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第3章 内乱の初秋

第28話 種明かし

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 翌日、俺とジュア、フィスティアは部屋に投影されたライブ映像で非戦闘部門の決勝戦を見ていた。それぞれの部屋で見ればいいのに、昨日に引き続き巴と月登もこの部屋で観戦している。
 決勝戦は、一昨日ジュアと当たった2年の坂倉と、同じく2年の千歳ちとせ 恭大やすひろとの対決だ。坂倉は準決勝の時のように弓矢を持ち込み、千歳は日本刀を持ち込んだようだ。
 ソラの開始宣言で火蓋が切られた。しかし、2人はお互いを鋭く見つめたまま1歩も動かない。
 ややあって、2人の会話が始まった。
『またあんたと決勝でれるとはね』
『……去年のリベンジでもするつもりかね?』
『当たり前さ。なんせ、うちは去年あんたに大敗してるからね。あの時から今まで、1日も鍛錬をサボらなかった日はないよ』
 なるほど、2人は去年も戦ったのか。というか、1年で決勝まで上り詰めた人が2人もいるのか……。
『成長しているのが自分だけとは思わないことだね』
『そんなの知ってるよ。でも、あんたよりうちの方がより成長したんだ。今回は負けるはずがない』
『なら、それを証明してみせてごらんよ』
『そのつもりだ、よっ!』
 そこで坂倉が動いた。即座に矢筒から1本の矢を抜き取ると、力を込めて、まさに“目にも留まらぬ”速さで千歳に向けて撃った。――この前と同じだ。
「なあジュア、これって……」
「はい。私が一昨日にされたのと同じ方法だと思います」
 やっぱりか。
 しかし、ジュアと違って、千歳は難なくそれを避けた。
 そして、そこから2人の会話が再開した。
『一昨日の子と違って、僕はタネが分かってるからねぇ、一筋縄ではいかないよ』
『やっぱりお見通しか』
『一昨日の時点でもう見破ってたからねぇ。要は、魔力を放出し、その勢いで加速させているだけだろう?』
 魔力を放出? その勢いで加速? どういうことだ……。
 周りを見ると、4人とも俺と同じく頭の上には“?”の文字が幾つか浮かんでいるように見えた。
『……そうさ。この矢は、木でできている。動くか動かないかの違いはあれど、うちらと同じ生き物。つまり、細胞でできている』
『だから、細胞内の魔力を操作するという、回復属性特有の技が使えるわけだね。矢の後ろの方の木の細胞1つ1つに魔力を込め、矢を放つと同時に高速で噴出させた……』
 なるほど……回復属性ならそういうことができるわけか。
 似たような原理を、確かジュアも利用していたはずだ。彼女は、初戦で上庄の魔力を吸い取っていた。それは回復魔法を使うと自分や相手の魔力の量を操れるからだ。
 魔力の流れこそ逆だが、これもその特性を使っている。
 ジュアだけにできるものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
『さて、種明かしもしたところで……今度は僕から行かせてもらうよ』
 そう言い、2人はまた戦闘に入った。
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