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55話 懐妊報告4
しおりを挟む後宮は基本的に、国王以外のアルファが入ることを禁じられている。
王族の護衛騎士たちは、全員アルファで構成されているため…
そこで護衛対象の王族が後宮外へ外出する時などに備え、後宮に付属する待機所にて、護衛騎士たちは常に待機する決まりとなっていた。
厳格に出入りを制限されている以上、後宮の住人である正妃ディアレア、側妃のカナルが、国王ボルカン以外のアルファと面会しようとするならば、後宮外へ出る必要があった。
王宮内にある、宰相パラグアスが与えられた執務室の前に護衛騎士を立たせて… 旧知の2人は顔を合わせていた。
「ディアレア様、お身体のお加減はいかがですか? 晩餐会の後で熱を出されたと伺いましたが… 無理は禁物ですよ?」
応接用のソファに座り… パラグアスはティーカップからお茶を2口ほど飲んで唇を濡らし、カチャリッ… と皿の上に置く。
「うふふふっ… もう、すっかり回復しましたわ… パラグアス殿こそ、私に付き合ってお茶を飲む時間など無いほど、本当はお忙しいのではありませんか?」
ニコリ… と微笑み、ディアレアはティーカップを口に運ぶ。
「先日… 裏庭の奥の小さな池でオシドリの番を見まして… 亡くなった王太子殿下と仲睦まじく寄り添うあなたの姿を思い出してしまいました」
ディアレアを見つめながら、パラグアスは穏やかに微笑んだ。
「まぁ…! 確かに王太子殿下と、よくあの池にオシドリを見に行きましたわ… 懐かしいことを、よく覚えていらしたわね?」
少女のようにキラキラと瞳を輝かせて、ディアレアはパラグアスを見つめた。
「仕方ありませんよ… あの頃から私は、王太子殿下に嫉妬していたのですから!」
素早くパラグアスは腰を上げ、ディアレアの隣りへと移動した。
「そんな素振り… あなたは少しも見せなかったわね?」
隣りに座ったパラグアスの顔を熱っぽく見つめ、ディアレアは柔らかな白い手で、男の頬にそっと触れた。
「当然です! 未来の国王夫妻に反逆の意志を示すような危険なまねは、簡単には出来ませんよ! それにあなたは殿下に夢中で、私のことなど眼中に無かった! そうでしょう? …ディアレア様?」
自分の頬に触れていた白い手をつかみ、パラグアスは掌にチュッ… とキスを落とすと… ディアレアの唇にも軽いキスをする。
「いけない人! 今のも反逆行為ではなくて?」
キスを誘うように唇を尖らせて、ディアレアは細い指でパラグアスの唇を撫でた。
「ボルカン陛下に感謝しなくては… あなたが彼の番にされていたら、誰よりも魅力的なこの唇に、私はキスさえ出来なかったでしょうから…」
パラグアスはぽってりとした赤い唇にキスを落とし、キュッ… と甘噛みをした。
チュクッ… と音を立てて唇を放すと、ディアレアはパラグアスを睨んだ。
「もう… ダメよ! いくら強い抑制剤を2人とも飲んでいても、こんなに素敵なキスを何度もされたら、フェロモンを押さえられなくなってしまうわ!」
「ふふふふっ… ボルカン陛下には反応しないあなたが私には反応するなんて! なんて嬉しい驚きだろうね」
「だって残虐王の前に出ると… ずっと威嚇されているような気がして、身体が震えてしまうのよ? あなたは彼の前でよく平気で働けるわね?! あんな野蛮人と番になんてゾッ… とするわ!」
ぶるっ… と身体を震わせ、ディアレアは心底嫌そうな顔をする。
「ああ、そう言えば… カナル様がご懐妊されたそうですよ?」
「そんなっ…?! こんなに早く? あんな辺境の田舎者が妊娠するなんて! …でも、人殺しの野蛮人とはお似合いかもしれないわ!」
「おお、なんて手厳しいご意見だ!」
「うふふっ… 意地悪ね! あなたもそう思っているクセに!」
「ふふふふっ…」
ディアレアが腕をつねるふりをすると パラグアスはニヤリと笑った。
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