臆病オメガ、唇奪われ愛を知る

金剛@キット

文字の大きさ
4 / 44

3話 初めてのアルファ。

しおりを挟む


「なぁ頼むよ!! お願いマキ君、1回ヤラせてくれたら、3万ヤルから抱かせてよ!! オメガってすごくイイって先輩に聞いたんだ…!」

 チャラいベータ男子に土下座して頼まれた時は、マキはその頭を思いっきり蹴とばしたくなった。

 普段は温厚なマキだが、こういう図々しい奴は、ハッキリ拒絶しないと、後々、面倒なコトになるため、相手の存在自体まで拒絶する。



「一回、死んでみれば? ソレとアンタの見掛けも声も嫌い、その話し方はもっと嫌い!!」

 偶然を装い、マキは思いっきり勢いをつけて…
 土下座の為に地面についた、チャラいベータ男子の手の甲を、踵でグリグリと踏んでやった。


「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛い――っ!!!」
「ああ、見えなかった! そんなところに手があるなんて~!! スゴク邪魔、進路妨害しないでくれる?!」

 ソッポを向いてマキは適当にあしらう。

 もちろん、ワザと踏んだのだから、絶対に謝ったりしない。


「酷いよマキ君… ねぇ、ヤラせてよぉ!! 3万だよ? 3万!!」

 懲りずに言い続けるチャラいベータ男子。


「3万?! 僕の値段はたったの3万だって言うのか?! バカにするな!! お前なんか100万出しても嫌だね!! さっさと僕の前から消えてくれ!!」

 女子に守られていたおかげで、高校時代にはあまり感じなかった、性的欲望を含んだ視線を…
 大学に入ってからマキは、女子を遠ざけるコトで、ダイレクトに集めるようになったのだ。




 初めて同年代のアルファに出会った時など最悪だった。


<正直に言うとちょっとばかり、アルファには憧れの気持ちもあった、最初に出会ったアルファと運命的な恋に落ちて… とか夢を持ってたりもして>


「おい! お前オメガだろう? プンプンフェロモン匂わせて、エロい奴だな!!」

 ヨコにもタテにもデカい、見たことの無い男が、下品にニタニタと笑いながら、顔以上に下品な言葉をマキに投げかけた。

 マキは初めて会ったアルファに、心からガッカリして、眉尻が情けなく下がる。

 
「アンタ誰? アルファなのは分かるけど、初対面で失礼じゃないか!!」

 執拗な視線を避けたくて、マキは人目が無いキャンパスの端で、昼食を摂っていた事が…
 ゲス野郎アルファを増長させた。


「お前こそフェロモン垂れ流して、オレを誘いまくって! どっちが失礼だよ?」

 ニヤニヤと、ヤラシク笑うゲス野郎アルファ。


「そんなデタラメ誰も信じないさ! こっちは抑制剤を飲んでるから、アンタのフェロモンも感じないし! …て、いうかアンタ本当にアルファなの?!」

 本当にフェロモンを感じなかったから、ゲス野郎アルファが近づいても、マキは全く気付かなかったのだ。

 夢も希望も無いアルファとの初対面に、ため息が出る。


「生意気な奴だな!」

 顔からニヤニヤ笑いが消え、ムッ… として、自己紹介も無しに大柄なゲス野郎アルファは、体格差を利用し、いきなりマキの項をギュッ… と掴み…
 マキの小さな尻の割れ目に、既に硬く張り詰めた、生暖かい性器をグリグリと擦り付けて来た。


「止めろ!!」
<うわっ! うわっ! うわっ!! 気持ち悪――っ!!>

 嫌悪感で、ゾゾゾゾゾゾッゾッ… とマキの背中に鳥肌が立つ。


「気が強いオメガだな? オレは結構そういう奴を、無理やりねじ伏せるのが好きなんだぜ?」

 空いた方の手でゲス野郎アルファは、シャツの上からマキの胸を撫で乳首を摘まんで引っ張った。


「クソッ…! 止めろよ!!」

 嫌悪感と屈辱で顔を真っ赤にしたマキは、腕を振ってゲス野郎アルファを振り払おうとするが、項を掴む力を強くして、股間をグイグイ押しつけて来る。


「フフフッ… オレのフェロモンでその気になっただろう?」 

 顔が小さく見える、細長いマキの首筋に、ゲス野郎アルファがハアッ… ハアッ… と湿気った息を吹きかけた。


 カッ… と怒りに火が付き、マキは野蛮な感情に支配され、ギュッと拳を握り締め…

「だから、抑制剤でわかんねぇって! このゲス野郎!!」

 腰を少し引いて隙間を何とか作ると、容赦せずマキは、ゲス野郎アルファの張り詰めた性器に拳を入れる。


「うぐっ…!! うううう――――っ… クソッ! クソッ!」
  
 身体をくの字に曲げて、ゲス野郎アルファが股間を押さえてうずくまったのを、マキは冷ややかに見下ろすと…
 尻のポケットから、ゲス野郎アルファの学生証を奪い取り、ソレを持って大学の相談窓口に駆け込み訴えた。





「性的暴行を受けました!! 怖いから早く対処してください!!」

 ゲス野郎アルファには、毅然と対応出来たが… 本当はスゴク怖くて、マキの身体はずっと震えていた。


「まぁ!! 何があったか詳しく話してください…」

 相談窓口の女性職員は、マキを宥めながら人目が無い会議室へと行き、親身になって話を聞いてくれた。

 自分の味方になってくれた、女性職員の優しさに安心し、マキは号泣した。




 元々素行の悪いアルファだったらしく…
 それ以来ゲス野郎アルファに、大学で会わずに済んだのは、マキには幸運だった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

藤吉めぐみ
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...