あやかしあいし

さざなみ

文字の大きさ
1 / 1

出会い

しおりを挟む
妖が暮らす街、妖酪(ようらく)。

「此奴が侵入者かえ?」

「ハイ!シキサマ!」

争いを好まない妖達の為に妖酪には外部からの侵入を防ぐ協力な結界が張られている。

「お前が…此処の主か?」

「ええ」

彼女は恐ろしくも美しい妖酪の女帝。

それが屍鬼(しき)。

結界は勿論、様々な妖術を操る事ができる。

「追われている…助けてほしい。」

「………。」

人狼と呼ばれる類の妖は酷く傷ついていた。

女帝は迷った。

助けたい気持ちはあるが、この屈強そうな妖に深傷を負わせた者が妖酪の者達を傷付ける可能性がある。

「傷が癒えたら直ぐに此処を出ると約束する。頼む、美しい妖(えう)よ。」

「え!?」

屍鬼は美しい。

だが、屍鬼にしては美しいというだけ。

肌は顔から足にかけて乾燥し皮膚の薄皮は捲れ、包帯はあちこちに巻かれている。

少し戸惑った屍鬼に畳み掛けるように妖は喋り始めた。

「すまない名乗っていなかったが、私は獄狼(じんおう)。とある国で暮らしていたのだが訳あって旅をしているのだ。」

「訳?」

「嫁を探している。」

「!?」

獄狼の言葉と眼差しに戸惑う屍鬼に周りの小鬼(こおに)達が騒ぎ始めた。

「ダレニ、クチヲキイテイル!」

「マドワサレナイデ!屍鬼サマ!」

しかし、騒ぐ小鬼とは裏腹に屍鬼の心は振り子のようにグラグラと揺れ動いていた。

「もし!許しが得られるのなら、妖とゆっくり話もしてみたい!我儘な私をどうか助けてはくれないだろうか?」

「………いいでしょう。」

「屍鬼サマ!?」

「ただし!傷が癒えるまでです!」

「感謝する。」

屍鬼は小鬼達に獄狼の手当てを頼み、自分の館へと姿を消した。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...