8 / 20
08.特別な呼び方
「あー、クソッ。アイツうぜぇ……」
三島くんは大股で歩きながら、途中で見つけた小石を蹴った。さっきから三島くんの機嫌は急降下に急降下を重ねて、地面スレスレのところを低空飛行している。
三島くんと一緒にい過ぎたせいで、今ではさほど怖いとも思わないけれど、通り過ぎる人たちは自然と俺たちのことを避けて通った。
「彼、凄かったよね……」
「マジ、距離感ってやつがねェ……」
六堂は俺や三島くんとは違い、ガンガン内側に入ってくるタイプだ。既に出来上がった輪の中にも躊躇わず入っていきそうだし、人の心の中にもズカズカと入っていきそうな感じである。おまけに物怖じしないし、素直。面食らってしまう瞬間もあるけれど、嫌味な感じがなく、ストレートだから嫌いになれないところがある。
一方の坂木はその六堂の手綱を握り、ヒートアップするタイミングでリードを力いっぱい引けるタイプの男だった。本当の意味での猛獣使いは彼なのでは、と感心してしまうほどである。
「マジでよっちゃんの幼馴染とは思えねぇ」
「その、よっちゃん、って人が三島くんの友だち……なんだよね?」
「あぁ。北高に行っちまった。他にも仲いいヤツいたけど、全員北高だ」
「そっか……」
それは寂しいだろうな、と俺は勝手に三島くんの気持ちを想像する。
自分も孝晃と離れて寂しいと思っているし、他の友人とも学校が変わってしまったことは寂しいと思っている。
でも、はぐれものの二人だったからこそ、こうして引き合えたのもまた事実だ。ひとりでよかった、とは口が裂けても言えないが、俺にとって三島くんと友だちになれたことは嬉しいことだった。
「なぁ、鷲宮」
「なに?」
「その、さっき言ってた単発バイトだけど……やる?」
「え、いいの?」
「まぁ、お前が嫌じゃなければ……だけど」
「やりたい! 出来れば合宿、行きたいし」
「そっか」
三島くんの表情が和らぐ。もしかしたらバイトを誘うのに気を遣わせてしまったかもしれない。
「バイトってどんなの?」
「車屋と併設してるカフェのバイト。先輩が車屋やっててさ。整備の待ち時間に利用してもらうためのカフェがあるらしいんだけど、人手が足りないって言ってて。たまにバイトの欠勤が重なるとキツイって言ってたから、時々なら入れさせてもらえるかも」
「カフェか……。なんか自分が働いてるとこ、想像つかないかも……」
「お前なら似合いそうだけど」
「俺が……? 無理じゃない? 笑顔引き攣りそう……」
ムニムニと自分の頬を揉む。
三島くんは似合うと言ってくれたが、人見知りな俺にとって、接客バイトはハードルが高すぎる。それでも背に腹は代えられなかった。
三島くんによると時給は千円だと言う。五時間ぐらいのバイトを二日も入れば、すぐに一万円に手が届く。俺にとって、魅力的な話でしかなかった。
「とりあえず、先輩には話つけておくわ」
「うん。ありがとう。で、あの二人はどうするの……?」
「一応、話はしておくけど……そもそもアイツ等、土日は部活とか言ってなかったか?」
「確かに……」
六堂は軽音楽部が、坂木は水泳部の活動があると言っていた。どちらも土日に活動する分、平日が空くからという理由で天文部に入ったような……。
「ちゃんと二人にも聞かないとね」
「めんどくせぇ……」
去り際、六堂から半ば強引に連絡先を交換させられ、メッセージアプリでグループチャットまで組まれた。そこにはもちろん三島くんもいる。
俺としてはずっと交換できていなかった三島くんの連絡先も流れでゲットできてよかったのだが――いつ言い出そうか機会を窺うばかりで一向に聞けていなかった――三島くんはおまけでついてきた二人にうんざりしているらしい。なお、天文部のグループチャットはまた別で用意されていた。
「連絡したら喜んでくれるかもよ」
「……喜ばれるのも癪に障る」
「まぁまぁ、そう言わず」
早速、携帯を見ると既に通知が入っていた。よろしく、というスタンプが何個も送られている。
「俺、これから、こいつと付き合っていかなくちゃなんねーの……?」
「俺は楽しそうでいいなぁ、と思うけどね」
若干、距離は近いけれど。
俺のことはあっちゃん、って呼んでね! 俺もタカちゃん、ヒロって呼ぶ! と息巻いていたが、三島くんが割と強めに六堂を小突いたことで事なきを得た。あと、坂木が六堂を宥めたことも大きい。
最終的に、俺等から二人のことを呼ぶときは苗字かつ呼び捨てで呼び合うことで決着がついた。
「お前はああいうタイプが好きなわけ?」
「いや、ただまぁ、元気があっていいよね。さすがに、ヒロって呼ぶって言われたときはびっくりしたけど……」
自分のことを今でもヒロと呼ぶ人間なんて、それこそ幼馴染の孝晃ぐらいだ。あとは高校が離れた友人たち。と言っても、その友人たちも孝晃を通して仲良くなっただけに過ぎず、高校に入ってからは連絡が途絶えている。朝、孝晃と登校するときに彼等の話題が出てくるから、孝晃とは連絡を取っているのだろう。
所詮、友情関係なんて、そんなものだろうなぁ、と諦めている。
「お前は許していいわけ?」
「何が?」
「だから、その、呼び方……」
三島くんがゴニョゴニョと言いづらそうに口をまごつかせる。
たまに三島くんにはこういうときがある。いつもハキハキと物を話すから、躊躇うような素振りを見せられると、俺としてもどうしたらいいか分からなくなる。
「あぁ、ヒロ、ってやつ? まぁ、ちょっと不思議な感じがするけど、俺は嫌じゃないよ」
「……じゃあ、俺も、」
そのあとに続く言葉がかき消える。すぐ真横をクラクションを鳴らしながら車が通り過ぎたからだ。思いの外、道幅を占領しながら歩きすぎてしまったらしい。
二人共、大きなクラクションの音にびっくりして、暫く顔を見合わせてしまった。
「……端っこ、歩かないとだね」
「おう」
白線の内側に収まるよう、さっきよりも気持ち距離を近づけて歩いていく。ふと上を見上げると、三島くんと目が合った。
「さっきのことだけど」
「さっき?」
「名前! アイツにヒロって呼ばせるか、ってやつ!」
「あぁ、うん」
「アイツがいいなら、俺にも紘って呼ばせろ」
三島くんが、ふん、と鼻を鳴らす。
もはや、お伺いではなく命令だ。そういう不遜なところも含めて、三島くんは面白い。
「いいよ。っていうか、もう今、何回かヒロって言ったじゃない」
クスクスと笑えば、三島くんから笑うなと脳天に緩めのチョップを食らわされた。
「揚げ足とんな」
「ごめんて」
「あ、あと俺のことも名前で呼べ」
「そこも強制なんだ……」
でもなんて呼べばいいのだろう。よっちゃんだと、三島くんの友人と呼び方が被ってしまう。だから仲間内からはタカちゃんと呼ばれていたんだろうけど、タカちゃんだと今度は孝晃と被ってしまう。
「じゃあ、夜鷹くんでいい? よっちゃんだと三島くんの友人と被るだろうし、タカちゃんだと俺の幼馴染と被っちゃうから」
「……好きにしろ」
三島くんがふいっと目を逸らす。そのときボソッと、呼び捨てでもいーのに、と言った気がしたが、さすがにそれはハードルが高すぎて頷けなかった。
三島くんは大股で歩きながら、途中で見つけた小石を蹴った。さっきから三島くんの機嫌は急降下に急降下を重ねて、地面スレスレのところを低空飛行している。
三島くんと一緒にい過ぎたせいで、今ではさほど怖いとも思わないけれど、通り過ぎる人たちは自然と俺たちのことを避けて通った。
「彼、凄かったよね……」
「マジ、距離感ってやつがねェ……」
六堂は俺や三島くんとは違い、ガンガン内側に入ってくるタイプだ。既に出来上がった輪の中にも躊躇わず入っていきそうだし、人の心の中にもズカズカと入っていきそうな感じである。おまけに物怖じしないし、素直。面食らってしまう瞬間もあるけれど、嫌味な感じがなく、ストレートだから嫌いになれないところがある。
一方の坂木はその六堂の手綱を握り、ヒートアップするタイミングでリードを力いっぱい引けるタイプの男だった。本当の意味での猛獣使いは彼なのでは、と感心してしまうほどである。
「マジでよっちゃんの幼馴染とは思えねぇ」
「その、よっちゃん、って人が三島くんの友だち……なんだよね?」
「あぁ。北高に行っちまった。他にも仲いいヤツいたけど、全員北高だ」
「そっか……」
それは寂しいだろうな、と俺は勝手に三島くんの気持ちを想像する。
自分も孝晃と離れて寂しいと思っているし、他の友人とも学校が変わってしまったことは寂しいと思っている。
でも、はぐれものの二人だったからこそ、こうして引き合えたのもまた事実だ。ひとりでよかった、とは口が裂けても言えないが、俺にとって三島くんと友だちになれたことは嬉しいことだった。
「なぁ、鷲宮」
「なに?」
「その、さっき言ってた単発バイトだけど……やる?」
「え、いいの?」
「まぁ、お前が嫌じゃなければ……だけど」
「やりたい! 出来れば合宿、行きたいし」
「そっか」
三島くんの表情が和らぐ。もしかしたらバイトを誘うのに気を遣わせてしまったかもしれない。
「バイトってどんなの?」
「車屋と併設してるカフェのバイト。先輩が車屋やっててさ。整備の待ち時間に利用してもらうためのカフェがあるらしいんだけど、人手が足りないって言ってて。たまにバイトの欠勤が重なるとキツイって言ってたから、時々なら入れさせてもらえるかも」
「カフェか……。なんか自分が働いてるとこ、想像つかないかも……」
「お前なら似合いそうだけど」
「俺が……? 無理じゃない? 笑顔引き攣りそう……」
ムニムニと自分の頬を揉む。
三島くんは似合うと言ってくれたが、人見知りな俺にとって、接客バイトはハードルが高すぎる。それでも背に腹は代えられなかった。
三島くんによると時給は千円だと言う。五時間ぐらいのバイトを二日も入れば、すぐに一万円に手が届く。俺にとって、魅力的な話でしかなかった。
「とりあえず、先輩には話つけておくわ」
「うん。ありがとう。で、あの二人はどうするの……?」
「一応、話はしておくけど……そもそもアイツ等、土日は部活とか言ってなかったか?」
「確かに……」
六堂は軽音楽部が、坂木は水泳部の活動があると言っていた。どちらも土日に活動する分、平日が空くからという理由で天文部に入ったような……。
「ちゃんと二人にも聞かないとね」
「めんどくせぇ……」
去り際、六堂から半ば強引に連絡先を交換させられ、メッセージアプリでグループチャットまで組まれた。そこにはもちろん三島くんもいる。
俺としてはずっと交換できていなかった三島くんの連絡先も流れでゲットできてよかったのだが――いつ言い出そうか機会を窺うばかりで一向に聞けていなかった――三島くんはおまけでついてきた二人にうんざりしているらしい。なお、天文部のグループチャットはまた別で用意されていた。
「連絡したら喜んでくれるかもよ」
「……喜ばれるのも癪に障る」
「まぁまぁ、そう言わず」
早速、携帯を見ると既に通知が入っていた。よろしく、というスタンプが何個も送られている。
「俺、これから、こいつと付き合っていかなくちゃなんねーの……?」
「俺は楽しそうでいいなぁ、と思うけどね」
若干、距離は近いけれど。
俺のことはあっちゃん、って呼んでね! 俺もタカちゃん、ヒロって呼ぶ! と息巻いていたが、三島くんが割と強めに六堂を小突いたことで事なきを得た。あと、坂木が六堂を宥めたことも大きい。
最終的に、俺等から二人のことを呼ぶときは苗字かつ呼び捨てで呼び合うことで決着がついた。
「お前はああいうタイプが好きなわけ?」
「いや、ただまぁ、元気があっていいよね。さすがに、ヒロって呼ぶって言われたときはびっくりしたけど……」
自分のことを今でもヒロと呼ぶ人間なんて、それこそ幼馴染の孝晃ぐらいだ。あとは高校が離れた友人たち。と言っても、その友人たちも孝晃を通して仲良くなっただけに過ぎず、高校に入ってからは連絡が途絶えている。朝、孝晃と登校するときに彼等の話題が出てくるから、孝晃とは連絡を取っているのだろう。
所詮、友情関係なんて、そんなものだろうなぁ、と諦めている。
「お前は許していいわけ?」
「何が?」
「だから、その、呼び方……」
三島くんがゴニョゴニョと言いづらそうに口をまごつかせる。
たまに三島くんにはこういうときがある。いつもハキハキと物を話すから、躊躇うような素振りを見せられると、俺としてもどうしたらいいか分からなくなる。
「あぁ、ヒロ、ってやつ? まぁ、ちょっと不思議な感じがするけど、俺は嫌じゃないよ」
「……じゃあ、俺も、」
そのあとに続く言葉がかき消える。すぐ真横をクラクションを鳴らしながら車が通り過ぎたからだ。思いの外、道幅を占領しながら歩きすぎてしまったらしい。
二人共、大きなクラクションの音にびっくりして、暫く顔を見合わせてしまった。
「……端っこ、歩かないとだね」
「おう」
白線の内側に収まるよう、さっきよりも気持ち距離を近づけて歩いていく。ふと上を見上げると、三島くんと目が合った。
「さっきのことだけど」
「さっき?」
「名前! アイツにヒロって呼ばせるか、ってやつ!」
「あぁ、うん」
「アイツがいいなら、俺にも紘って呼ばせろ」
三島くんが、ふん、と鼻を鳴らす。
もはや、お伺いではなく命令だ。そういう不遜なところも含めて、三島くんは面白い。
「いいよ。っていうか、もう今、何回かヒロって言ったじゃない」
クスクスと笑えば、三島くんから笑うなと脳天に緩めのチョップを食らわされた。
「揚げ足とんな」
「ごめんて」
「あ、あと俺のことも名前で呼べ」
「そこも強制なんだ……」
でもなんて呼べばいいのだろう。よっちゃんだと、三島くんの友人と呼び方が被ってしまう。だから仲間内からはタカちゃんと呼ばれていたんだろうけど、タカちゃんだと今度は孝晃と被ってしまう。
「じゃあ、夜鷹くんでいい? よっちゃんだと三島くんの友人と被るだろうし、タカちゃんだと俺の幼馴染と被っちゃうから」
「……好きにしろ」
三島くんがふいっと目を逸らす。そのときボソッと、呼び捨てでもいーのに、と言った気がしたが、さすがにそれはハードルが高すぎて頷けなかった。
あなたにおすすめの小説
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
優等生αは不良Ωに恋をする
雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。
そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。
「うっせーよ。俺に構うな」
冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。
自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。
番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。
それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。
王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開!
優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。
過労で倒れかけの騎士団長を「カツ丼」で救ったら、なぜか溺愛され始めました。
水凪しおん
BL
王都の下町で、亡き両親が残した小さな食堂をたった一人で切り盛りする青年、ルカ。
孤独な日々の中で料理だけを生きがいにする彼の店に、ある冷たい雨の夜、全身を濡らし極限まで疲弊した若き騎士団長、レオンハルトが倒れ込むようにやってきた。
固形物さえ受け付けないほど疲労困憊の彼を救うため、ルカが工夫を凝らして生み出したのは、異世界の食材を組み合わせた黄金色の絶品料理「カツ丼」だった。
その圧倒的な美味しさと温もりに心身ともに救われたレオンハルトは、ルカの料理と彼自身に深く魅了され、足繁く店に通うようになる。
カツ丼の噂はまたたく間に王都の騎士たちや人々の間に広がり、食堂は大繁盛。
しかし、その人気を妬む大商会の悪意ある圧力がルカを襲う。
愛する人の居場所を守るため、レオンハルトは権力を振るって不正を暴き、ルカもまた自らの足で立つために「ルカ商会」を設立する決意を固める。
美味しいご飯が傷ついた心を癒やし、やがて二人の絆を「永遠の伴侶」へと変えていく。
胃袋から始まり、下町の小さな食堂から王都の食を支える大商会へと成り上がる、心温まる異世界お料理&溺愛ファンタジー!
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。