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第5章 濁乱の冬

第16話 四神機関

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「こいつら、この後どうするの?」
「一応、白虎さんのところに運ぶ予定だ」
「じゃあ俺がそれ引き受けるよ」
「……はぁ!?」
 室内の他の人たちと同時に俺も叫びそうになり、思わず口を押さえる。
 白虎というのが誰なのかは分からないが、それは今はいい。
 だが、レイさん1人だけで運ぶってのはきついんじゃ……?
 俺と同じことを彼らも思ったらしく、「お前1人だけはさすがに無理だろ」という声が聞こえてきた。
「いや、俺結構力持ちなんだよ? こんなふうに……ねっ」
 その瞬間、周りから「おおお……」という歓声のようなものが聞こえてきた。まさか、2人を持ち上げたのか? ほんとに1人で? ……嘘だろ?
「ってわけで、俺だけで十分。状況説明もさっき聞いた話をそのまますればいいでしょ?」
「いや、でも……」
 それでもまだ納得できない彼らは、食い下がった。しかしそれをレイさんは言いくるめる。
「あの人との付き合いが長い俺なら、多少の失敗くらい許してくれる。許されないにしても、罰は軽くなるさ。それとも、そんなに怒られたい?」
 それなら……と、彼らは納得してレイさんを部屋の外に出した。
 外で待機していた俺は、2人を肩に乗せたレイさんに目配せをした。
『このまま外に出るのか?』
『そのつもり。さっき来たところまで行こう。急がないと、見つかるかもしれないから』
 そんな無音の会話(俺の推測だが)をしてから、俺たちはさっきの場所に戻った。

「ふぅ……」
 グリーン・ロッツの芝生に、俺は腰を下ろした。
「改めて、自己紹介してもいいかな?」
 レイさんが、俺たちの輪の中に混ざって言った。
 白虎とやらのもとへ2人を連れていくと嘘をついて、俺とレイさんは空間転移コネクションで転移してきた場所へと向かい、グリーン・ロッツに戻ってきたのだ。多分自分から頼んだのだろう、鈴音は気絶していた。
 それから数分して巴と月登が目を覚まし、今に至る。
「お願いします」
 ジュアが先を促して、彼の自己紹介が始まった。
 名前はレイ。生まれてすぐ、名付けられもせずに親に捨てられたところを、四神機関の幹部である白虎に拾われて今まで暮らしていたそうだ。
「おいちょっと待てよ……それってつまり……」
 俺は話を止めずにいられなかった。
「うん」
 俺の考えを察したレイさんは頷く。
「――今回の件は全て、四神機関によるものだ。もっと言うと、ビザトガの流出や魔法人間ラストホープの出現なんかも含まれる」
 なん、だと……?
「どういう、こと……!?」
 巴が思わず呟いた。他のみんなも目を見張っている。
「四神機関は、――いや、ここで誰かに聞かれるとマズいから、どこか人がいなくてかつ安全な場所で話したいんだけど」
「それなら……」
 俺はみんなを連れて、俺とジュアの部屋へと戻った。
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