氷結の正義〜少女は悪を許さない〜

大吉祭り

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爆発する町

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 夜の街を暴れる犯人の捕獲後。
 時刻はすっかり遅くなり、各自家に戻り休息をとることにした。



 「二人とも来たな。では会議を始めようか」


 いつもより少し遅めの会議。
 時間はすでに昼前になっている。


 「シェルが遅刻したせいでな。起こしに行ったら寝てやがったよ。昨日の依頼で疲れたとか」


 シェルはほとんど何もしてないはずだが。


 「依頼って聞くと、どうしても気合が入っちゃってね。そのせいで疲れちゃうんだ」

 「……向いてないのでは?」

 「ハハハ、フィオーラの言う通りかもしれんな」

 「慣れてやるさ」


 全然会議が始まらん。
 と言うよりも、会議することがないのではないか?


 「っと、そろそろ無駄話はおしまいだ。今日は大切な話がある」

 「おっと、真剣な感じだね。おふざけ終了か」


 リーダーが先ほどまでの顔つきから、一気に真剣な表情を見せる。
 確かに大切な話なんだろう。


 「ここ最近で、似た様な事件が起きている様だ。魔法が使えなかった人間が、突如として魔法を使うこと。これが共通点らしい。思い当たることがあるだろう」

 「昨日の犯人と同じだね。そんなに増えてるの?」

 「急増だ。ここ数ヶ月で、昨日の件も入れれば八つの事件に絡んでいるらしい」


 数は少なく感じるが、魔法の使えない者が、急激に使える様になることはあり得ない。
 そう考えれば、かなりの数と言える。


 「フィオーラは昨日の犯人と話していたが、情報はあるか?」

 「あまり詳しくは。知らない男と、本で覚えたと言うことだけだな」

 「本か。読むだけで魔法が使えると言うなら、そんな便利なものはないな。とは言え、表立って行動しないことを考えると、何かあるんだろう」


 事件が多いことを考えれば、本を渡す相手を選んでいるのか。
 目的がはっきりしないな。

 考え始める私とリーダーを見て、シェルが疲れた顔をしながら。


 「考えても仕方ないよ。本人に合うか、出会った人に話を聞くしかさ。それに、この先にも似た事件は起こるだろうし。いつかたどり着くでしょ」

 「……それもそうだな。俺たちが考えても仕方ない。起こった事件を一つ一つ解決するしかない。フィオーラもいいな?」

 「これ以上は考えても仕方ないしね。……たまにはシェルもいいこと言う」

 「褒めてるのそれ?」


 シェルが不満げな顔でそう言った。



 会議終了も、依頼が無いため私たちは世間話や散歩などをして過ごす。
 このギルド以外にも、依頼を募集しているところは多く、実績の少ない私たちには中々声がかからない。


 「ただいま戻りました。あら? まだ依頼ない感じ?」


 シェルが日課ともなっている散歩から帰るなり、そんな事を。
 すると、シェルの後からもう一人ギルドに入ってくる。


 「すみません、こちらのギルドでは依頼を受け付けていますでしょうか? 実は困ったことが」


 よく見ると、近くの町のバッジをつけている。
 役人か何かだろう。


 「私がこのギルドのリーダーです。今回はどう言ったご用件で」

 「はい、実は今朝の事ですが、役所の方にこんな予告が」


 そう言って私たちに見せたのは、爆破予告だった。


 「イタズラならいいんですが、最近は魔法使いによる事件も多いといいます。用心に越したことはないし、警護を依頼したいのです」


 まだ事件が起こっていないので、ギルド以外には動けないのだろう。
 そうでなければ警備団に任せる。

 少し考えてリーダーが。


 「今回の依頼、もちろんやらさせていただきます。こちらとしても、気になることがありますので」


 おそらく先日の事件との関連性だろう。
 いきなりではあるが、チャンスでもある。


 「ありがとうございます! 準備が出来次第、皆様をお連れします」



 「そろそろ時間だ。二人とも準備はいいか」

 「私は常に問題ない」

 「こっちも大丈夫!」


 リーダーからの通信に答える。
 予告には、詳細な場所こそ書かれていなかったが、時間は明記されていた。

 残り五分。
 真夜中ということもあり、周りの民家などには明かりすらない。

 私たち三人は、それぞれ別の場所で待機。
 人数は多い方がと思ったが、犯人を刺激したくないという町の意見があるらしい。


 「リーダー、正直この作戦って、爆破されないと行動できないよね? 未然には防げないかな。」

 「考えたが厳しいな。理由もわからないし、場所は書かれていない。町長とも話したが、どうしても爆破後の行動になる」


 それもそうか。
 犯人に関する情報も一切なく、どうしたって場所はわからない。
 この町も、決して小さくないし。



 しばらくの静寂の後、リーダーからの連絡が入る。


 「いよいよ十秒前だ、心の準備をしておけ」


 私もシェルも返事はしない。
 全ての神経を集中させる。

 ボガーン!

 ついにその時が来た。
 少し離れた場所から爆発音が聞こえる。

 走りながらリーダーたちに通信で。


 「爆発音を聞いた。これよりそちらの方へ向かう」

 「了解した。おそらくフィオーラが一番近いだろう。無茶をするなよ」

 「俺も向かってるよ」


 通信を終え、全速力で爆発現場を目指す。



 爆発現場にたどり着いたのは、やはり私が最初だ。
 どうやらビルが壊された様で、崩れ去っている。

 ここに辿り着くまでに、誰にも出会っていない。
 そして、あまり時間もかかっていない。

 まだこのあたりにいるはず。
 幸い人が外にあまりいない時間だし、犯人がいれば目立つ。

 私は魔法で足元に巨大な氷を作り出す。
 これくらいの高さからなら犯人が見えるかも。

 周りは暗いが、人影くらいなら。
 すると、現場から少し離れた場所に人がいる。

 魔法を解除し、その場所へ駆け寄るとまだいる。


 「ねぇ、あんた。さっきの爆発、もしかしてあんたの仕業じゃないの?」


 暗くてはっきりとは見えないが、中年ぐらいの男性だろうか。
 私の話に驚いたのか、体が少し震えている。


 「やましい事がないなら、違いますと言って欲しい。黙っているなら」

 「わ、私ではないぞ!? そもそもあんなビルをどうやって壊すんだ。私には魔法は使えない! 偶然ここにいただけだ」

 「そう、ならいいよ。こんな時間だし気をつけな」


 私がそう言って後ろを振り返ると。


 「バカな女だ! ムカつくから爆破してやるぞ!」


 そう言って私の腕をつかもうとする。
 だけど!


 「バカはどちらか教えてあげる。最初からあんたを信用していない。コルド!」


 腕をつかもうとした手は、私の氷に阻まれる。
 どうやら騙されていなかったことに相当動揺している様だ。


 「ど、どういう事だ。なぜバレたんだ」

 「やはりバカはあんたの方だ。ビルの壊れた理由を、自分から魔法だと言ったからな。あんたが犯人だからだろう?」


 しまったという反応。
 今更だけどね。


 「ねぇ、どうしてあのビルを壊したの?私はそこが知りたい」

 「ふん、今にわかるよ」


 すると、爆発の音を気にして集まる人たちが。
 その中には、泣き崩れる人も見える。


 「わ、私の目的は達成した! あんなものぶっ壊してやればいいんだ!」

 「あんたの目的ってビルを壊す事?」

 「それは手段であり目的ではない! このビルは私が務めていた会社だ。そして、先日クビになった。たったひとつの小さなミスだ。それだけでクビだ」

 「それで? クビにされた腹いせにぶっ壊したってわけ」

 「それだけじゃない! あいつが大事にしていた会社をぶっ壊し、悲しんでいるところが見たかったのだ。だからこそ、逃げずにここで見ていたのだ」


 なるほどね。
 壊すだけなら逃げればよかった。
 あそこで泣いている姿を見るためだけに。


 「それで? 満足したかしら。」

 「ああ、満足はした。だが、この魔法は素晴らしい! 捕まるのはごめんだ」


 今のセリフ、どうやらこいつも魔法を最近使える様になったのね。
 リーダーの予想通りってわけ。


 「で、どうするの? 私にはバレたわけだし、このまま逃げる? それとも……」

 「当然あんたは危険だ。ここで口をふさぐしかない!」

 「だから悪い奴は嫌い。ひとつの真実を隠すために、さらに被害を拡大させる。だから、私がここで止めてやるわ!」
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