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第1章 雪解けと嵐
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城の麓に広がる建国当時にできた町。その隣にある小さな村にフレアは住んでいる。
ようやく冬の寒さが緩み、春の穏やかな光が降り注ぐ。みんなが待ちわび春の一日。まだ、少し風は冷たいが、命の芽吹く匂いがする。うららかな日和は人々を外へと連れ出し、普段よりも多くの人が町を出歩いている。
久しぶりの快晴に心躍りながら歩いていると、立ち話をしていたご近所さんに呼び止められた。
「そろそろ、わしの薬がなくなりそうでのぉ。もらいに行くから準備しておいてくれないかい?」
「いつものね。分かったわ」
陽だまりのように笑い、準備をするために走り出す。
立ち話をしていた二人は彼女の笑顔を見て幸せな気分になる。そして示し合わせたように城を眺めた。
「何事もないと良いが……」
一人が、そうぽつりとつぶやいた。
ただいまと挨拶をしながら診療所の扉を開ける。
家主ではなく、患者から返事が返ってきた。彼と少し話をしていると、奥からクレアスが患者とともに出てきた。
「お帰り、フレア」
「お義父さん、ただいま。さっきアボットさんに薬頼まれたの。私が調合してもいい?」
「あぁいいよ。奥にカルテがあるから、ちゃんと調合表を見ながらやるんだよ」
クレアスの許可をもらったから、早速薬づくりにとりかかる。フレアは奥の部屋へと入っていった。
「もう、四年、いや五年になるのか。早いものだね」
「ほんと、いい子に育ったね」
フレアが消えたドアを見ながら、常連客がしみじみと会話する。
「はい、アンナを母にしてあげられた。フレアには本当に感謝していますよ」
えぇ、私はとても幸せでしたよ。クレアスの耳には妻アンナの声が聞こえたような気がした。
診療所の中も、外の天気と同じように、穏やかな時間が流れていた。
冬の終わりの穏やかな一日。これは嵐の前の静けさだったのかもしれない。
ようやく冬の寒さが緩み、春の穏やかな光が降り注ぐ。みんなが待ちわび春の一日。まだ、少し風は冷たいが、命の芽吹く匂いがする。うららかな日和は人々を外へと連れ出し、普段よりも多くの人が町を出歩いている。
久しぶりの快晴に心躍りながら歩いていると、立ち話をしていたご近所さんに呼び止められた。
「そろそろ、わしの薬がなくなりそうでのぉ。もらいに行くから準備しておいてくれないかい?」
「いつものね。分かったわ」
陽だまりのように笑い、準備をするために走り出す。
立ち話をしていた二人は彼女の笑顔を見て幸せな気分になる。そして示し合わせたように城を眺めた。
「何事もないと良いが……」
一人が、そうぽつりとつぶやいた。
ただいまと挨拶をしながら診療所の扉を開ける。
家主ではなく、患者から返事が返ってきた。彼と少し話をしていると、奥からクレアスが患者とともに出てきた。
「お帰り、フレア」
「お義父さん、ただいま。さっきアボットさんに薬頼まれたの。私が調合してもいい?」
「あぁいいよ。奥にカルテがあるから、ちゃんと調合表を見ながらやるんだよ」
クレアスの許可をもらったから、早速薬づくりにとりかかる。フレアは奥の部屋へと入っていった。
「もう、四年、いや五年になるのか。早いものだね」
「ほんと、いい子に育ったね」
フレアが消えたドアを見ながら、常連客がしみじみと会話する。
「はい、アンナを母にしてあげられた。フレアには本当に感謝していますよ」
えぇ、私はとても幸せでしたよ。クレアスの耳には妻アンナの声が聞こえたような気がした。
診療所の中も、外の天気と同じように、穏やかな時間が流れていた。
冬の終わりの穏やかな一日。これは嵐の前の静けさだったのかもしれない。
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