【書籍化予定】どこからが浮気になるんだ?と、旦那様はおっしゃいました。

iBuKi

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実は転生者である。

所謂前世の記憶も持ち、知らない世界の文明などの知識を持った転生者なのだ。

転生者の時代や世界はそれぞれ違ったりするので、ここと似た文明の時代の時もあり、
転生者だからといって、特別な知識を持たない場合もあるのだが。


私は日本という国に産まれ、かなり近代的な文明に触れていた。
専門家ほど造形は深くないが、それなりに年を重ねたある日に天に召され、ここへ転生している。
この国にとって、使える知識かどうかまで考えた事がなく、これあるといいなを国に役立てたい!という崇高な使命より、自分で作れたらこっそり作って使おうという、前世から目立ちたくない性格を素直に引き継いだ閉鎖的な思考の持ち主でもある。所謂、スマホ(スマートフォンという通信機)が1人に付き2台とまで言われる程爆発的に普及した世界に住み、そのスマホを駆使して情報社会の様々な知識や便利さを享受していた為、前世の人間なら「そんなこと知ってるよ」程度でも、この国の文明レベルでは充分に使えそうな様々な知識を持っていた。

さて、この国は30年に一度程度の割合で、転生者が誕生する。
転生者は、今判明しているだけでは、全員が前世の記憶を持ち、前世の世界での文明や娯楽をこの国へ報告することで、国の発展に寄与してきた。


国も転生者に関して、知識と発展を約束する存在と認識をしている為、他国への流出を防ぐ為に、かなり厚遇をしている。

転生者というだけで、銀のスプーンをもって産まれてきた。とまで言われるくらいだ。(過去の転生者の前世の国の言葉らしい。意味は、初めから上流階級に産まれる赤子に言われる言葉。身分が高い故に幸せや成功を約束された身を揶揄される言葉である)


そんなかなりの厚遇があり、今までの転生者達の貢献を知るこの国の王家は勿論、末端である民にすら敬われる存在であったりするのだ。


そんな私は自分が転生者だとはバレなかった。


理由は単純、両親が娘以外の事に夢中過ぎたからだ。
父親は侯爵というより商人という方が似合う程に商売が大好きで、屋敷に残り貴族らしいことをするより、
金を稼ぎたいという一点のみに情熱を傾ける人だ。
母親は、美しいモノをこよなく愛し、宝石・ドレス・美しい自分・・・の次にあたりで、四番目は娘かしらね?と思うような抜けた人だ。
私が美しくなかったら、虐待されていたんではないか?もしくは捨てられていてもおかしくない。(金稼ぎ以外に無関心のあの父だ、私が捨てられていても分からないだろう。)と確信出来るくらいには、美しくないものには容赦がない。


この世界に生を受けたばかりの赤子の頃から、一度としてわざわざ部屋までは来てくれなかった両親。
全てを乳母であるマルガリータに丸投げで、言葉が片言に話せる様になった幼児時代に見かける事があっても、母にも父にも、未知の生物でも見る様な目で見た後、見なかったかの様に無視された。


そんな居ても居なくても、生きていても生きていなくても問題ないだろう私に、この屋敷の使用人はとても同情してたのだろうか。
愛されてもおらず、関心もなく、ただ放置される私を馬鹿にする使用人など一人も居なかったのだ。
ちゃんと、侯爵家のお嬢様の扱いをしてくれた。
それゆえ、性格が捻じくれる事もなくすくすくと育つことが出来たのだと思う。
5才の頃に転生者だと気付いた時には、侯爵家の為になど両親の利になることはするものかと決めた。
両親には恵まれなかったが、たくさんの使用人には恵まれた。

おかしな話だが、使用人の方が余程家族みたいだっただろう。


そんな忘れ去られた存在の私に今まで見向きもしなかった母も、私が8才ほどになると居たのを思い出したとでもいうのか、淑女教育を施し始めた。
家庭教師も付けられ、10才の淑女デビューへ向けて、慌てて知識を詰め込み、令嬢として仕上げることにしたみたいだった。

平民でも気の合う人となら結婚をして子供を持ちたいな。という気楽な考えを叶える可能性はゼロになった。


教育を詰め込まれる中、かなり遅い教育にも関わらず文字も読め字もかけた私に教師は違和感を母親に伝えた。


「もしかして、貴方転生者なの?」

と、欲と期待に濡れた目を向けられて寒気がする。

「最近、先生から習ったのですが、転生者っていう存在がいるのですね。別の記憶などもっていないので、私は転生者ではありませんよ、お母様」

途端に私に興味を失った母親に、淡々とウソをつきながら気を引き締めた。
優秀だと思われるレベルも飛び抜けると怪しまれる。
ほどほどに優秀の線を守らなければならない。

その日から、令嬢にしては少し優秀じゃなくて?を目指した。


王家に報告されて、国に囲われるくらいなら、結婚をして子供産み育て、ごく平凡な貴族婦人としての人生で充分だと思っていたから。

幼い私をよく知る乳母なら分かっていただろうし、使用人達も大なり小なり違和感を持った筈だ。
それなのに今まで私が転生者であることは一言も口にしてないのだろう、バレていない。

血を分けた母よりも乳母の方が私を大切にしてくれた。本当の母親のように。
使用人達は、父や兄や姉や弟や妹・・・家族だ。

未だに沈黙して貰えてるところを見ると、王家などではなく普通に生きたい私の願いを一番理解してくれてるからかもしれない。



転生者の大半は幼い子供の頃にポロポロとうっかり発言したり、その振る舞いや言動に幼さを感じない両親が、
心配から医師を呼ぶ、転生者ではないかと期待した両親が王家に報告する。などで、判明したりするのが多い。
自分からの報告で転生者と明かす人いるが、後天的なのは稀だ。
どれくらいの人数が誕生するのか、そしてその中で記憶を持たず後に記憶が戻り転生者としての知識を思い出すのか。そこら辺はまだはっきりと判明していないらしい。

転生者として認められる事としては、不可思議な知識や娯楽の提案でも判明するが、
15年前に「私は(俺は)転生者だ。厚遇しろ」的なアホが大量に湧いたせいで、転生者を見極める魔道具が開発されて、今はそれを使ってる様だ。
最初の初期型の精度が悪かったので、しばらく使用出来ず、改良後は精度が高い状態を保っているという。

世界全体で30人ほどの転生者がおり、そのうち我が国に住むのは3人だという。

(私で四人目)


明日は私の結婚式、私の一番の願いは「浮気をしないこと」だった。
前世であれば、当たり前の話も、この世界ではちょっと違ってくる。

貴族にありがちな政略結婚は多く、夫も妻にも結婚後は愛人を持つことが多い。
日本で育った私は浮気=愛人だった。
勿論、日本で政略結婚をする上流階級に属する限られた人達の生活を覗き見してる訳ではないので、
やんごとなき身分の方々が浮気していないとはないであろう。
ただ表だって出来ないだけで。
この世界は表だって堂々と出来る。
勿論、夫婦として尊重し合う事は大前提ではあるが。
愛人を持つ話をしても眉を顰められる、という事もなく「ああ、あの綺麗な未亡人の・・」と、夫に先立たれた未亡人を愛人にっていう話も普通に談笑中の話題にされる。

郷に入らば郷に従えとはいったものだけれど、どうしても無理だった。
一夫一妻の日本で生まれた価値観が濃く、決して許容出来ないのだ。
なので、婚約を申し込まれれば、必ずその話をしてきた。

誠実そうな素振りで了承してくれる方も中にはいたけれど、相手はここまで浸透した常識を持つ貴族子息、やはり信用出来なかった。

令嬢としての勤めとして、家に利になる縁談を決めないどころか、婚約者すら持たない私を見兼ねた母が、
父に「商売ばっかりしていて、娘の縁談を決めない無能と思われてますわ。」と囁き、父の交友関係の中から用意してきたのは、公爵家の縁談だった。

貴族の中の最高位、夜会にあまり顔を出さない私に舞い込んだ大きな縁談。
向こうから申し込んで来た訳ではなくとも、こちらから断れなくする格上を用意してくる辺り、
父は商売人だからえげつないのだろう。


公爵家かもしれないが、いつもの条件を言わないという事は出来なかった。
「ヘルグレーン様と婚約し、やがて婚姻するのであれば、私は浮気は絶対許しません。後継ぎを産んだとしても、男女の情は夫婦だけのものとしての生活を望みますので。この発言も、次期公爵様に不敬である事を分かっていながら発言しています。こんな私の拘りは、貴族の常識としては真逆だということは承知しております。先程のお申し出も、撤回して頂いて構いません。」
いつもの様に曖昧に笑って「もし縁がありましたら・・・」で続く言葉を待った。

公爵嫡男様は私の条件にとても喜んだ。
「私も浮気は許せない質だ。貴方のその条件は私にとっても最高の条件だよ。必ず守ろう」と、おっしゃってくれたのだ。
驚く事に見目麗しい子息様は、本当に嬉しそうにそう言った。

「こんな価値観を持つ令嬢は居ないと思っていたから、私も嬉しい。今日この場に来て本当に良かった。証明書を作って互いに一部ずつ持とうではないか。これは大切な契約だ。破棄することは離縁を意味する。大事なしよう。」

見目が麗しければ麗しい程に寄ってくる女性も多く、誘惑の誘いも多いだろうという事は簡単に想像がつく。
イケメン=浮気男、私の中では鉄板中の鉄板だった。

そうだというのに、証明書まで作成してくれ、互いに微笑みながらサインもした。
こんな人が旦那様になるなんて。夢の様だ。
この人が、結婚相手で良かったと嬉しかった。

だから、嫁ぐことを決めたのだ。


旦那様が裏切るまでは、私はこの結婚に何の不満も不安もなく、幸せすら感じていた。

裏切られるまでは。

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