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32話 大臣たちの談話
しおりを挟む王宮で国王ボルカンと謁見したその日のうちに、カナルは国王の手が付き…
正式に後宮入りをする前に側妃となった。
そんなカナルは、重臣たちの期待の星となっていた。
重臣たちがカナルを側妃にするとボルカンに言い渡された日のことである。
謁見の間を出た重臣たちは、王宮内の談話室で軽い食事をとりながら、今後の予定を簡単に話し合うことにした。
「カナル殿には、何としてもお世継ぎとなられる、アルファのお子様を産んでもらわなければ!」
ティーカップ片手に、お茶の香りを楽しみながら重臣の1人が、口を開いた。
「いやいや! その前に陛下の"なだめ役"となってもらわなければ、困る!」
「うう~む… "なだめ役"ですか… 確かに一理ありますな! ボルカン陛下は先王に比べて、とても勤勉で公務も3人分はこなされる良き国王であらせられるが… その一方で突然火が付いたように、荒々しく野蛮な怒りを誰彼かまわずぶつけて、我々を脅されるからなぁ…」
「それも飛び切り辛辣な、恐ろしい方法で…」
重臣たちは、数日前の出来事を思い出し、ぶるりっ… と震えた。
―――数日前…
隣国ニエブラの商人から賄賂を受け取り、生ぬるい対応をした高官の1人とその部下たち2人が、国王ボルカンの命令で王宮に呼ばれ公開処刑された。
それも、ただ処刑されたのではなく…
賄賂を渡したニエブラの奴隷商人たちと共に、尊厳を奪い取るために、処刑を言い渡されたその場で身に付けていた物を全部はぎ取り、全裸で刑場まで引きずって行き、首を刎ねて公開処刑をしたのだ。
3人を処刑したのは処刑人ではなく、処刑された高官を長年護衛をしていた騎士たちだった。
その騎士たちは自分たちの主が、汚職に手を染めている事実を知っていながら、見て見ぬふりをしていたからだ。
騎士たちへの罰として、ボルカンが指示したのは…
自分たちが護って来た主の首を、自分たち自身で刎ねさせ、転がった主の首の前で、剣を一生持てないように腕の腱を切断し、騎士の身分を剥奪した。
「建国の父、グアルダル王の伝説のように、ボルカン陛下が激怒されると炎でこの身を焼かれるような圧迫感で押しつぶされそうになりますからなぁ」
「さすが、残虐王といいますか…」
「あの容姿を初めてこの目で見た時は、腰を抜かしそうになりましたわい! 謀反人インセンディオ(ボルカンの叔父)に異国の毒薬を盛られたせいで、あの様に瞳や髪の色が変色してしまったとは、前ルイナス公爵のレクエルド殿の説明を聞かなければ、ボルカン王子だと気づきもしなかったでしょう… いまだに自分の目が信じられませんよ」
最近就任したばかりの一番若手の重臣は、首からぶら下げた、国教の神が彫られたメダルに触れた。
「あれには私も、肝が冷えて寿命が縮みましたぞ! 何より毒の影響なのか… ボルカン陛下は王子時代は思慮深く穏やかな性格の持ち主だったのに、あのように荒々しい姿と同様に苛烈になられて、私は悪魔が憑いたのかと思ったほどです…」
「即位されるまでに経験された、過酷な状況を考えれば、陛下が誰に対しても疑い深い質になっても仕方の無いことではありますが… それにしても、あの激しさは… うう~む…」
先王に比べて現王ボルカンは、気難しくて扱いずらい王であり、そのことが重臣たちの悩みの種となっている。
「前ルイナス公爵のレクエルド殿が健在ならば、その様な悩みも無かったであろうに… 私よりも7つも若いのに病死されてしまうとは誠に残念なことだ…」
次々と兄王子たちが亡くなり、自分も暗殺の危機にさらされたボルカンは、子供の頃から父王の親友として顔見知りだった、前ルイナス公爵レクエルドに助けを求めたことは、周知の事実だった。
ボルカンが全幅の信頼を置いていた、前ルイナス公爵レクエルドの娘である正妃が、"なだめ役"に適任のはずだったが、残念ながら国王夫妻は深刻なほど不仲なため、重臣たちは頭を抱えていた。
そこで重臣たちは、叔父たちを虐殺したボルカンの、残虐性や荒々しさを押さえる"なだめ役"になれるような側妃を求めていたのだ。
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