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58話 相思相愛2 ボルカンside
しおりを挟む<私はずっと… 誰かに愛されることを諦めていた>
優秀な兄が2人いて、側妃の子として生まれたボルカンは第三王子という立場上、いずれはエステパイス王国の王家を出る運命だった。
幼い頃に婚約者を選定されなかったのも、王族から親籍に下りエステパイス王国内の有力貴族に婿入りするか…
あるいは近隣国の王族の元へ婿入りするか… そのどちらかで、ボルカンは子供の頃からそう言い含められて成長した。
16歳の誕生日を迎えた頃、オメガの王女しかいない隣国ニエブラへボルカンが婿入りする話が持ち上がった。
両国の大臣たちの話し合いでほぼ決まり…
成人してからボルカン自身がニエブラへ出向いて王女と対面し、そこで正式に婚約する流れで両国は動き出した。
『王配として婿入りするとしても、私はニエブラ人になるのだから、ニエブラの国益になるような価値ある仕事が出来る人間にならなければ!!』
ニエブラの情勢、歴史、荒れた土地の改良、開発など…
ボルカンは専門家の指導を受け、婿入り先のニエブラについて徹底的に学び努力を重ねた。
社交も学ばなければならない必須科目で、それだけは実戦あるのみだとダンスの教師に助言され、ボルカンは王宮で行われた舞踏会に初めて出席することにした。
強い抑制剤を多めに飲んで出席したのにも関わらず…
最初にダンスを申し込んで踊った、その年デビューしたばかりの伯爵令嬢(ボルカンの同年代)が、ワルツを踊り始めたらオメガの誘惑フェロモンを大量に放ち始め、発情の兆候を見せたのだ。
『大… 大丈夫か?』
『申し訳あ… ありません…! はああっ… やだっ… ううんんっ…!』
年頃のオメガと初めて関わったボルカンは焦り、不作法ではあったがダンスを中断し、壁際で娘を見守っていた母親の元へと令嬢を送り届けた。
ボルカンは令嬢の誘惑フェロモンで、熱を持った身体をテラスに出て夜風で冷ますと、再び舞踏会に戻ったが…
その後、ボルカンと踊った未婚のオメガたちが、全員続けて発情しかけてしまった。
未熟で経験不足のボルカンは、そうなってみて自分が発情させているのだと初めて気づき、慌てて舞踏会の広間から退出した。
アルファとは違い、学園などには通わず家庭内学習だけで大切に育てられた箱入りのオメガたちは、王族に対して…
"あなたが私を発情させた" とは、礼儀と恥じらいから、ボルカンに伝えられなかったのだ。
『ボルカン、お前… 今年のデビュタントたちを全員発情させたんだって?!』
ニヤニヤと笑いながら、次兄がボルカンを揶揄った。
社交レッスンの延長でボルカンは王家主催の鹿狩りに参加すると、狩猟が得意な王太子と第二王子と一緒になったのだ。
(事前に未婚のオメガを、ボルカンから離れた場所へと誘導してもらっている)
『レホス兄上! その話はもう止めてください!』
次兄レホスの揶揄いを上手く聞き流せず、耳まで真っ赤になった若いボルカンは怒って抗議した。
『そうだぞレホス、ボルカンからすれば笑い事ではないさ!』
生真面目な長兄(王太子)テルミナルは、ボルカンに同情し肩をぽんぽんと叩いた。
『テルミナル兄上、私はボルカンの生殖能力を褒めているのですよ! だって私や兄上もかなり強い方ですが、ボルカンほどではないでしょう? すごく羨ましくないですか?』
『まったくお前は…!!』
チャラい弟の大真面目らしい意見に、王太子テルミナルは呆れた顔で、顔を横に振ると…
次兄レホスは、ここぞとばかりに語り始めた。
『ボルカン、そんなに気にすることでは無いさ! いいか… 我々の曾祖父、先々代の国王もやはり絶倫王だったと言うじゃないか! それにお前はニエブラに行くわけだし… お前のその生殖能力なら、ニエブラの王女も会ったその場で発情させられるだろう? その時、王女を上手く惚れさせられれば、ニエブラでお前の立場も安泰ではないか?!』
『レホス兄上…』
『レホス…』
王太子テルミナルとボルカンは、同時に渋い顔をした。
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