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7話 レウニールの家族 レウニールside

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 ―――2年前。


 社交シーズンが終わり次第、王都の厳しい夏の暑さを避けて、私は涼しい田舎の領地へ家族を連れて行こうと決めた。

 だが運悪く隣国の王族が、私が忠誠を誓う王太子殿下との会見を申し込んで来たため…
 私が所属する、王宮や王族の護衛が主な役割の白騎士団が急に忙しくなり、弟に家族を連れて、先に領地へ行くようにと頼んだ。


 隣国の王族を安全に受け入れるための、警備体制を大急ぎで整え、ようやくホッ… と一息ついた時だった。


「レウニール! 今すぐ領地へ行け!!」
 普段は冷静沈着が売りの白騎士団の団長が、顔を強張らせてレウニールを呼びに来た。

「どうしたのですか、団長? この忙しい時に、私にだけ休暇をくれると言うのですか?」

「そうではない! レウニール、落ち着いて聞けよ? お前の家族が旅の途中で、魔獣の襲撃を受けた!」

「何ですって?! 誰かケガを? みんな無事なのでしょうか?! 団長?!」

「破壊された馬車が… 道端みちばたに放置されていると報告を受けた、地元の青騎士団がけ付けた時には… 生存者は見当たらなかったそうだ…」

「そ… そんな… 腕きの護衛騎士たちが付いていました! それに弟は魔獣討伐とうばつが専門の、黒騎士ですよ?! 弟が… 護衛騎士たちが… どこかに避難させたのでは… ないでしょうか?!」

「いや… その護衛騎士たちも… 遺体で見つかっている、御者も使用人たちも… 魔獣の足跡が複数残されていたというから、恐らく魔獣の群れに襲われたのだろう」

 白騎士団の団長は、動揺する部下レウニールに配慮はいりょして、口には出さなかったが… 
 現地の治安維持が役割の青騎士団からの詳細な報告で、見つかったのは、損壊そんかいされた遺体の一部と、騎士たちの剣や無残に切り裂かれた衣服だけだった。


「レウニール、今すぐ現地へ行け! 休暇を1週間… いや、1ヵ月やる!」




 騎士団長から報告を受けてすぐ、青騎士たちに先導され馬を飛ばして現地に向かい、レウニールは翌日の夕方近くに到着する。

 レウニールの家族が襲われたのは、領地まであと半日馬車で走れば到着するという距離だった。


 家族と使用人、そして荷物を乗せた4台の馬車は無残に破壊され、道の端に寄せて置いてあり… どの馬車にも扉の外側に、鋭い爪で引っかいた生々しい痕跡こんせきが残っていた。


 黒騎士の弟と護衛の騎士たちの指示で、馬車の中に閉じこもり身を守ろうとしたのだろう。

 だが、最後には扉をこじ開けられ、中にいた全員が魔獣に食い殺された。



 レウニールの家族が乗っていた馬車の内部には、勢いよく天井まで血しぶきが飛んでいて、床には血を流す誰かを引きづった跡がある。







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