浮気な婚約者を忘れ、一夜の恋に僕を捧げる

金剛@キット

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17話 発情期 イグナシオside

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 いくつかの大切な用事を済ませて王宮内の離宮へ戻ると、玄関ホールでオレを迎えた執事のベネディクトに、脱いだ軍服の上着を渡しながらジェレミーのことをたずねた。


「彼のようすはどうだった? やはり、家に帰りたがっていたか?」

「はい。 旦那様の指示通り、お客様が昨夜お召しになっていた服を取り上げて、お帰りになるのを待っていただいております」

「そうか、良くやった。 彼は怒っていたか?」
「いいえ、とても落胆しておられる様子でした」
「なるほど」



 寝室へ入ったとたん、オレは部屋中に充満じゅうまんするオメガの誘惑フェロモンに圧倒された。

「うっ! 何だこれは?!」
 オレはジェレミーの誘惑フェロモンでグラグラとふらつき、シャツのそでで鼻をおさえた。

 ハァッ… ハァッ… とあらい息づかいで ベッドで苦しそうにしているジェレミーを見つけ、あわてて顔をのぞき込んだ。

「ジェレミー…?!」
 ほほに触れると熱っぽくて、見るからに辛そうだった。

「あ… ナシオ… 発情期になっちゃった…」
「発情期?!」
「ごめんなさい。 ううっ… もっと先のはずなのに… 本当にごめんなさい」

「いや… 謝るなジェレミー、君は悪くない。 …たぶん、昨夜オレが抱いたからだと思う」

「はぁ?」
「オレがジェレミーに与えた性的刺激が、発情期を引き起こしたんだ」
「ど… どうしてそんなことに…?」

「ジェレミーの身体が相性の良いアルファと交尾して、もっとたくさん子種を欲しがっているからさ」

「うわっ! 最低」
「おいおい、そんなにオレの子種が嫌か? さすがに傷つくぞ…」

「ご… ごめんなさい。 だって他所よそのお家でこんな、はしたないコトになるなんて… 恥ずかしくて… んんんっ…」

 ジェレミーは股間を押さえて恥ずかしそうに身体を丸めた。
 そんな初々しい姿があまりにも可愛くて、オレはつい… ジェレミーをイジメたくなる。

「バカだな、ジェレミー。 昨夜はもっとはしたなくて、恥かしいコトをオレといっぱいしただろう?」

「やぁっ…!」
 ジェレミーは今にも泣きだしそうな表情で瞳をうるませる。

 少しイジメすぎた。

「まぁ、オレの方がジェレミーの可愛さに抵抗できす、思春期のガキのように盛ってしまったからな。 どちらが悪いかと言えば、オレの方が悪い」
 おっとイケナイ。 揶揄からかうつもりが傷つけてしまったか?

「ナシオ、早くうちに帰りたいから…… んんっ… 僕の服を… それと馬車を呼んで。 あの… 本当にごめんなさい…」

 苦しそうにうめき声をあげ、ジェレミーは真っ赤な顔でオレに謝った。

 過去にオレが出会った未婚のオメガたちなら、ここぞとばかりにオメガのフェロモンをき散らし、誘惑を仕掛けて来ただろう。
 …だが、ジェレミーの愚直ぐちょくなほど誠実な態度が、オレのプライドに小さなヒビを入れ、執着心を刺激した。

「無理をするなジェレミー、帰らなくて良い。 このまま泊まって行け! 昨夜はあんなに激しく抱き合ったのに、そんな体調で本気でオレを置いて出て行く気なのか?」

「でも… あなたに迷惑をかけてしまうから……」

「オレ自身に魅力を感じないのか?! それともオレが一回りも年上だからか?」
 なぜもっとオレを誘惑しようとしない? やはりオレが何者か伝えてないから、不安なのかもしれない。
 だがオレが何者かを伝えたら、ジェレミーの態度は変わってしまうだろう。
 もう少しだけ、このままの関係でいたい。


「違うよ、ナシオ! だって僕は発情期だから… それに両親も心配していると… 思うし……」

「それなら、後で手紙を書くと良い。 明日にでも届けさせよう」

 ジェレミーはしばらく悩むが、結局はコクリとうなずきオレの提案を受け入れた。

「……わ、わかりました。 明日の朝、書きます」
「よし、なら発情期の間はここに泊まることで決まりだな!」


 実は昼間のうちにメアヴェール伯爵家を訪問して、昨夜ジェレミーが婚約者にひどい扱いを受け… オレが王宮で保護して、その時『初めて』の相手をつとめたことを両親に報告した。

 …そしてオレの命令で、アルベルトとダミアンが戦死したことも、包み隠さず伝えた。




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