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番外編 ~悪夢の世界で…

105話 調査 エレヒルside

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 翌朝、フィエブレが騎士団の資金を何処で何に使っているかを調査するために、エレヒルはジュピアの記憶をたどり…
 フィエブレがジュピアを使いに出した先が何処かを確認しようと、2人は揃って騎士団本部に訪れた。


 厩舎にエレヒルの愛馬を預け、騎士団本部の敷地内にある騎士たちの詰所に向かう途中で…
 ジュピアは耐えきれずに、不安を口にした。

「フィエブレ様に見つからなければ、良いけれど…?」
 不安そうな顔で、ジュピアはエレヒルの騎士服のそでを指で引っ張った。
 ジュピアはフィエブレが苦手なのだ。
 エレヒルのように口には出さないが、本心ではカナルへの冷たい態度を、何度も見ていたせいで大嫌いだった。


「ジュピアは忘れたのか? お前はもう、昨日から正式に私の妻でエンペサル侯爵夫人なのだから、フィエブレに頭を下げられ、礼儀を尽くされる側の人間なのだぞ?」

「そ… それは分かっていますが」
 他のベータの使用人たちに比べても…
 "男爵に売られたオメガの子供" とフィエブレに蔑まれる存在として、今まで扱われ冷酷な待遇を受けていたから、どうしても怯えてしまうのだ。

 フィエブレ以外の騎士たちの方は、貴族の子息でオメガなのにと同情し、何かと優しくしてくれたのにだ。

「大丈夫だ! 私が隣りにいる、大丈夫だジュピア! それにフィエブレは今、鍛錬の最中だ」

 何も問題が無ければ、フィエブレの毎日行う日課で、ちょうど新人騎士たちの訓練をしている時間だと知っていたエレヒルは…
 自分たちの目的をフィエブレに邪魔されないよう、この時間を選んで来ていた。

 不安を口にするジュピアの細い腰を、グイッ… と引き寄せ、エレヒルは唇を奪った。

「ふぅむぅぅぅ~っ…?! んんん~…っ!!」

 腰だけでなく、項までキュッ… と掴まれ、ジュピアは抵抗出来ず、エレヒルにされるがまま、唇を奪われ続けてしまう。



「おおっと… これはこれは! 侯爵閣下が可愛い花嫁を娶られたという噂は、どうやら本当だったのですね?」

 詰所から出て来た2人の騎士のうち…
 40代初めのベテラン騎士が、笑いながらエレヒルを冷やかした。

 チラリと自分を冷やかすベテラン騎士に視線を送り、チュパッ… と音を立てて、ジュピアの唇を貪るのを止めると、エレヒルはニヤリと笑った。


「アリバ、ちょうどお前に会いに来たのだ」

「おや? 何の御用ですかな、侯爵閣下?」

 先代エンペサル侯爵、エレヒルの父親がまだ健在だった頃、アリバは父の護衛騎士をしていた。
 その頃からの付き合いがあり、騎士団内で一番エレヒルが信頼できる相手でもあった。








 広大なエンペサル侯爵領の、南東部に位置する町の治安を維持するために、巡回を務めている騎士から、ベテラン騎士のアリバは上手く情報を得ることが出来た。
(フィエブレへの疑惑に関しては、罪が確定するまでエレヒルは騎士たちに、目的を伏せることにした)

「ああ、そこには確か娼館が有ったはずです」

「何だって?! 個人の邸宅ではないのか?」
<てっきり、フィエブレが愛人を囲って住まわせている邸だと思ったのだが?!>



  思わず隣りに立つジュピアに視線を送ると…
 ジュピアも困惑気味にエレヒルを見上げて来た。







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