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番外編 ~悪夢の世界で…
119話 馬の背の上で ジュピアside
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ゴツゴツと肋骨に硬いものがぶつかり、ジュピアの細い身体が跳ねる。
「うぐっ… んんっ…?!」
痛みと息苦しさで目覚めると…
ジュピアは馬の背に、手首を背中に回して縛られ、腹ばいで乗せられていた。
<馬? 馬に乗っているの?! 何で?!!>
見えるのは馬が走る地面だけで、ジュピアは頭を上げて自分がどこにいるのか確かめようとするが…
「ぐうっ…?!!」
重い拳で背中をドカッ…! と殴りつけられ、ジュピアは痛みで呼吸が止まる。
「死にたくなければ、大人しくしていろ!!」
もう一度フィエブレは、華奢なジュピアの背中を容赦なく、大きな拳で殴る。
「んぐっ… ぐっ…!」
<フィエブレ様?! ええ…?! …あ、厩舎の前で僕は殴られて…! でも、この人は何故、僕にこんなことをするの?!>
殴られたアゴも酷く痛むが…
激しく揺れる馬の背に胸とお腹がぶつかり、ジュピアは苦しくて… 苦しくて… 胃の中に何か入っていたなら、きっと嘔吐していただろう。
だが、血生臭い娼館で無残に殺された人たちの遺体を見た時、ジュピアはその衝撃に耐えられず、建物の外へ慌てて飛び出し、昼食を全て吐いてしまっていた。
<どこに向かっているのだろう?! 僕はどこに連れて行かれるの?!>
再びフィエブレに殴られたくなくて、ジュピアは首を上げずに少しづつ回し、左右を見る。
馬が走る進行方向が少しだけ見えたが…
夕暮れ時の薄暗い森の中を走っているということ以外は、何も分からなかった。
反対側に首を回すと、馬の背に小旅行用の荷物が積まれていると気づく。
<この人は… そうか! どこかに逃げるつもりなんだ?! でも、どこへ逃げるつもりなの?! どうしよう、エレヒル様!! 僕はどうしたらいいのですか?! エレヒル様!!>
エレヒルのことを思うと、金色の瞳から涙がこぼれた。
<もう二度と、エレヒル様に会えないかもしれない!! そんなの嫌だ!! 嫌だよ―――っ!!>
不意にジュピアは、結婚を申し込まれた朝のことを思い出した。
『私の妻になって欲しい、愛しているよジュピア! 番になってほんの数日なのに、お前が私の視界にいないと、寂しくてたまらないんだ! だから発情期が明けたらすぐに婚姻の儀式をしよう?』
『エレヒル様、僕で良いのですか?! だって僕は男爵の息子だし… 少しも身分が釣り合わないから…』
『ジュピア、これほど愛しいと思う相手にめぐり会えたことを、私は神に… いや、カナルに感謝しているんだ! あの夜湖でお前に会ったのは、きっとカナルの導きなんだよ』
『カナル様の?』
『私たちはカナルが導いた、運命の番なのさ、だからジュピアと結婚できないのなら私は生涯独身を貫いて、爵位は従妹の子に渡す!』
背中で手首を縛られているため、涙で濡れた頬を拭うことも出来ず、ジュピアの眉間に苦し気なシワが寄る。
<逃げなければ!! 何とかして逃げないと! 大人しくしていても、僕は娼館で無残に放置されていた娼婦たちのように殺される!! このまま子ウサギのように、怖がってばかりはいられないよ!! 逃げなけば!! エレヒル様にもう一度会って、抱き締めてもらうために!!>
「うぐっ… んんっ…?!」
痛みと息苦しさで目覚めると…
ジュピアは馬の背に、手首を背中に回して縛られ、腹ばいで乗せられていた。
<馬? 馬に乗っているの?! 何で?!!>
見えるのは馬が走る地面だけで、ジュピアは頭を上げて自分がどこにいるのか確かめようとするが…
「ぐうっ…?!!」
重い拳で背中をドカッ…! と殴りつけられ、ジュピアは痛みで呼吸が止まる。
「死にたくなければ、大人しくしていろ!!」
もう一度フィエブレは、華奢なジュピアの背中を容赦なく、大きな拳で殴る。
「んぐっ… ぐっ…!」
<フィエブレ様?! ええ…?! …あ、厩舎の前で僕は殴られて…! でも、この人は何故、僕にこんなことをするの?!>
殴られたアゴも酷く痛むが…
激しく揺れる馬の背に胸とお腹がぶつかり、ジュピアは苦しくて… 苦しくて… 胃の中に何か入っていたなら、きっと嘔吐していただろう。
だが、血生臭い娼館で無残に殺された人たちの遺体を見た時、ジュピアはその衝撃に耐えられず、建物の外へ慌てて飛び出し、昼食を全て吐いてしまっていた。
<どこに向かっているのだろう?! 僕はどこに連れて行かれるの?!>
再びフィエブレに殴られたくなくて、ジュピアは首を上げずに少しづつ回し、左右を見る。
馬が走る進行方向が少しだけ見えたが…
夕暮れ時の薄暗い森の中を走っているということ以外は、何も分からなかった。
反対側に首を回すと、馬の背に小旅行用の荷物が積まれていると気づく。
<この人は… そうか! どこかに逃げるつもりなんだ?! でも、どこへ逃げるつもりなの?! どうしよう、エレヒル様!! 僕はどうしたらいいのですか?! エレヒル様!!>
エレヒルのことを思うと、金色の瞳から涙がこぼれた。
<もう二度と、エレヒル様に会えないかもしれない!! そんなの嫌だ!! 嫌だよ―――っ!!>
不意にジュピアは、結婚を申し込まれた朝のことを思い出した。
『私の妻になって欲しい、愛しているよジュピア! 番になってほんの数日なのに、お前が私の視界にいないと、寂しくてたまらないんだ! だから発情期が明けたらすぐに婚姻の儀式をしよう?』
『エレヒル様、僕で良いのですか?! だって僕は男爵の息子だし… 少しも身分が釣り合わないから…』
『ジュピア、これほど愛しいと思う相手にめぐり会えたことを、私は神に… いや、カナルに感謝しているんだ! あの夜湖でお前に会ったのは、きっとカナルの導きなんだよ』
『カナル様の?』
『私たちはカナルが導いた、運命の番なのさ、だからジュピアと結婚できないのなら私は生涯独身を貫いて、爵位は従妹の子に渡す!』
背中で手首を縛られているため、涙で濡れた頬を拭うことも出来ず、ジュピアの眉間に苦し気なシワが寄る。
<逃げなければ!! 何とかして逃げないと! 大人しくしていても、僕は娼館で無残に放置されていた娼婦たちのように殺される!! このまま子ウサギのように、怖がってばかりはいられないよ!! 逃げなけば!! エレヒル様にもう一度会って、抱き締めてもらうために!!>
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