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番外編 ~悪夢の世界で…
107話 調査3
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エレヒルはベテラン騎士アリバを信じ、カナルが疑いを持っていた、帳簿の件を全て話すことにした。
「なるほど… それでは侯爵閣下が慎重になられても仕方の無いことですね… ふむ… ふむ…」
思案顔でアリバはエレヒルにうなずいた。
「どちらにしても、その娼館にニエブラ人が出入りしているという、噂の真偽は確かめなければならない… ここにいる我々だけで乗り込んでみるか…」
「侯爵閣下がご一緒していただけるのなら、我々もやっと娼館の内部を調べることが出来ますね」
巡回役の騎士たちは、ずっと噂の真偽が気になっていたらしく、ようやく娼館の調査が始められることになり、ホッ… と微笑んだ。
「いや、ですが閣下! 本当にニエブラ人が娼館に隠れ潜んでいて、先手を打たれることにでもなれば… 逃走の時間稼ぎで、街中で放火をするかも知れませんよ?」
ベテラン騎士らしく、アリバは不安要素をエレヒルに思い出させ…
エレヒルもその要素を考え、厳しい顔でうなずく。
エストレジャの原液を貯蔵庫から強奪する際…
ニエブラ人はいつもニエブラ灯油を使用し、人家を狙って放火を繰り返すのだ。
その話が町の住民の耳まで届いているからこそ、ニエブラ人が自分たちの家に火を放つのではないかと恐れ…
町の住人たちは、ニエブラ人に対して過敏な反応を示すようになっていた。
今回もそんな、過敏に反応していた住民からの依頼である。
「やはり何人か騎士が必要か?」
自分のアゴを撫でながら、エレヒルが考え込んでいると…
巡回役の騎士たちが、提案した。
「でしたら、あの娼館を調べたがっている騎士が、巡回役の中にあと2人ほどいますから… そいつらに声をかければ、喜んで来ると思いますよ? 騎士団長の件は伏せたままにしても、よろしいのではないですか?」
「なるほど、それは良い! お前たちが娼館を調査できないと、愚痴をこぼしていたのを、アリバが私にポロリと言ったとでも言い訳をしておけば、納得するだろう!」
「よし、侯爵閣下それで行きましょう!」
エレヒルが良い言い訳を考え付くと、アリバが相槌を打つ。
「ジュピア、すまない! お前は厩舎係に送らせるから、1人で侯爵邸に帰ってくれるか?」
エレヒルはことの成り行きを黙って見ていた、ジュピアを見下ろしてたずねた。
「いいえ、旦那様! 僕も行きます! 騎士様方のように働くことは出来ませんが、お使いぐらいは出来ますから!」
「だが、ジュピア… 何が起こるか分らないのだ、危険な状況になるかもしれない」
瞳をキラキラと輝かせて、やる気満々の新妻を前に、エレヒルが渋い顔をする。
「急いで騎士団から、増援を呼ぶということもあるかも知れませんし… 良いではないですか侯爵閣下! 奥方にも手を貸して頂けるのなら、貸して頂きましょう! ここは一人でも多い方が良いでしょうし」
数日前まで下働きをしていたジュピアは、騎士たちの使いで町と騎士団本部を、行ったり来たりすることが多かった。
その経験から一般的な貴族の令息などとは違い、ジュピアは町に詳しく、そういう面では頼りになるのだ。
「僕は娼館の入口で待機します! 危険だと分かれば、すぐに騎士団に誰かを呼びに行けば良いのですよね?」
小さな拳を握り、ジュピアは自分の意気込みをエレヒルに伝えた。
「…仕方ないなぁ! ジュピアがそう言うのなら、だが本当に危ないと思ったら、何も考えずに真っ直ぐ逃げ出すのだぞ?」
「はい、旦那様… あっ!! 古い服に着替えないと! エレヒル様に頂いた服は綺麗過ぎて、街中では目立ってしまうから… 確か僕が暮らしていた部屋にまだ置いてあるはずですし」
父が亡くなって以来、初めてジュピアを大切にしてくれる人、夫のエレヒルのために…
ジュピアは少しでも役に立ちたいのだ。
「そうだな、ジュピアは可愛いから目立ってしまうし、その方が良い! お前は本当に賢くて気が利くなぁ!」
エレヒルはここぞとばかり、髪を撫でながらジュピアを褒めて可愛がる。
こんな場所でイチャイチャしている場合ではないと思いつつ…
目の前に可愛い新妻が立っていれば、エレヒルは新婚の夫として、可愛がるのは常識である。
「なるほど… それでは侯爵閣下が慎重になられても仕方の無いことですね… ふむ… ふむ…」
思案顔でアリバはエレヒルにうなずいた。
「どちらにしても、その娼館にニエブラ人が出入りしているという、噂の真偽は確かめなければならない… ここにいる我々だけで乗り込んでみるか…」
「侯爵閣下がご一緒していただけるのなら、我々もやっと娼館の内部を調べることが出来ますね」
巡回役の騎士たちは、ずっと噂の真偽が気になっていたらしく、ようやく娼館の調査が始められることになり、ホッ… と微笑んだ。
「いや、ですが閣下! 本当にニエブラ人が娼館に隠れ潜んでいて、先手を打たれることにでもなれば… 逃走の時間稼ぎで、街中で放火をするかも知れませんよ?」
ベテラン騎士らしく、アリバは不安要素をエレヒルに思い出させ…
エレヒルもその要素を考え、厳しい顔でうなずく。
エストレジャの原液を貯蔵庫から強奪する際…
ニエブラ人はいつもニエブラ灯油を使用し、人家を狙って放火を繰り返すのだ。
その話が町の住民の耳まで届いているからこそ、ニエブラ人が自分たちの家に火を放つのではないかと恐れ…
町の住人たちは、ニエブラ人に対して過敏な反応を示すようになっていた。
今回もそんな、過敏に反応していた住民からの依頼である。
「やはり何人か騎士が必要か?」
自分のアゴを撫でながら、エレヒルが考え込んでいると…
巡回役の騎士たちが、提案した。
「でしたら、あの娼館を調べたがっている騎士が、巡回役の中にあと2人ほどいますから… そいつらに声をかければ、喜んで来ると思いますよ? 騎士団長の件は伏せたままにしても、よろしいのではないですか?」
「なるほど、それは良い! お前たちが娼館を調査できないと、愚痴をこぼしていたのを、アリバが私にポロリと言ったとでも言い訳をしておけば、納得するだろう!」
「よし、侯爵閣下それで行きましょう!」
エレヒルが良い言い訳を考え付くと、アリバが相槌を打つ。
「ジュピア、すまない! お前は厩舎係に送らせるから、1人で侯爵邸に帰ってくれるか?」
エレヒルはことの成り行きを黙って見ていた、ジュピアを見下ろしてたずねた。
「いいえ、旦那様! 僕も行きます! 騎士様方のように働くことは出来ませんが、お使いぐらいは出来ますから!」
「だが、ジュピア… 何が起こるか分らないのだ、危険な状況になるかもしれない」
瞳をキラキラと輝かせて、やる気満々の新妻を前に、エレヒルが渋い顔をする。
「急いで騎士団から、増援を呼ぶということもあるかも知れませんし… 良いではないですか侯爵閣下! 奥方にも手を貸して頂けるのなら、貸して頂きましょう! ここは一人でも多い方が良いでしょうし」
数日前まで下働きをしていたジュピアは、騎士たちの使いで町と騎士団本部を、行ったり来たりすることが多かった。
その経験から一般的な貴族の令息などとは違い、ジュピアは町に詳しく、そういう面では頼りになるのだ。
「僕は娼館の入口で待機します! 危険だと分かれば、すぐに騎士団に誰かを呼びに行けば良いのですよね?」
小さな拳を握り、ジュピアは自分の意気込みをエレヒルに伝えた。
「…仕方ないなぁ! ジュピアがそう言うのなら、だが本当に危ないと思ったら、何も考えずに真っ直ぐ逃げ出すのだぞ?」
「はい、旦那様… あっ!! 古い服に着替えないと! エレヒル様に頂いた服は綺麗過ぎて、街中では目立ってしまうから… 確か僕が暮らしていた部屋にまだ置いてあるはずですし」
父が亡くなって以来、初めてジュピアを大切にしてくれる人、夫のエレヒルのために…
ジュピアは少しでも役に立ちたいのだ。
「そうだな、ジュピアは可愛いから目立ってしまうし、その方が良い! お前は本当に賢くて気が利くなぁ!」
エレヒルはここぞとばかり、髪を撫でながらジュピアを褒めて可愛がる。
こんな場所でイチャイチャしている場合ではないと思いつつ…
目の前に可愛い新妻が立っていれば、エレヒルは新婚の夫として、可愛がるのは常識である。
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