桜姫の受難 

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波乱な生徒総会!何が起こる?

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波乱な生徒総会!何かが起こる?




生徒総会当日、体育館に集まった生徒達が騒がしく雑談をしている。ちらりとステージの幕越しに、俺は様子を伺った。
ステージには各委員会の委員長席と、生徒会の上役の席に、議長の席が用意されていた。
書類もすべてそろい、俺は後数分で始まる総会のために、マイクを握り締めた。




「今回議長を務めさせていただきます桜庭姫です。それではこれより、生徒総会をはじめます。まずお手元の資料を1ページめくってください」

依然生徒は騒つきながら、始まりは俺が議長席に座り、各委員長、生徒会四人が席に座ってからが合図だった。
それから俺が進行役とともに、各々から資料に元ついて説明してもらう。
一つの委員会が説明しおわると、意見質問の時間が10分程度設けられ、質問はその時かけられた委員長が答え、意見は俺がまず決議を全校生徒にあげさせ、最後その委員会がもち帰りで今後の運営に反映させるシステムだ。
部活動などの予算は生徒会の仕事で、読み上げるのは早瀬だ。
生徒会の予算は生徒会長自ら読み上げる。
総会すべての記録がかりは本来副議長と臨時の書記がするのだが、それは作らずに、生徒会書記の藤村がする。
副会長の愛鵡先輩には出番はないが、とりこぼしがないといけないので、同じく書き取りをやらせていた。

滞りなく、順調に進んでいた総会は、生徒会予算の説明になると、騒つきは黄色い声に変わった。
早瀬や、会長と呼ぶ声が起こる。

「それでは今までの資料を元に、質問のある方は挙手をお願いします」

総会は後はもう少しで終わる。
だいたい最後に質問する奴は今までの経験でいないから、これで終了となるはずが、一年の席から挙手があがり、その周りからざわめきが起こる。
挙手した一年に他の二年の事務員がマイクを渡した。
その様子は少し戸惑っているようだった。
席を立ったその一年は、なんと、生徒会事務員の小柴だった。
一緒に総会のための書類を作ったのに、何か不明な点があったとも、不満な所があったともありえない。
俺は小柴の行動に不思議に思いながらも、彼の言葉を待った。

「1年S組の小柴縁(こしばゆかり)です。今日は議長である桜庭姫先輩に質問があります。総会には関係がありませんが、皆さんも気になっているとお思いですので、この場で聞くことを御了承ください」

「小柴縁くん、今は総会についての質問時間です。個人的質問は終わってからお聞きします」

俺は小柴をたしなめ、これで終わりにしようと閉会の言葉を紡ごうとしたが、真司先輩がマイクを俺から奪った。

「いいぜ、チビ。面白そうだし、俺が許可する」

この場をしきるのは俺の役目なのにと、眉を潜めマイクを俺は取り替えそうとしたが、無理だった。
今や体育館は小柴の俺への質問はなんだと、興味の視線が彼に集まっていた。

「会長、許可をありがとうございます。桜姫先輩は生徒会事務員として、仕事を日々こなしていらっしゃいますが、先日早瀬先輩があまりに、仕事をしないためにご褒美という言葉を餌に、早瀬先輩に仕事をさせていました。桜姫先輩は早瀬先輩と交際なさっているのでしょうか?」

思考回路が数秒止まったのが、再び動きだした後に確認できた。
俺は口が、顔全体が引きつる思いだった。

その間に早瀬がマイクをどこからか取り出して嬉々として、そうですと答え、体育館に絶叫がこだました。いやーー、
そんなぁとか聞こえる。
男泣きとかしてる奴もいるし、早瀬以外の上役は物凄く不機嫌面だ。
隣に座っていたどこぞの委員長は嘘ですよね?と俺に泣いて縋ってくるので、欝陶しい事この上ない。
俺は早瀬をにらみつけ、真司先輩からマイクを奪い、だんとマイクで机を殴った。
大きな音ともに、一瞬にして静かになり、俺はあたりを冷たい目で見渡した後に、口を開いた。

「ただ今の小柴くんの質問ですが、いまこの場には不適切なため、返答しないのが本来妥当な対処ではありますが、お恥ずかしながら、自分の名誉のために特別にお答えします。俺と早瀬の交際はありえません。それから、他の生徒会上役との噂もあるようですが、いっさい事実無根です」

小柴から信じられないような質問をされたために、心なしか声質が冷たいものになる。ついと視線を彼にやると、びくりと肩を震わせたが、真剣な眼差しで俺をみていた。

「それは、信じていいんですよね?」

「小柴くん、この件に着いては後で個人的に質問してください。このような場でされて不愉快です」

「…質問解答ありがとうございます。不適切な質問失礼しました」

ぴしゃりといわれ、小柴はしゅと沈んで席に座った。解答をせかした真司先輩をそれ以上発言させないように、俺はさっさっと閉会言葉を告げたのだった。









「あの、桜姫先輩……」

総会が終わってから放課後、小柴が生徒会室にやってきた。上役四人はあれから、誰となら付き合うかとか、身体をつなげたら、絶対に惚れるなどとふざけた事を抜かしてきたので、今だにたまっている書類を処理させている最中だった。

「小柴、今日の事は事務員として、してはいけない事だと分かっているよね?」

「……はい。でも、個人的に質問したら、はぐらかされると思ったから…」

「何でそんなこ……」

と、と言いおわらない内に、俺は小柴に抱き締められていた。いや、小柄な小柴と俺では、抱きつかれたような感じだ。

「僕、僕はずっと桜姫先輩をお慕いしてました!その麗しいお姿を傍で拝見できるだけで、幸せでした。けど、けど、早瀬様や藤村くんが桜姫先輩に言い寄って、誰かと万が一でもお付き合いしてるのかと思うと、悔しくて……」

小柴の目には涙が浮かんでいた。
そこまで俺を思ってくれていたのかと思い、膝をつき、優しく零れ落ちる雫を指で拭った。

「ありがとう、小柴。でも俺は誰とも付き合ってはいませんし、申し訳ないですが、当分は色恋ざたに着手するつもりもありません。それから勝手な憶測であのような行動をしたのはいだだけません。ですから、罰を言い付けます。これから、事務員期間中は俺の補佐的役割をする事。これが罰です」

「先輩を、信じれなくてごめんなさい」


俺と小柴が事務員としての絆を深めていると、真司先輩達は恨めしそうにこちらをみながらも、書類をひたすら処理していた。

「おい、チビも参戦か?」

「ま、私の敵ではないけどね」

「余裕でしょ。出し抜くなんて朝飯前ですよ」

「早瀬さん、そういうの好きですよね」


各々がぶちぶち言い合って、ようやく小柴が泣き止んだことにほっとしたのも束の間、俺はある事を思い出した。




「再来週に新入生歓迎会があったのを忘れてました!!!」



俺はすぐさま、新入生歓迎会のための準備をはじめるために、動きだしたのだった。







終幕




副題は子犬、反旗を翻す。
全然そんな感じはありませんが。
姫にとって、自分の意にそぐわない事をされるだけで、それはもう謀反を起こしたように見えるのです。

帝前会長時には、姫のイメージは高潔なお姫さまで、今は女王さま(笑)







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