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91話 砲台からの攻撃2

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 方角を先に調整しようと、 グランデは砲身ほうしんを動かすハンドルを大急ぎで回すが…


「クソッ!! デカブツめ… もっと早く動け! 動け―――っ!!」
 大きさも重量もある大砲の砲身を動かして調整するのに、グランデがどれだけ頑張っても、どうしても時間がかかってしまうのだ。


「グランデ様―――っ!! また触手の動きが活発になって来ました! 急いで下さい!!」
 長弓ながゆみで続けて氷の矢を放ち、魔王の触手を攻撃しながら大声でアスカルがさけんだ。  

「・・・・っ」
 グランデの位置からも、大砲を守る小結界を魔王のどす黒い触手が、包み込むように天井部分まで巻き付くのが見える。
 
 ようやく砲身の方角だけは調整が終わったが… 結界の外側はすでに触手にはばまれ、見えなくなっていた。

 黒騎士たちとアスカルは、活発に動く触手に向けて果敢かかんに猛攻撃を続けたが、魔王の姿が確認できるほどの、視界は確保できなくなる。


 命令を無視して、魔王の餌食えじきとなったエキボカル公爵らが、完全に取り込まれ同化を終え… 魔王の触手は再び、小結界内のグランでたちに狙いをしぼったのだ。


「試射をした時は確か… 山頂付近をえぐるように魔力砲弾が貫いたから、魔王の真ん中を狙うなら、もう少しだけ低めだな?」
 次にグランデは、レガロ伯爵家の領地で初めて大砲を試射した時の経験をいかし、今は見ることが出来ない魔王に向けて、仰角ぎょうかくを調整する。


 砲身後部にはめ込まれた、12個の魔石の中心に彫られた複雑な魔法陣に、グランデは魔力を流しながら、アスカルと騎士たちに大声で号令を出した。

「全員、後ろへ下がれ―――っ!!」

「グランデ様!」
 アスカルと黒騎士たちは、触手への攻撃を止めて、素早く大砲の後ろへと走る。


 魔石が1つずつ順番に、深紅に光り12個全部輝くと、砲身の内部でいっきに魔力が高まった。



 ドッオオオオンンンン――――――ッ!!! 

 ごう音が辺り一面に響き渡り… 小結界をすり抜け、どす黒い触手を散らしながら、大砲から放たれた魔力砲弾は閃光せんこうとなり、真っ直ぐ魔王へと向かった。


 魔力砲弾が放たれた瞬間のまぶしさと轟音に、アスカルはその場で屈んで耳をふさぎ、目を閉じた。


 恐る恐るアスカルが目を開くと、モウモウと土煙が舞い上がり、魔王がどうなったか確認することが出来なかったが… 黒騎士の誰かのつぶやく声が聞こえた。


「これは…? 結界が消えている?! 大砲の影響で、結界石が砕けたのか?!」

「えっ?!」
 あわててアスカルも確かめると… 今まで自分たちと大砲を守っていた、小結界が消失していることに気付いた。

 ハッ… と息をのみ、アスカルはグランデを見ると… グランデは顔を強張らせて、辺りをモウモウとおおう土煙の向こう側を見ていた。


 アスカルはグランデの視線の先に目を向ける。




 土煙の向こう側で、巨大な影がうごめいた。







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