公爵に買われた妻Ωの愛と孤独

金剛@キット

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5話 秘密の結婚

  弟フルータに、簡単な別れの手紙を書き、良くしてくれた執事に別れの挨拶をすると、手紙を預けた。


<弟が外出中で幸運だった、もしこの場にいたら、面倒なコトになっていたはずだから…>


 弟の欲望に、怯えるコトも無くなると思うと、フロルは心からホッとした。

 子爵の分身のような容姿の弟を、思い出しブルリッと震えるフロル。



 母を侮辱する人たちの家に、母の遺品が詰まったトランクケースを、残して行きたくなくて…

 全部持って行こうと、物置部屋から運び出す。

 使用人たちも、喜んで手伝ってくれた。


 フロル自身の物は、カバンひとつに収まってしまったけれど。

 母が亡くなった後、フロルが持つには、分不相応だと義母に持ち物を取り上げられ…

 ほとんど、売り払われてしまったからだ。



 母が存命中、義母は子爵家夫人に、なれなかったから、フロルたち母子を恨んでいる。

 腹違いの弟フルータが、フロルと2歳しか年が違わないコトを考えると…

 ソレだけ長く、義母スィトリーノは愛人として暮らしてきたのだ。



 書斎に戻ると卑屈な笑顔で、媚びを売る子爵夫妻に、怖いぐらい冷ややかな公爵が、面倒そうにうなずいていた。


「お待たせして申し訳ありません、公爵様」

 頭を下げて、フロルが公爵をチラリと見ると目が合い…

 公爵はフロルに微笑む。


「もう良いのか?」


「はい」


 これ以上の長居は我慢できないと、言いたげな態度の公爵と共に、カタチだけの別れの挨拶を子爵夫妻に告げ、2人で書斎を出る。


<二度とこの家には戻らない… そして私はこの子爵家の人たちと縁を切り、家族だと思うのを止める…>


 どうしてもフロルの顔に、苦笑いが浮かぶ。



「フロル様‥ どうか何があっても、幸せになるコトを諦めないで下さい!」


 母の最期を一緒に看取ってくれた、家政婦のモリスさんが、涙ながら励ましてくれた。


<父… いいえ、子爵が、私は公爵の愛人になるのだと、私を侮辱する為に、ワザと使用人たちに、話したのだろう… 子爵はそういう人だから>


「今まで、ありがとうモリスさん、アナタもお元気で!」


 フロルを見送ろうと、忙しい仕事を抜け出し、車寄せに集まってくれた使用人たち一人一人と言葉を交わし、ハグと握手をして別れた。


 その姿を見ていた公爵が、馬車に乗って二人っきりになると…


「ズイブン使用人たちと、仲が良いのだな…」

「私にとっての家族はベント子爵家に仕える使用人たちの方ですから」

 ベント子爵家の人たちは、血のつながりはあっても、もう、フロルの家族では無いのだ。


「…すまない、また余計なコトを言った」


 困った顔をする公爵に、フロルは増々好感を持ち微笑む。



「いいえ」

「フロル… 実はこのまま教会へ行き、結婚も済ませてしまおうと思う」

「ええ?!!」


 上着の内ポケットから公爵は書類を2枚出して見せた。


「結婚許可証は持っているから」


 1枚目は結婚許可証、2枚目は離婚許可証。


「……」


<いつから用意していたのだろう?>


 許可証の申請から、受け取りまでは、かなり時間がかかると、聞いた事がある。


 それにオウロ公爵のような、上位貴族が結婚の場合…

 半年以上前には婚約発表をして、結婚の日取りを発表し…と、結構面倒な慣例がたくさんある。


 ソレを破るというコトは… 

 例えば婚前交渉で妊娠が発覚したとか、駆け落ちしたとか、醜聞になりそうな時にするコトだから、悪い評判が立つので滅多にしないのだ。



「後々のコトを考えると、なるべく目立たぬよう、秘密裏にした方が、得策だと思うのだよ」


 公爵はジッとフロルの返事を待つ。


<離婚を前提にした、跡継ぎを産むための契約結婚だから、コレで良いのかも知れない… フロル自身もあまり時間を与えられると迷ってしまいそうだから、この勢いのまま…>



「はい、公爵様にお任せします」

 シッカリ公爵を見つめて、フロルも同意する。


「ありがとう! あと、気になっていたのだが… 君は発情期が近いのか? さっきからクラクラして、抑制剤を飲んでいるから、耐えられるが…」


 
 真っ赤になってうつむくフロル。



「申し訳ありません… 始まるのは2,3日後かと… 公爵様の気が変わらないよう、今日は抑制剤を飲まなかったのです」

<浅ましくも、ベント子爵の言う通りにした、自分が恥ずかしい…>
 
 フロルはそれ程、公爵が恋しかったのだ。



「なるほど… 今日はお互い様というワケか!」

 カラカラと機嫌よく笑いだす公爵にホッとするフロル。


「今夜から初めても支障は無さそうだな」

「今夜から… とは?」


「子作り!」

 ニヤリと笑う公爵。


「……っ!!」

 公爵は向かい側の座席から尻を浮かせ、サッとフロルの唇を奪い、イタズラっ子のように笑う。

「今夜が楽しみだ!」




 フロルは顔だけではなく、全身真っ赤になり言葉を失う。



 公爵領の小さな教会で、御者の男性と、司祭様の奥様に見届け人になってもらい、2人は正式に結婚した。









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