんな攻撃が来るのかを予測した。その攻撃が来たタイミングで、ダメージを最小限に止めるために前へ倒れた。あとは回復魔法の応用で、魔力を送れるのなら吸い取ることもできるはずだと考え、実際に魔法を使ってみると、予想は当たっていた、ということだ。
「いや、すげぇな」
「それもう津熊くん以上のチート能力じゃん」
「汝が学校に最強なればはあらずや(君が学校の中で最強なんじゃないかな)」
俺たち3人は、そう驚く他ない。
「いえ、これにもデメリットはありますよ」
「どんなデメ――」
そこで、巴に口を手で遮られた。
「誰?」
彼女は、控え室の入り口の扉を睨んでいる。見れば、ジュアも時を同じくして睨んでいた。
「……逃げたようですね」
俺と月登は、どういうことだ? と言わんばかりの表情で2人を見る。
「ドアの外に、誰かがいたんです」
「やっぱりジュアちゃんもそう感じた? わしもなんだよね」
2人が同時に気配を感じたということは、本当なのはほぼ間違いない。だが、何のために?
「恐らく、ジュアちゃんの弱点を知るため……だろうね」
「ですね。友好的な雰囲気ではなさそうでしたし」
あの一瞬でそれだけ分かるのか……2人ともすげぇな。
「わしは大地属性だから周辺の状況はある程度分かるけど、ジュアちゃんは何で……?」
俺もそう思った。
「あ~、それは……ちょっと、言いたくありませんね……」
「言いたくないなら、無理に問い詰めるのはよくねぇな」
「ごめんなさい……」
ジュアは項垂た。
「ジュアが謝ることじゃねぇよ」
誰にだって、隠したいことはあるものだ。
俺だって結構あるぞ。女子に対する気持ちのアレやコレとかな。
「さて、と。そろそろ部屋に戻らねぇか? ジュアが立てるなら、だが」
「そうですね。ここにいても意味はありませんから。私はもう歩けるので大丈夫ですよ」
ということで、俺たちは各自室に戻ることになった。
――その日の夕方。
いつも通り、修二が顔を伏せている間に私は服を脱ぎ、浴室に入った。
シャワーを取ろうとして、ふと目の前の等身大の鏡に反射した自分の体が目に入る。
「……」
醜い傷。
私は、右脇腹上方から腰辺りまでの傷跡を、左手でなぞった。
まだ“あの日”までかなりあるというのに、思い出してしまった。なんでだろう……。
そうか、心を久しぶりに使ったからか。
自然に目に涙が溜まる。
駄目だ。今は思い出すべき時じゃない。
そう思うのに、雫は止まらない。
あぁ、もう無理。
私はシャワーを全開にした。
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