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24話 卒業3
エンプハル公爵家のアオラ嬢が頬を染め、ドレスの裾を足首まで引きあげ、デシルの隣に立つフリオに向かって走って来る。
ばたばたとアオラが走る姿が人目を引き、『何事だ?』と振り向くパーティの参加者たちの視線をいっきに集めた。
あまりにも不作法で、はしたない行為だったため、その姿を見た年配の婦人たちは眉をひそめ… 同じ年齢の学園を卒業するオメガたちは、ひそひそと噂話をした。
これだけでも、社交界で醜聞になるのは間違いない。
「このオメガの誘惑フェロモンは… ああ… このフェロモンは… アオラ! アオラ!」
デシルの隣でフリオが顔を赤くして、ぶるぶると身体を震わせてつぶやいた。
こちらに向かって来るアオラとフリオとの間には、かなりの距離があったが、離れていてもお互いが、“番”のフェロモンを感じ取っている様子だ。
「・・・っ」
フリオから、アルファ・フェロモンが… すごくたくさん出ている! “番”のアオラ様が近くにいるか、いないかで… こんなにも差があるんだ?!
普段よりも強い抑制剤を飲んでいるデシルは、発情まではしなかったが、それでもフリオのフェロモンに影響を受けないよう… フリオから離れた。
少し前まで、デシルに八つ当たりして暴言をはいていた時は、フリオのフェロモンをほとんど感じなかっただけに… 過去の自分を思い出し、チクリッ… とデシルの胸が痛む。
何年もフリオが本当に好きだったから、結婚して将来のヌブラド伯爵夫人となっても、フリオに恥をかかせないよう、デシルが必死で努力してきたことなど、フリオにとってはどうでも良いことなのだと、思い知った。
良い妻に… 良い伯爵夫人に… 良い恋人に… 一生を共に生きる“番”… 伴侶として… そうなりたくて、愛するフリオのためにデシルは努力してきたのにだ。
「ああ… このフェロモンは… やっぱり彼女こそが、オレの“運命の番"だ!!」
手に持ったワイングラスを放りすて… 熱っぽく貪るようにアオラを見つめながら…
隣に立つ子供の頃からの婚約者、デシルの存在など忘れて、フリオはアオラに向かってかけ出して行く。
「あんなに努力したのに、努力だけでは、オメガとして興味さえ持ってもらえないんだね?」
僕の何が悪かったの? 子どもの頃は綺麗だって、いっぱい褒めてくれたのに… 僕のこと好きだと、言っていたのに? 何でなの? フリオ…
サリダと交流し、アオラがどのような性格の持ち主かを聞くうちに、何となくデシルも予想はついていた。
伯爵家出身のサリダを家格が低いと罵るアオラの話を聞き… 恐らく高位貴族の友人の中でも、素直なフリオは一番アオラの影響を受けて、デシルを平民あがりの子供だと、血筋について蔑んだのではないかと……。
デシルの父コンドゥシル男爵は、ヌブラド伯爵家の使用人を買収し、フリオが使う抑制剤を、効き目の無い物とすり替えさせていた。
アオラが使う抑制剤も、サリダが調査で雇った騎士を通じて、侍女を買収して効き目の無い物とすり替えられている。
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