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40話 蜜月の後は濃密に7

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「もう泣くなカナル、これ以上悲しむな… お前の子は、私の子となって今度こそ生まれるのだから!」

 泣くなと言われて、あふれ出した涙をカナルが止められずにいると…
 見兼ねたボルカンが、自分の膝にカナルを乗せて、ギュッ… と抱きしめた。


「カナル… 何故、そんなに泣くのだ? もうお前が悲しむ理由は無いだろう?」
 大きな身体で包み込み、ボルカンは気遣いながら、静かにカナルの耳元で囁く。

「そんなに悲しそうな顔をして… 私の子を身籠るのは、嬉しく無いのか?」
 どことなくボルカンは、不安そうな声でカナルにたずねる。

「いいえ、ボルカン様… 悲しいのではなくて… 僕は… 僕は、不安なのです!」

「不安…? 何が不安なのだ?!」

「それは…」
<最悪の未来で僕は… 僕の身体は… 突然、前触れも無く流産してしまったから… それがすごく怖くて… 怖くて…>

 自分のお腹に触れて… カナルは自分の暗い表情が、ボルカンに見えないよう、顔を伏せた。


「カナル?」
 暖かな声でボルカンは、カナルに答えを促す。

「また… 失ったら、僕はまた死ぬでしょう… あんな苦痛… とても耐えられないから!」

「ん… そうか、なるほど…!」
 カナルを抱き締めるボルカンの手に、ぐっ… と力が入る。


「一度目だって耐えられなかったのに… 二度目だって僕は、とても耐えられません!」

「それでもカナル、腹の子のために、今は耐えなければ… な?」

「はい… それは分かっているのですが…」

「カナル、私が付いている! お前には私がいるのだ!」

「・・・・っ!」
 顔を上げてカナルはジッ… とボルカンを見つめた。

<そうだよ… 今はボルカン様がいる! ボルカン様が!!>

 一度目… 身籠った時、兄のエレヒルは喜んでくれたが、フィエブレはずっと不快そうだった。

<フィエブレの… あの顔を見る度に、僕は胸を切り刻まれるような苦痛を、ずっと感じ続けていた>
 だが今は、カナルの胸に重く沈んでいた、暗い澱みが綺麗に浄化されたような気分だ。

「頼りにしています、ボルカン様! とても心強いです!」
<ボルカン様がいる! 僕には頼りになるボルカン様が!!>

 チュッ… チュッ… チュッ… とボルカンの頬に、顎、額に、首筋にと… 目に付く場所全部にカナルは夢中でキスをした。


「そうだカナル! 私をいくらでも頼れば良い! 私は誰よりも頼りになる国王だぞ? 遠慮はいらないからな!」

「はい、ボルカン様!」

「…それでカナル、私の子を… 身籠る気分はどうだ? 嫌か?」

「嫌ではありません! 嬉しいです! 優しいボルカン様の子を身籠れて僕は幸せです!! きっと優しい子が生まれるでしょう、本当に嬉しい!!」

 またカナルの瞳から、涙があふれた。

 ボルカンは硬い指先で、カナルの頬を濡らす涙を拭うが、後から後からあふれ出してしまい…



「ああ… 申し訳ありません、今日はもう… 泣いてばかりで… でも本当に嬉しくて、涙が出るのです!」 





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