侯爵に買われた妻Ωの愛と葛藤

金剛@キット

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14話 縁結びの虫2

 オウロ公爵夫人は早速行動に移した。


 獰猛なデビュタントの群れに囲まれ、身動きが取れなくなった1番人気の花婿候補、オエスチ侯爵をオウロ公爵夫人は見事に救い出すとトーリアの前に"さぁどうぞ! 試しに味見してみなさい" とでもいうように差し出す。

<ううう… 何てコト!!>
 出来るコトならトーリアは、大奥様の椅子の陰にしゃがみ込んで顔を隠してしまいたかった。

 そうしないで何とか理性を保つコトが出来たのは、学園で躾けられた礼儀作法と、雇い主である大奥様に恥をかかせてはならないという、付き添い役の誇りだった。


「オエスチ侯爵、伯母様がちょうどアナタとお話をしたがっていたのですよ… それとこちらの美しい方は付き添い役のトーリアさんです、伯母様の遠縁に当たるフェリア―ド家のご子息です」

 公爵夫人に紹介されトーリアは軽くお辞儀をするが、なるべく目を合わせないようにする。

「お会いできて光栄です、オエスチ侯爵様」

「こちらこそ、フェリア―ド殿」

「ホホホホッ…! 人気者は大変だね、少し匿ってあげましょうか?」

「助かります!」
 コロコロと笑う大奥様に微笑み、本気でありがたがるオエスチ侯爵。

 ホッと胸を撫で下ろすトーリア。
<どうやら元婚約者殿は、私が誰か気付いていない… 助かった! 過去に2度しか会っていないのが幸いした>

「ホホホホッ! アナタが珍しくココに顔を出したのはそろそろ素敵な奥方が欲しくなったからかしらね?」
 
 再び大奥様はチラリとトーリアを見てから、オエスチ侯爵に視線を戻す。

 オエスチ侯爵も大奥様に導かれるようにチラリとトーリアを見た。


「ふふふふっ… 第二騎士団、団長のマール王子殿下に猛攻を受けているのですよ」
 公爵夫人がオエスチ侯爵を見ながら、含み笑いをする。

「奥様…」
 オエスチ侯爵が困った顔をする。


「マール王子殿下と言えば… 確か、鍵付きのネックガードを付けて好みのアルファと戯れの恋を楽しむという噂の"恋多きオメガの王子" のコトだね? 」
 
 大奥様は揶揄うようにチラリとトーリアを見る。

 公爵夫人とオエスチ侯爵も大奥様に釣られて一緒にトーリアを見る。


<ううう… ムキになってあんな冗談言うのでは無かった!!>

 大奥様と目が合い赤い顔で俯くトーリア。


「ですからね伯母様、奥方を持てばその手の面倒は無くなると、旦那様と2人でアーヴィを説得しているのです」
 パツンッと音を立てたたんだ扇子で小さな掌をトントンと叩き微笑む公爵夫人。

「オウロ公爵夫妻に揃って説得されているのなら、助言に従うしかありませんね… ねぇトーリア、アナタもそう思うでしょう?」
 大奥様がジッと見つめると、また公爵夫人とオエスチ侯爵もジッとトーリアを見つめる。

「はい、大奥様…」
 渋い顔のトーリアに思わず大奥様は吹き出す。

「本当にアナタは可愛いねぇトーリア! ホホホホッ!」
 暑いわけでもないのに大奥様は扇子でパタパタと扇ぐ。

 トーリアが赤い顔で視線を上げるとオエスチ侯爵とバチリと目が合い、"この2人には困ったものだ" と言いたげに苦笑と共に同情の意を伝えて来た。

 縁結びの虫を胸に飼う高貴なご夫人たちはトーリアと侯爵を結婚させたがっているコトは自分も気付いていると。


 コレには流石にトーリアも、苦笑を浮かべ軽く頷き"この2人には勝てない" と小さく両手を上げ降参の姿勢で首を横に振った。

 オエスチ侯爵の苦笑が、満面の笑みへと変わる。




  和やかな空気を乱すような、不躾にトーリアを呼ぶ甲高い声がして4人は一斉に声の主を見る。

「まぁトーリア兄さま! こんなトコロにいたの?! 探していたのですよ!!」

 一目でデビュタントと分かる、レースとフリルがたっぷり付いた純白の服でドレスアップしたフェリア―ド家、2番目の義弟が喜色満面で近づいてくる。

「トパーズィオ…」
 トーリアは緊張を隠せなかった、けして仲の良い兄弟ではないからだ。
 
 実際、トパーズィオの顔は笑っているように見せているダケで、目が嫉妬で燃えていた。

 トーリアは大きなため息をつく。

<私を利用して、オエスチ侯爵と親しくなりたいのだろう… 別にソレは構わないけど、余計なコトを言わないで欲しい>




 心でトーリアは、神に祈りを捧げた。












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