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第17章 背中を預けるということ
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ルルビ村に本格的に冬が到来した。
寒さに強い従魔達は生き生きと庭を駆け回り、反対に苦手な従魔達は家の中で丸まって暖を取っている。
昨夜は遂に雪が降り、膝下まで埋まる……とは流石にならないが、地面はすっかり白一色になっている。
預かり処の庭はさておき、玄関付近は訪れる人の為にも雪かきをしなければならない。そしてそれは、ラーハルトとミノ太郎の仕事となった。
「あー、さぶさぶっ! ちょっと休憩……ん?」
手袋をはめていたとはいえ、指先は赤くかじかんでいる。
そんな手と手を合わせ必死に息を吹きかけていたラーハルトは、ふと預かり処の玄関先に人影があるのに気づいた。
「──では、預かり処さんにはこちらの件について、どうぞよろしくお願いします」
「はい、確かに。もしまた何かありましたら連絡して下さい」
どうやら預かり処に来客があったらしい。
中から出てきた誰かは、ぺこぺことツバキに頭を下げると首を縮こませて帰っていった。
「……今日、誰か来る予定なんかあったかな?」
ラーハルトは首を傾げつつ、ミノ太郎の「早く!」とでも言うようなブモオオオ! という声に急かされて、再び雪かきの作業に戻った。
♦︎
「うわ、なんですか、これ」
鼻の頭を真っ赤にさせたラーハルトは、預かり処の一室に置かれたまあまあ存在感のある壺にぎょっと声を出した。
「あ、雪かきお疲れ、ラーハルト。ミノ太郎も」
『ブモオオオ♪』
「あ、お茶どうも……じゃなくって、この壺なんなんですか?」
熱いお茶を手渡してくれたツバキに礼を言いつつラーハルトは謎の壺を凝視する。
「ああ、それね。預かった」
「預かったって……ただの壺をですか? なんか凄い壺とかなんですかこれ?」
高価なんですか? などと言いながら壺を眺めているラーハルトに、ツバキははあ? とため息をつく。
「あんた、うちがなんの預かり処やってるか覚えてる?」
ツバキの言葉に、ラーハルトはしばし停止してから「あ!」と声を出した。
「壺の中身を預かった、ってことですね?」
「ヒント1。この壺の中に収まるサイズ」
唐突にツバキからヒントが出される。これは預かった従魔を当てろということなのだろうとラーハルトは考える。
壺の大きさは精々高さが50センチで、横幅が30センチほど。
そこまで大きくなく、けれど小さすぎでもなく。
「……入っているのは1匹ですか?」
「複数」
1匹だけなら妖精兎などの中程度の大きさだろうが、複数となると大分小型の従魔になる。
が、それだけでは流石に答えを絞りきれない。
ラーハルトはツバキにヒント第2弾を求める。
「んー、じゃヒント2。飛ぶ」
「飛ぶ? 小型で飛ぶ魔物? ……三つ目烏とか金剛鳩の雛、ですかね?」
「はずれ。既に成体よ」
「ええええ~? ヒント3お願いしますっ!」
「じゃあ大ヒント。妖精種よ」
「妖精種?」
妖精種とは魔物の分類のひとつだ。一口に妖精といっても、その種類は多岐にわたる。害獣として有名なゴブリンも実は妖精の一種だ。
「う~ん……!?」
妖精種というヒントだけではとてもじゃないが正解まで辿り着く事が出来ない。
小型で、飛行能力があり、妖精種。ラーハルトはツバキからのヒントをぶつぶつと呟く。が、遂に降参だと手をあげる。
「ひらめき力が足りないわね」
「ゔっ」
しゅんと小さくなるラーハルトの頭を、ツバキはぽんぽんと叩くと正解を口にした。
「預かったのは──フェアリービーよ」
寒さに強い従魔達は生き生きと庭を駆け回り、反対に苦手な従魔達は家の中で丸まって暖を取っている。
昨夜は遂に雪が降り、膝下まで埋まる……とは流石にならないが、地面はすっかり白一色になっている。
預かり処の庭はさておき、玄関付近は訪れる人の為にも雪かきをしなければならない。そしてそれは、ラーハルトとミノ太郎の仕事となった。
「あー、さぶさぶっ! ちょっと休憩……ん?」
手袋をはめていたとはいえ、指先は赤くかじかんでいる。
そんな手と手を合わせ必死に息を吹きかけていたラーハルトは、ふと預かり処の玄関先に人影があるのに気づいた。
「──では、預かり処さんにはこちらの件について、どうぞよろしくお願いします」
「はい、確かに。もしまた何かありましたら連絡して下さい」
どうやら預かり処に来客があったらしい。
中から出てきた誰かは、ぺこぺことツバキに頭を下げると首を縮こませて帰っていった。
「……今日、誰か来る予定なんかあったかな?」
ラーハルトは首を傾げつつ、ミノ太郎の「早く!」とでも言うようなブモオオオ! という声に急かされて、再び雪かきの作業に戻った。
♦︎
「うわ、なんですか、これ」
鼻の頭を真っ赤にさせたラーハルトは、預かり処の一室に置かれたまあまあ存在感のある壺にぎょっと声を出した。
「あ、雪かきお疲れ、ラーハルト。ミノ太郎も」
『ブモオオオ♪』
「あ、お茶どうも……じゃなくって、この壺なんなんですか?」
熱いお茶を手渡してくれたツバキに礼を言いつつラーハルトは謎の壺を凝視する。
「ああ、それね。預かった」
「預かったって……ただの壺をですか? なんか凄い壺とかなんですかこれ?」
高価なんですか? などと言いながら壺を眺めているラーハルトに、ツバキははあ? とため息をつく。
「あんた、うちがなんの預かり処やってるか覚えてる?」
ツバキの言葉に、ラーハルトはしばし停止してから「あ!」と声を出した。
「壺の中身を預かった、ってことですね?」
「ヒント1。この壺の中に収まるサイズ」
唐突にツバキからヒントが出される。これは預かった従魔を当てろということなのだろうとラーハルトは考える。
壺の大きさは精々高さが50センチで、横幅が30センチほど。
そこまで大きくなく、けれど小さすぎでもなく。
「……入っているのは1匹ですか?」
「複数」
1匹だけなら妖精兎などの中程度の大きさだろうが、複数となると大分小型の従魔になる。
が、それだけでは流石に答えを絞りきれない。
ラーハルトはツバキにヒント第2弾を求める。
「んー、じゃヒント2。飛ぶ」
「飛ぶ? 小型で飛ぶ魔物? ……三つ目烏とか金剛鳩の雛、ですかね?」
「はずれ。既に成体よ」
「ええええ~? ヒント3お願いしますっ!」
「じゃあ大ヒント。妖精種よ」
「妖精種?」
妖精種とは魔物の分類のひとつだ。一口に妖精といっても、その種類は多岐にわたる。害獣として有名なゴブリンも実は妖精の一種だ。
「う~ん……!?」
妖精種というヒントだけではとてもじゃないが正解まで辿り着く事が出来ない。
小型で、飛行能力があり、妖精種。ラーハルトはツバキからのヒントをぶつぶつと呟く。が、遂に降参だと手をあげる。
「ひらめき力が足りないわね」
「ゔっ」
しゅんと小さくなるラーハルトの頭を、ツバキはぽんぽんと叩くと正解を口にした。
「預かったのは──フェアリービーよ」
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