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76話 武器庫の奥の大いなる遺産
しおりを挟む騎士団本部の中庭から、転移魔法で田舎のレガロ伯爵邸へ移動すると… グランデはアスカルと共に、臨時で執事に復帰したアスカルの養父ペスカドの案内で、4代目伯爵と5代目伯爵が残した大いなる遺産を探しに、武器庫の奥へと向かった。
「恐らくこの内側にあるのではないかと、思われます」
武器庫に入ってすぐの左側に、ずらりと並んだ棚に隠れた壁面を、ペスカドは指さして…
グランデとアスカルに示した。
「何が保管されているかは、私どもには分かりませんが… 昔、父に付いて執事見習いになったばかりの頃、この奥にもう一つ部屋があるとだけ、教えられました」
「ああ、これがですか?! 僕はてっきり… 魔除けか何かだと思っていました!」
ちょうど部屋の角に位置する、壁の石に彫られた手のひらサイズの粗削りな魔法陣に、アスカルは不思議そうに触れて養父ペスカドを振り返った。
「いや… 恐らく、これはだな…」
ジッ… と魔法陣をにらんでいたグランデが手をのばし、アスカルは後ろに下がり場所をゆずる。
魔法陣に触れグランデが魔力を流すと、深紅の輝きをはなち、魔法陣が壁一面に広がった。
「うわああっ―――っ?!!!!」
思わずアスカルがさけび声をあげて驚くほど、大きく鮮やかな大輪のバラのように、深紅の魔法陣が美しく輝く。
「やはりレガロ伯爵家の血筋が持つ、魔力でしか封印が解けない仕組みの魔法陣だ!」
ニヤリと笑い、グランデはアスカルを見た。
「ああ… なるほど!」
先祖が残した大量破壊が目的の大型魔道武器は、気軽に出して使えるものではなく、取りあつかいに注意が必要な、きわめて危険な武器だから…
『直系の血をひくレガロ伯爵が、責任を持って魔王復活の時にのみ、使用を許可する』 …と警告する魔法文字が封印と共に魔法陣に込められていた。
「よし! ここに並んだ棚を全部、外にいる奴らに手伝わせて、移動させよう!」
外にいる奴らとは…
グランデとアスカルが、対魔王用の武器を田舎のレガロ伯爵邸に探しに行くと知った、王太子一行と、ちょうどその場に居合わせた、バハルや黒騎士たちが…
魔道武器(国宝級)がごろごろと眠る、伯爵邸の武器庫を見てみたい!! …と涎をたらしながら、グランデにダダをこね、結局その場にいた全員(グランデとアスカルをのぞいて9人)が、ぞろぞろと付いて来ていた。
「さぁ、急げよお前たち!!」
容赦なくグランデは、自分たちにくっ付いて来たオマケたち(王太子アニマシオンを含む)を働かせ、並んだ棚をすべて移動させると… グランデは壁の封印を解いた。
壁の向こう側には武器庫よりもずっと、広々とした部屋があらわれ…
威風堂々とした大いなる遺産は、部屋の真ん中に鎮座していた。
口径が小さいわりに、長い砲身の大砲がそこにあった。
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