悪徳権力者を始末しろ!

加藤 佑一

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第二章 悪徳麻薬捜査官をやっつけろ!

第一話

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『押収された薬物を再度市場に流し、資金源としている可能性あり』

「これが次のターゲット?」
 華鈴が開いているパソコンの画面を見た梨名がそう声を掛けた。

「ええ、ホントふざけた話よね。コイツはね警察官僚を経て政治家になった奴なんだけど、その経験から押収した薬物を売って資金源とする方法を考えだしたみたいなのよ」

「ケッ!ホント、真面目な政治家っていないのかよ!金集めの事ばっか考えてんじゃん」

「薬物って危険な物ですよね?そんなに儲かる物なんですか?」

 天衣が不思議そうな眼差しを送っているようなので華鈴は別のページを開く、、そこには1回以上薬物を使ったことのある国民は何人いるか?と書かれていた。

「200万人!?」
「はっ!?マジ!!」

「数が凄すぎて全然想像がつかないんですけど、、」
「200万って言ったら、あれだろ、東京ドーム40個分って事だろ」

「40個ーー!?」

 なんだその表現は!?と思ったが収容人数5万人とすれば5×40で200と考えれば、あながち間違いでは無いかもと思ったので突っ込まないでおくことにした。

「そうよ、これが現状なの」
「危険だって分かってるはずなのに、なんで皆使っちゃうんですか?」

「多幸感が得られるからね」

「えっ!華鈴さん、もしかしてやったことあるんですか!」
 実体験に基づいたような物言いに引いた目を向ける。

「ある訳ないだろ、この根暗の引き篭もりがどこでそんなもの手に入れるんだよ」

「うるさいわね!余計なお世話よ。でも買おうと思ったら家でネット注文も出来るわよ」

「えー!!」
「嘘でしょ!」

「SNSで個人売買するって方法もあるでしょ」

「やっぱり、やった事あるんですね」
「そうだな、これはやってるな、、」

「だから、やったこと無いってば!」

「いい、薬物はね。止めようと思っても自分一人では止められなくなる依存性があるものなの、だから危険と言われているのよ。やってたらこんなとこにいないわよ」

「ホントですかー?」
「必死で否定してくるところが、なんか、怪しい、、」

 二人は冗談なのか本気で引いているのか、どちらか分からないような視線を向け続け、一歩ずつ離れて行った。失敗だった、きっと、今後私は二人から薬物依存者のレッテルを貼られ、弄られることになるだろうと容易に想像できた。


「じゃーーん。お待たせー、飛奈さん特製A5ランクの黒毛和牛でーーす」

「うっそー」
「わー、美味しそう」

「どうしたんだよこれ?」
「みんな頑張ったから、ごほーびでーーす」

 政治家の暴挙を世間に晒すため奮闘してくれたご褒美に、飛奈は特製のご馳走を用意していた。梨名と天衣は勢いよく席に着くと『いただきまーす』と言って頬張り出す。しゃぶしゃぶにして一口頬張るたび満面の笑みを浮かべる。

「あー、疲れが吹っ飛ぶー」
「頑張った甲斐がありましたねー、リーダーは食べないんですか?」

「二人の可愛い笑顔見てたら、お姉さんもうお腹いっぱい。ホント、可愛いねー」
 顔をうっとりさせながらそう言う。普通なら嬉しい言葉なのだが、飛奈に言われるとなんかゾッとする。

「あれ?華鈴まだ仕事してたの?」
 そう言ってパソコンの画面を覗き込む。

「あー、石井康静ね。こんな奴が厚生労働大臣だなんて信じられないよね」

「アイツの訪問先を中毒患者で溢れ返らせましょうか?」

「そうねー、でも中毒起こしちゃったら治療するの大変でしょ。特効薬ある訳でも無いんだから」


「いま華鈴から聞いたんだけど、薬物使用経験者が200万人いるって本当なのかよ?」

「ええ、そのうちの6~7割のおよそ130万人が大麻経験者って言われているわ」

「大麻ですか?なんか危ないものってイメージしかないんですけど。何で皆使っちゃうんですか?」

「大麻を使用するとね。気持ちが大きくなっちゃうらしいの。忙しなく生きているのがバカらしくなって、もっとのんびり生きていこう、なるようになるさ。みたいな感じで切迫感とかストレスから解放されたような感覚になるらしいのね」

「それの何が危険なんだよ?」

「なるようになる、のんびりゆったり考えられるようになる。一見すると良さそうな気もするけど。危機回避能力が著しく落ちるって事にもなるのよ。考えてみて、もし歩行者信号が点滅して赤に変わったのに、まあ大丈夫だろう、なんてのんびり考えていたら轢かれてしまいかねないでしょ」

「それは危ないですね」
「そうでしょ。だから危険と言われているの」

「それともう一つ有名なのが覚醒剤、これはね使うと自分が超人になったような気分になるんだって。何が来ても怖くないし、何でもできると思い込んでる状態になるの。しかも攻撃性が高まっている。赤信号も怖くないそんな感じね」

「常識的な判断が出来なくなっちゃうんですね!」
「こわっ!」

「薬を使って一時多幸感を得られたとしてもそれはまやかし。効果が無くなれば虚無感に襲われる。だからまた繰り返す」

 梨名と天衣はそのうちの一人が私なのか、と言わんばかりの視線を向けてきた。

「何見てんのよ!」

「一度手を出せば繰り返すようになる。繰り返すことにより需要が見込める。売人にとっては好都合、だからありとあらゆる手段を使って使用させようとしてくる」

「大麻はねゲートウェイドラックと言われていてね、大麻から始まってより強い刺激の薬物に移行しやすいと言われているのね。だから大麻を使わせようとしてくるの」

「大麻は他の国では合法のところもあるとか、医療用で使ってるところもあるから安全だとか言って勧誘するの」

「でもそれは大間違い合法にした方が管理しやすいとか、犯罪組織の流通を防ぎやすくなるとか、医療用も代替え品が入手しずらいとか、高価になってしまうとかで致し方なく合法化しているだけで有害性は世界共通の一般常識」

「そんな危険なものを規制しなければならない立場の人間が、資金源にするなんてもってのほか、生かしておく価値はないわね」

 そんな重い話をしながら飛奈は皿を5つ用意した。

「保乃さん、来るといいですね」

「えっ!あ、うん」

「天衣がボコったから来ないんじゃねーの?」

「また私批判ですかー、梨名さんだってナイフ突きつけたんでしょ。そっちの方がトラウマになってますよ」

「私はボコられたから御相こさまよ」
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