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43話 醜聞
「あともう一つ… 私とオパーラの醜聞だ」
ハッと息を呑み、フロルは姿勢を正す。
「最初に何があったか、順番に話そう…」
「はい」
小さな拳をキュッと握りフロルは膝の上に置く。
「私は… 第二騎士団は、王宮主催の舞踏会の警備で会場周辺や、会場内を見回っていた…」
ディアマンテは太い指で顎を撫でながら、言葉を選び慎重に話し出す。
「オパーラは気分が悪くなり、1人で舞踏室を出て休む場所を探していたら迷ってしまったと…私は彼にそう言われ呼び止められた、だから休憩室に案内するコトにしたのだが…」
顔を上げフロルをジッと見つめるディアマンテは苦笑を浮かべる。
「オパーラは私よりも年上で、王室主催の舞踏会には何度も参加しているはずだ…今更迷うなんてあり得ないのさ…」
「旦那様を狙って声を掛けたのですね?」
頷くディアマンテ。
「休憩室へ入った途端、オパーラの足元がふらつき始め私に凭れかかって来た、だから彼を受けとめ近くの椅子に座らせ…」
ディアマンテは難しい顔をして話を止めてしまう。
「…旦那様?」
向かいの椅子から立ち上がり、フロルはディアマンテの前で跪き、逞しい膝に小さな手を置き、慰めるように撫でながら見上げる。
「オパーラの強烈なフェロモンに襲われたのだ」
柔らかな頬をカサついた指で撫でながらディアマンテはラベンダー色の瞳を真摯に見つめる。
「強烈?」
「ああ、強烈、攻撃的、まさにそういう言葉がピッタリだった… 私は理性どころか意識を半分刈り取られ、オパーラの項に噛みついた、彼が痛みと恐怖で悲鳴を上げても止めなかった…」
「まさか…っ! そんな旦那様が?!」
<優しい旦那様がそんなコトをするハズない!!>
「そう… 私がだ!」
フロルが青ざめる。
<まるで…フルータのよう…?>
「その場には他の招待客もいて… オパーラの叫び声で私の部下や… それに近くにいた招待客も…集まってきて、その中のアルファは全員オパーラのフェロモンの影響を受け獣のように襲いかかって来た」
頬を撫でるディアマンテの手がブルブルと震えているのに気付き、フロルは大きな手をギュッと励ますように握り締める。
「私はオパーラを取られまいと襲い掛かるアルファたちを全員殴りとばした…」
「ディア…」
「近衛騎士団が騒ぎを聞きつけて飛び込んで来た時…クリステルが… 私はアイツの泣き顔を見て… 正気を取り戻し…」
苦しそうに顔を歪めるディアマンテ。
その後、オパーラは発情中にも関わらず、抑制剤無しで舞踏会に参加したことを王室から厳重に注意をされ、それに巻き込まれた、ディアマンテとその場に居た他のアルファたちは、法的には罰せられるコトは無かった。
だが、ディアマンテがオパーラの項を噛んだ事実はまた別の問題で、明らかに罠に嵌ったと誰もが認めていても、番にしたのだから、責任は取らなければならないのだ。
フロルは泣いた。
本当は泣きたいのに、高貴な身分に生まれたせいで自由に泣けないディアマンテのために。
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