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20話 夢から覚めて ※R18寄り
しおりを挟む薄暗闇の中で、ふと目覚めると…
カナルは頬に触れたなめらかで暖かなものに、フゥ―――ッ… とため息をつきながら、目を閉じて鼻をすりすりとすり寄せた。
<ああ… 何だろう…? すごく暖かくて… 心地良い匂いがする…>
今度は、スゥ――――ッ… と胸いっぱいに心地良い匂いを吸い込むとうっとりと微笑み、カナルは頬を寄せたなめらかなものを、指先で撫でまわし感触を堪能する。
陶酔するカナルの腰が、不意にグイッ… と引き寄せられ、身体全体がなめらかなものに包まれた。
「んんっ…ん~…」
カナルの唇から満足そうな、うめき声がもれる。
「お前… この私を誘惑しようとするとは、良い度胸だ…!」
耳元でおかしそうに笑いながら、低く甘い声で囁かれ、寝ぼけていたカナルの意識は、一気に覚醒へと向かうが…
「・・・んっ?!」
弾力のある暖かなもので唇を塞がれ、カナルは言葉を封じられてしまう。
<あれ…? キスしてる?! 僕が誰かとキスをしてる―――っ?! 結婚したフィエブレだって、僕にはキスしなかったのに?! ええええ?!>
抵抗しようと手で押し返そうとするが、ピタリとカナルの身体にくっ付いた誰かは…
カナルの抵抗にもビクとも動かなかった。
チュク…ッ… チュッ… チュッ… と唇を吸われたかと思えば…
カナルの口内に暖かな舌がするりと侵入し、小さなカナルの舌はゆるゆると撫でられ、カァッ… と身体が発情寸前まで熱くなる。
「んんっ…?!」
自分にキスをする相手から、ふわりと大量のフェロモンが立ち上るのに気づき…
カナルはようやく自分が寝ぼけて、相手にすりすりと頬ずりし、刺激するような失敗を犯してしまったことを知った。
<わわわっ、わぁ―――っ!! フェロモンが… この、うっとりするような匂いの正体は… アルファのフェロモンだ!! どんどん濃くなってゆくし… どうしよう、発情しちゃうよ!! 本当に誰?!>
相手のことを探るために… 夜の精霊の力を使い、カナルは触れた身体から記憶を盗み見た。
そこにはなぜか、ベッドに横たわるカナル自身の姿があり…
<あれえぇ―――っ?! 僕が何でぇ―――っ…?!>
『痛かった…でしょ…う…? 精霊の加護を得るために、自分の胸を刺すなんて… あんな、ムチャをして! あなたからたくさん血が流れて…』
『なぜ、それを知っているのだ?!』
『見た… から…』
カナルは瞳を閉じて、スヤスヤと眠ってしまう。
『おい、カナル?!』
<…あ! なんか少し覚えがある… すごく悲しくて辛い記憶を盗み見て、記憶の持ち主と少しだけ話して… 火の精霊の加護を… ええ~っと…>
ここまで来て、ようやくカナルは気付く。
チュクッ… と音を立てて、カナルの唇が解放され… 恐る恐るたずねた。
「…陛下?」
「ようやく目覚めたな、カナル!」
<うわっ!! 間違いない国王陛下だぁ―――っ!!!!>
側妃候補として王宮に入ったカナルを、抱こうする人間など…
国王以外には有り得ないと、寝起きでボケたカナルは気付かなかった。
※寝起きではない時でも、カナルはよくボケることがある。
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