夢見るオメガは運命を探して~出会った瞬間、溺愛確定⁈

金剛@キット

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28話 朝食 カイリside

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 遺伝子の相性が良い相手との生活は、カイリには思った以上に快適だった。

「暖かいうちにどうぞ!」

 タブレットで今朝のニュースを見ていると… ニコニコと機嫌良く笑いながら、フユメはダイニングテーブルの椅子に座るカイリの前に、出来立ての味噌汁をことりっ… と置いた。
 
 味噌汁の横には、炊き立てのご飯と焼き魚、卵焼きが並んでいる。


「ありがとう」
<予定外だった前夜の激しいセックスで、身体が辛いだろうに… フユメには可哀そうなことをした>
 フユメに礼を言いながら、カイリは昨夜の反省をする。

 カイリの実家の神田系列の企業に勤めるアルファが、カイリの会社によく出入りするため、本音ではフユメのアルバイトを認めたくはなかった。

 だが、他で探すとフユメに言い出されるのが嫌で、カイリは渋々応じるしかなく…
(さすがにカイリも、フユメがバイトをしたがる真の理由が、"カイリさんが働く姿を見たいから!" だとは気づいていない)

 微妙にすれ違っている2人である。

<早速、センリと平沢のせいで、アルファに絡まれて怖い思いをしたのだから、怯えてそのままフユメがアルバイトを辞めてくれれば良いのに! せめてヒロキのように、番の契りを私と結んでからなら良かったなぁ…>

 "早く辞めて欲しい" と… そんな少々意地悪な意図があり、カイリは会社で不安そうに震えるフユメに、敢えて声をかけず、ヒロキにだけ声をかけたのだ。

 昨夜、会社を離れた後ヒロキから、『平沢さんにフユメ君が口説かれていたから、気を付けた方が良いよ』 と連絡があり…

<私のベッドで熟睡するフユメの寝顔を見た瞬間、カッ… と頭に血が上り、アルファの本能的な独占欲と… 半分は大人げない八つ当たりで、強引に抱いてしまった… これではまるで、弟のセンリみたいじゃないか!>

 子どもっぽい奴だと、弟センリを揶揄う権利をカイリは失ったらしい。


 コーヒーを取りにキッチンに戻って行く、いつもよりも動きの鈍いフユメの後ろ姿をながめていると…
 時々ふらつきながら、トンッ… トンッ… と自分の細い腰を拳でたたく姿に、カイリは苦笑した。

<今日ぐらいは、近くのカフェで朝食をとろうと誘ったのに、フユメの強いこだわりから、結局外食は却下されてしまったし… 実家にいる時は母親の代わりに食事を作っていたと言うから、私としては今まで苦労したぶん、楽をさせてやりたいのだが、フユメ自身が楽をするのが嫌だと言うし… うう~んん…>
 
 顔を横にふりながらカイリは腰を上げ、フユメに続きキッチンに入る。


「ん? カイリさん、何? お醤油?」

「フユメさんのお手伝いがしたくてね!」

「ふふふっ… ありがとう!」

「こちらこそ、毎日の朝食をありがとう!」

 チュッ… とすべすべの頬にキスを落とし、カイリはフユメの朝食をテーブルに運んだ。


「ふふふふっ…」

 楽し気なフユメの笑い声が耳に入り、カイリの顔にも自然と笑みが浮かぶ。


<高校を卒業して以来、ずっと1人暮らしをしていたから、私のテリトリーに他人が入るのが少し不安だったが… フユメの姿を見ても、気配を感じても、不快なことなど一つも無いし、それどころか言葉では言い表せない、何とも心地よい甘味を感じるなぁ…> 

 2人分のコーヒーをフユメがテーブルに置いたタイミングで、カイリはぽつぽつとつぶやいた。


「早くフユメを番にして、結婚したい」

「・・・・っ?!!!」



 一瞬で真っ赤に染まるフユメが、何とも可愛い。






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