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17話 憧憬
「フロル! …フロル! …フロル! 大丈夫か? ああ、クソッ!!」
ひどく焦った、心配そうな声で呼ばれ、うっすらと目を開けるフロル。
いつの間にかフロルは、寝室のベッドへと運ばれていた。
<ああ、また失神してしまったのか…?>
「大丈夫か? 辛いか? …すまない、私はまた夢中になってしまった…」
ションボリするディアマンテが愛しくて、ダルイ腕を動かしフロルは男らしいシャープな頬骨を撫でる。
自分の頬を撫でるフロルの小さな手を取り、ディアマンテは自分の頬を擦り付けるように、スリスリと押し付けた。
<この人のために、もっともっと健康に… 強くならなければ!!>
ラベンダー色の瞳に宿る光が… 一層、輝いた。
「ふふふっ… とても素敵だったからウットリ微睡んでいたのです、心配させてごめんなさい、ディア…」
「フロル、本当に大丈夫か?」
少し血の気の失せたフロルの頬に、ディアマンテは羽毛で撫でるような、優しいキスを落とした。
「はい… でも一人で身体を洗えないから‥手伝って下さい… ねぇ、ディア良いでしょう…?」
ディアマンテに心配されるのは、心苦しくもあるが、胸が暖かくなり、幸福感で満たされたフロルは、つい甘えてしまう。
「ああ、嬉しいよフロル …手伝わせてくれるんだ?」
甘えるフロルにディアマンテは、見るモノの心を、蕩けさせそうな笑みを浮かべた。
「アナタに甘えたいのです…アナタの温かくて大きな手に、私はもっと触れて欲しいから…」
「いつもそう言って欲しいものだ!」
ディアマンテにフロルは、頬を指先でくすぐられ、クスクスと笑う。
着崩れてはいるが、騎士団の制服を着たままのディアマンテに優しい言葉を掛けられ、フロルはときめき胸がキュウッ‥と鳴る。
「いつか仕事中のアナタを、見に行けたら良いのに… きっととても、素敵なのでしょうね…」
キラキラと輝く、ラベンダー色の瞳で見つめられ、居心地悪そうにするディアマンテ。
「いいや、第二騎士団の中で、一番気が荒い男だと思われているから、素敵からは程遠い姿を、見せることになるなぁ…」
「アナタがですか?」
「黙っていると、命令無視を当たり前にするヤツが多いから、入団した時に、私が一度叩きのめしてから躾けるんだよ… 公爵位を持っていると、逆に実力が無いお飾りの副団長だと、侮られるのさ」
フロルはぼんやりと、ディアマンテの袖を愛し気に撫でる。
「たくさん人が集まるところは、やはり問題も多いのですね… 増々見てみたくなりました」
<いつか見に行きたい… コッソリと誰にも見つからないように、もちろん旦那様自身にも…>
「そうだな…いつか…」
そっとフロルの額にキスを落とし…
ディアマンテは苦しそうに微笑む。
「さあ湯を運ばせよう! 少し待っていなさい」
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