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番外編 ~悪夢の世界で…

122話 逃亡2 ジュピアside

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 冷たい地面に転がる無抵抗のジュピアを、フィエブレは卑劣にも何度も何度も… 蹴り上げた。

「このガキがっ!! このガキがっ!! よくも私をバカにして!! 殺してヤル!! 殺してヤル―――ッ!!!!」

「…っ! …っう! …っ! …ぅく!」
 ギュッ… と筋肉に力を入れ、丸めた身体を固くしてジュピアはフィエブレの大きな足で蹴られる衝撃から必死で自分を守った。

<うううっ…!! このまま蹴り殺されてしまうかもしれない!! 実家で従弟たちにも同じことをされたけれど、あんなのとは比ではないよ!!>

 フィエブレの重い一撃、一撃に耐えるうちに… ジュピアの意識は段々とボンヤリとして行く。 
<エレヒル様… エレヒル様… ごめんなさい! ごめんなさい!! 僕はエレヒル様の元へ帰れないかもしれません!! うううっ…>




 不意にフィエブレが蹴るのを止めて怒鳴り声をあげた。

「クソ―――ッ!!!!!」

 ガンンンッ!!! 剣と剣が激しくぶつかり合う音が暗い森の中で響き渡る。

 ガサッ… ガサッ… と草を踏みつぶし、ジュピアの周りに騎士たちが現われたのだ。

「罪のない無抵抗の人間に暴行を加えるなんて、お前は騎士として恥ずかしくないのか?! お前の騎士の誇りはどこに入ったのだ、フィエブレ!!!」

 フィエブレに剣で一撃を打ち込んで、ジュピアを蹴るのを止めさせた騎士が大声で叫んだ。

「その声はボスケか!! クソッ!! お前は国境線で探索をしていたはずなのに!!」

「お前の悪行を私に止めさせたくて、神が使わせたのさ!! だからこれ以上殺すなフィエブレ!! 誰かを道連れにしないで、逃げるなら一人で逃げろ!!」

「うるさい!! お前まで私に指図するな―――っ!!!」




 探索隊の隊長ボスケがフィエブレを引き付けている間に、ジュピアは腕を縛られたまま、騎士の1人に抱き上げられ、その場を大急ぎで離れた。

「ううっ…!」
 身体中の痛みでジュピアがうめき声を上げると…

「申し訳ない奥方様! 今はこの場を離れるのが先決なので!」
 ジュピアを抱き上げて走る騎士が、声を掛けて来たが…
 身体中を支配する激痛でジュピアは騎士に答える事は無かった。

<ああ… 僕は助かるんだ? エレヒル様に会えるの?>


「もう少しの辛抱です、奥方様!」
 ガサガサと騎士はジュピアを抱き上げたまま茂みに入り、突っ切ると森から開けた場所に出る。

 顔に澄んだ風を感じて、ジュピアは閉じていた瞳を開くと…
 森の中では真っ暗闇だった空に、明るい月が上っていて、その月を神秘的に映し出す濃紺の湖が現われる。

「あっ!」
 そこはジュピアが良く知る場所だった。







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