側妃候補は精霊つきオメガ

金剛@キット

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28話 朝の光の中で2

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 ボルカンが原因とはいえ、自分が朝から発情してしまったことが、あまりにも気恥ずかし過ぎて、カナルは話題を変えようと…
 自分を目覚めさせた時にボルカンが言っていた、聞きたいことについてたずねてみる。


「陛… 陛下… あの、何か僕に聞きたいことがあると、先程おっしゃられていませんでしたか…?」

 目覚めたばかりで、髪に付いた寝グセをピョンッ… ピョンッ… と揺らしながら…
 これ以上発情しないようにと、カナルは顔を伏せてなるべく視線をボルカンから離した。


「昨夜、私が精霊の加護を得るために、自分の胸を刺したのを見たと言ったのを、覚えているか?」

「…ええ」
<覚えている… と言うか… 言ったその時のこと自体は覚えてはいないけれど、昨夜、僕が陛下にそう言ったのを、陛下自身の記憶を盗み見て知った… というのが真実だけど… ああ、複雑!!>


「カナル?」

「はい…」

 穏やかだが、ジッ… とカナルから目を離さず見つめ続けるボルカンの視線の中に、疑問の答えを聞き出すまでは、絶対に引く気は無いのだと、強い意志が込められていると分かり…
 カナルは言葉に詰まる。

 覚醒かくせい前に見た記憶とはいえ、ボルカンの生き死にを左右するような記憶だったのは間違いなく、その重大な内容を考えれば、ボルカンが引かないのは当然だった。


「どうやって見たのだ?」
 視線を外し下を向き続けるカナルのアゴを、ボルカンに指先で捕まえられ… 顔を上げさせられる。

「・・・・・・」 
<僕は陛下の心の中を、無断で盗み見ていたことを告白しなければいけない… きっと陛下は不快に思われるに違いない 僕は罰せられてしまう… どうしよう?! 僕自身は自業自得だけど、エンペサル侯爵家まで罰が飛び火したらどうしよう?!>


「カナル?」
 穏やかに名前を呼ばれ、カナルは言い逃れは出来ないと断念し、覚悟を決めた。

 深く一度、スゥ―――ッ… と深呼吸をしてから、カナルは口を開く。

「陛下、僕は精霊の加護を受けたその時から、誰かに触れるとその人の記憶を見ることが出来るようになりました」
<昨夜、僕は陛下に身も心も捧げると誓ったのだから… これで罰せられたとしても、やっぱり、嘘や隠し事をするのはいけないよね?>


「何らかの力をお前も精霊から受け取っているとは予想していたが… まさか、触れて他人の記憶を見るだと?!」
 まじまじとカナルの小さな顔を、ガーネットの瞳を見開いて見つめた。

「はい… ですが記憶の全てが見えるわけではありません、とても断片的なものばかりが見えるのです」

「断片的なもの?」

「はい、今の陛下からは、何も見えませんが… 恐らく陛下は普段から人に心を見せないように、心掛けておられるのではありませんか? 僕の兄エレヒルからも、あまり見ることが出来ませんでしたから…」

 たくさんの人々を束ねる立場にある者の、宿命と言うべき共通点が、ボルカンとエレヒルにはあるのだ。


「なるほど… 確かにお前の言う通り、日常的に私の考えを臣下たちに悟られないよう、気持ちを隠すのは得意だが…」
 カナルの細い顎を放し、ボルカンは自分の顎をつかんで考え込む。


「陛下が王家の霊廟れいびょうで精霊の加護を受けた記憶を、僕が見ることが出来たのは… 僕自身に意識が無かったので、陛下は僕が眠っていたから、気を許していたのではありませんか?」

「あの時は、お前から精霊の加護の気配を感じ… お前の綺麗な寝顔を見るうちに、私自身が加護を受けた時の記憶をぼんやりと思い返していた覚えがある… なるほど、そういうことか!」

 カナルに言われた通り…
 前夜はぼんやりと考え込みながらボルカンは、目を覚まさないカナルを観察するついでに、額や頬、細い手に、触れていたことまで思い出した。


 ボルカンが考え事をしている間に… ベッドから下りてカナルは平伏し、床に額を付けた。

「陛下の記憶を盗み見てしまったこと… 申し訳ありませんでした!  この精霊の力を、僕が与えられたと知るのは、陛下お1人です! エンペサル侯爵家の者たちには、一切話しておりません!」

 何も知らずカナルを送り出したエンペサル侯爵家は、何の罪も犯してはいないのだと、ボルカンに懇願こんがんした。

<僕自身が罪悪感を感じるほどの力だし… 漆黒の髪と濃紺の瞳に容姿が変貌しただけでも、僕は悪魔きだと陰口を叩かれていたのに… あれでは誰かに言えるはずがないよ!>


「どうか陛下! この罰は、僕だけにお与え下さい…!」




 カナルは裸のまま、冷たい床に頭をこすりつけ、ボルカンにひれ伏した。





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