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8、コトハvsウィリアム、射的1、(ざまぁ)

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殿


「ーーッッッ………すまない、私も騙されていたんだ、やり直さないか?」

「………今度は貴方か……」

講義も全て終了し、あとは帰るだけのとき、ウィルソンに引き留められる………どうせ無視しても、明日以降も絡まれたら厄介だ、面倒は先に片付けとくに限る、ハルバート様をセバスチャンさんに任せた………一応、万が一の保険として式神をハルバート様の影に潜ませておいたので取り敢えずは安心だろう……そしてウィリアムと話すが、呆れてしまった。

(……大丈夫だ、彼女は私にゾッコンだった……必ず食いついてーー)

「断る」

「ーーなッッッ??!!、何で??!!」

「………婚約者の両親が死んで喜ぶような鬼畜と付き合うなんて死んでもごめんだ」

「そ、そんな……わ、私は今でも君を愛してるのにか??!!」

「愛してるぅ?、笑わせないで、へそで茶を沸かしちゃうよ………アイシャの成績が下がり始めてるから私に乗り換えようとしてるだけでしょ?」

「なッッッ、何でそれを………」

「わかるに決まってんじゃん、だって彼女のサポートをしてたのは私なんだよ?、そのサポートがなくなったら成績は下がる、自明の理さ」

「くっ………け、けど……」

「悪いけど、そういう話なら失礼させてもらうよ………」

「ーーーまッッ」

「ーーーーウィリアムに相応しく無いでしょ?」

「ーーーッッッッ!!!?」

「………それじゃあね」

皮肉たっぷりに呟くとウィリアムは押し黙る、その間にその場を離れる私。

ーーーーー

ウィリアム視点 

「……ウィリアム、呼んだ理由はわかっているな……」

「…………はい」

少し前の記憶が蘇る、父に呼び出される自分。

「別に婚約者を変えることは良い、貴族同士の結婚など突き詰めてしまえば政略結婚でしかないのだからな……だが、乗り換えた先がデメリットしかない上、捨てた相手は王族の護衛になったというじゃないか……見極めが甘いと言わざるを得ない」

「ッッッ」

「もう手頃な相手はいない、何とかして婚約を結び直すか、アイシャの価値を上げるか、二つに一つ……できないと言うならば、この家にお前の居場所はないと思え」

「わ、わかりました………」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コトハ視点

「勝負だ!!、コトハ!!私が勝ったらお前は私と婚約してもらう!!」

「………またか……だからもう遅いって………」

お世話兼護衛の最中、またもやアホに絡まれる………ウィリアムだ。

「………」

ハルバート様を横目で見ると、すごく期待した目で私をみている………セバスチャンさんの方も一応見ると、目が言っている、ハルバート様の期待を裏切るつもりかと………。

「わかった、わかりましたよ、受けたってやる」

「ではついて来い」

流石にここでどんぱちするわけにもいかないので、模擬戦場へと場所を移す……が、この前とは違う方へと誘導される………歩いて行くと、遠くに的が並び立つ場所へと着く、魔法や弓矢の試射場だ。

「ルールは簡単、お互い一発ずつ、あの的に魔法や矢を当ててその点数を競い合い、勝った方が勝者だ!!」

「………なるほど、そう来たか」

おそらくだが、アイシャとの決闘の件は聞いているのだろう、下手に直接対決にすると、やられるかもしれないから、魔法が使えないと高得点の取れない勝負をウィルソンはふっかけてくる………。

「なんだ?、怖気付いたか?、魔力無しのキミでは不利な勝負だからねぇ……」

「お先にどうぞ、それとも私からした方がいい?」

「ーーッッッ、その減らず口を今すぐ黙らせてやる……原初の火よ、我このに望むは火球の礫!、火球の礫ファイアーボール!!!」

ウィリアムの挑発をアウトオブ眼中といった様子で逆に挑発し返す私、頭をヤカンの様に沸騰させ、詠唱を始めるウィリアム、詠唱が終わると、彼の怒りが具現化したかのように彼の掌に火の玉が現れる、荒々しく飛んでいく火の玉は的を焼き貫く。

「80点!!!」

「すげぇ、さすがウィリアムだ!!」

「何て魔力コントロール!!」

いつの間にかいたギャラリーが盛り上がる。

「80点?、真ん中に当たった様に見えたけど……」

「よくみろ、中に小さい円があるだろ」

「円?、あ、ほんとだ」

私は疑問を呟く、横のセバスチャンさんが答えてくれる。

「少しでも円の外に魔法弾を当ててしまうと外の円の点数になってしまう、できるだけ小さい魔法弾で狙った円からはみ出ないようにする、これがこの勝負のキモの部分だ」

「なるほど………」

「だが、小さくすぎると飛距離が足りなくなる、魔法弾を小さくするということは込める魔力を小さくするということと同義だからな、ウィリアムとやらは中々に魔力コントロールがうまいな」

この学院に通う生徒は基本的に魔力が高い者しかいない、だからこそ、どれだけ自分の魔力をコントロールしてるか評価基準なのだろう、中々考えられている。

「君が言い訳しないように、証人を呼んでいたのさ、次は君の番だ、あらかじめ言っておくと、弓矢や他の何かを使っても良いが貫通しなければヒットと認められない、あの的は物理的攻撃には異常に高い防御力を誇る、当てただけじゃ0点だ、さぁどうする?」

「魔力が無くて入学すらできない奴がウィリアムに勝とうなんて冗談だろ」

「アハハハハハハ」

「…………」

ウィリアムは勝ち誇ったように、饒舌に私に喋りかけてくる、ウィリアムの周りのとり巻き達も一緒に、呼応するように笑い出す。

(魔力がない彼女にはどうやっても高得点を取るのは不可能だ………)

「ーーー笑止」

「な、なに??!」

私は懐から術符を取り出す、術符というのは陰陽術を補助する道具の一つ。

「な、何だよ、そんな紙で何ができるっていうんだ!!」

『陽流、一の段……鬼火・白毫』

私が呟くと、術符が燃え盛り、その炎が一点へと凝縮されていく………ーーーー刹那、一筋の光が的の中心を射抜く。

「……おいおい、今の100点じゃねぇか???!!」

「う、嘘だろ??!!、初めて見たぞ???!!!」

「い、今の学院トップの生徒ですら90点台がやっとなのに……」

驚愕するウィリアム達……。

「………本当の実力者ってのは口数が少ないもんだぜ」

「ーーーくっっ、お、覚えてろ!!」

口元に指を立てて、ウィリアム達におどける私、彼らはすぐさま尻尾巻いてどこかへ行ってしまった。

「やなこった」

「………はしたないぞ」

「あ、すいません」

彼らの捨て台詞に対して、目の下を指で引き伸ばし、ベロを出す私、そんな私を嗜めるセバスチャンさん。

「すごいすごい、流石コトハだ!!!」

後ろで無邪気に喜ぶのはハルバート様。




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