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第5章 濁乱の冬

第12話 パスワードとなる6桁の数字

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「はー……回復属性ってあんなこともできるんだ……」
 地下室から校長室前に出るための階段を上りながら、レイさんが呟いた。
「似たような魔法を使っている方はたくさんいらっしゃいますけどね」
 それにしてもすごいと思うけど、と彼はまた感嘆のため息をついた。

 1つの案を思いついた私は、それを実行すべく、レイさんにいくつかの質問をした。
「ここって、正面的な所と裏口的な所と、複数箇所の出入口がありますか?」
「うん、あるよ」
「ここから一番近いのは?」
「あそこの角を右に曲がってすぐのところにある“E3”だけど……必ず見張りがついてるはずだから、突破はしにくいよ?」
「それでも大丈夫です、行きましょう」
 私たちはその場所に小走りで行った。そこには案の定、見張りがいた。小さなドアの両側に1人ずつ。
「どうする、です……?」
 E3ここを通れると思っていない鈴音さんは首を傾げる。
 私は構わず、両手を伸ばして2人の体に触れた。
「なっ……!?」
「おい、」
 2人は私たちを視認し声をあげようとするが、
「――!」
 2人して即座に倒れ伏した。
「えっ、今何したの?」
 魔力通気サックアップ。私は彼にそう伝えた。すると、鈴音さんはすぐに思い当たったようだ。
「あ、あの時の……」
 私は首肯した。
 以前鈴音さんが暴走した時、私はラグールの力を借りて今みたいに透明化しながら彼女に近づき、そしてこの魔法で彼女を気絶させたのだ。
 状況が酷似しているなら、方法も同じにすればいい。そう踏んだのだ。
「とにかく、今はドアを開けなきゃいけない……けど」
 レイさんが言葉に詰まった。
 それもそのはず。ドアは電子ロックがかかっていて、正しい数字を言わなければ開けられない仕組みになっているのだ。
「6桁ということは、100万通り……そんなの試してる暇が……!」
 私は焦った。音声認識になっているとはいえ、試している時間はない。
 その時、また“鈴”が“鳴った”。
「我、響きよりなまめかしき汝に変わらん」
 見ると、彼女の目の色が変わっていた。
「まさか、響華から嬌華に変わったの?」
 レイさんの問いに、彼女は頷いた。
「1つずつ試すよりもいいから」
 鈴音さんはそう言ってから見張りの1人を見、そして数字を口にした。
「410506」
 ――ドアが滑らかにスライドした。
 その先にあったのは、上へと続く階段だった。

 それより、と私は気になっていたことを問うた。
「なんでパスワードの数字があれなんでしょうね?」
 その問いに、鈴音さんが答えた。
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