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怒りの一撃と未来!

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 高まる怒りで、信じられないほどの魔力をエリから感じる。
 ただし相手はすでに魔法を唱えている!
 このままだと……


 「間に……合わない」


 エリからは魔力を感じるが、唱える様子はまるでない。


 「あんたら二人とも吹っ飛ばしてやるよー。最悪死ぬかもしれんがな?」


 笑いながら恐ろしいことを。
 俺はエリの方へと目を向ける。
 ……どうやら、そんな話は聞こえていないようだ。

 感じるのは殺気。
 怒りと殺気を強く感じるだけ。


 「エリ!このままじゃ」

 「おっと? もう遅いぜ! 吹き飛びやがれ~」


 俺の言葉よりも先に、相手の魔法が発動される。
 薄っすらと感じる魔力は、先ほどとは比べ物にならない。


 「くそっ、女の子一人守れないのか!」


 俺は自分の不甲斐なさに怒りを感じる。
 拳で地面を叩いた時、エリの叫び声が聞こえた。


 「オマエー!」


 ……一瞬の出来事だった。
 エリの叫びと同時に、何か光のようなものが相手を襲った。

 凄まじい魔力を持った光は、相手の魔法を吹き飛ばし、直接ダメージを。


 「グァー!!! う、腕がー!」


 その叫びで腕を見ると、焦げたパンのように黒くなっている。


 「あ、あの時と。あの時と同じだ。助けてくれ! もう一切手は出さない!」


 反撃を受けた相手は、土下座のような格好をしてエリを見る。
 たった一発の魔法で、形成は変わってしまった。


 「あんたは許さない! 二度と動けないようにしてやる」


 エリの怒りは本物だ、おそらく本当に殺してしまうかもしれない。

 エリからはまた、強い魔力を感じる。
 次に当たれば、本当に死ぬぞ。
 でもそれはダメだ!


 「た、助けてくれー」

 「ふざけるなぁ!」

 「エリ! 待ってくれ!」


 俺の言葉に、エリは少しだけ反応する。
 ゆっくりと、俺はエリのそばに近寄って行き。


 「なぁエリ、こいつを許せないのはわかる。だけど、ここで殺してしまったらエリにも嫌な記憶が増えると思う。それはきっと、一生忘れられなくなるぞ」


 俺はエリのすぐ前に行き。


 「許す必要はない。だけど、エリのためにもトドメを刺す必要はないんだ。こいつには楽をさせないためにも、罪を償ってもらおう」

 「……うん」


 そう言うと、エリから怒り、そして魔力が消えていくのがわかった。
 犯人は恐怖のせいか、気を失っていて動かない。


 「ねぇ大樹」

 「どうした?」


 エリは俺と顔を合わせないようにしながら。


 「止めてくれてよかったかも」


 そう呟いたのだった。
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