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番外編 ~悪夢の世界で…

134話 答え合わせ エレヒルside

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 少し気まずそうに、カナルはエレヒルから視線を動かし…
 ボルカンの腕の中で機嫌良くパタパタと元気に手足を動かす、小さな息子を見つめた。

「兄上が見た夢はおそらく… 僕が“夜の精霊”の加護を受けて、巻き戻る前の未来… いえ、世界ですね…」

「…巻き戻る前? ですか?!」
 現実離れし過ぎて、カナルの言葉の意味が一瞬、理解出来ず… エレヒルは眉をひそめて聞き返した。

「夫のフィエブレにも愛されることも無く、流産した僕は絶望し、湖で“夜の精霊”にこの身を捧げました」
 ボルカンの腕の中の子が、母親の顔を見て可愛らしくニコニコと笑い…
 カナルは我が子の手を取り、微笑みながら紅葉のような小さな掌にキスをした。

「そんなバカな!」
 自分自身が不思議な体験をしていても、カナルの話はエレヒルの許容範囲超えていた。

「旦那様…」
 不敬な言葉使いだとジュピアが、エレヒルに注意しようと腕に触れる。

「・・・・・・」
<だが、確かに私が見た悪夢は… 今、カナルが言った通りの出来事が起きていた>

 自分の腕に触れる細い手をギュッ… と握り、心配そうな顔で見あげて来るジュピアを見つめた。

<そう言えばジュピアは、悪夢の話をしても… 不思議がってはいたが、初めから私のことを疑ったり、話を否定したりしないで、素直に信じ受け入れてくれたな… 私もジュピアのように、少しは頭を柔らかくしなければ…> 

 夫を心配する優しい新妻を、安心させようとエレヒルは、大丈夫だよ… と微笑み軽くうなずいてやる。
 金色の瞳を穏やかに細め、ジュピアもエレヒルに微笑み返し、小さくうなずく。

「私の悪夢は“巻き戻る前の世界”… ということなら、もしかしてジュピアと会うのも、今日が初めてではないと… いうことですか?」
 エレヒルは試しにカナルに、たずねてみた。

「はい… ジュピアには本当に、良くしてもらったのに、僕は自分の気持ちを優先してしまい、何もかも投げ出して来たから… ずっと気になっていました…」
 戸惑うジュピアを、カナルは感慨深げに見つめていた。

「気になるとは?」

「エリダに代わり僕が王都に来ることになった時は… まだ、ジュピアは騎士団で働いてはいなくて… こんなことなら、実家の男爵家の話を、もっと詳しく聞いておけば良かったと、後悔していました… ありがとうございます兄上!」

「なるほど… 私の方こそ良い伴侶に導いて下さり、ありがとうございます」
<ジュピアの素性は、1つも話してないのに… カナルはジュピアが男爵家出身で… 騎士団で下働きをしていたことまで、知っている様子だ! これは参ったな…>

 どちらにしても、ジュピアとエレヒルを出会わせ、最愛の番となるきっかけを作ったのはカナルである。

 兄エレヒルと、弟カナルは微笑み合った。




「それでエレヒルが、精霊に与えられた力は、悪夢を見たことだけか?」
 それまで黙って兄弟の話を聞いていたボルカンが、不意に口をはさんだ。

「精霊に与えられた力… ですか?」
 きょとんとするエレヒルとジュピア。

 そんな2人を見て、国王夫妻は顔を見合せて、ニヤリッ… と笑う。
ボルカンは掌の上で、ボボッ…! と拳大の炎を躍らせてエレヒルに見せた。


「・・・はっ!!」

「わあぁっ!!」

 エレヒルとジュピアはギョッと眼をむく。






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