人魚姫はラブコメを知らない

ヤクモ

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 とても綺麗な声だった。私にはないものだから姿が見られることなんて気にもせずに、水面から首まで出して聴いていた。
 言葉は私とは異なるもので意味はわからないけれど、そのメロディーは、リズムは心地いい。風に流されるその音は奏者の意思とは異なった強弱がついて私に届いているのだろうけれども、低く静かに響くそれは夜の海に寄り添っている。

「———」

 上から別の声がした。それは奏者に向けられている。ぴたりと音が止まり澄んだ声が上へ言葉を投げた。上からまた言葉が投げられ、渋々といった様子で奏者は砂浜をあとにした。

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