悪徳権力者を始末しろ!

加藤 佑一

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第三章 悪徳繁殖業者をやっつけろ!

第八話

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 部屋に戻ると何とも言えない虚無感に襲われた。飛奈も梨名も天衣も私と同じ気持ちのようだ一様に天井を見つめ、浮かない表情をしている。

「お疲れ、まあ甘い物でも食べて元気出して」
 そう言って華鈴さんはロールケーキを切り分け、小皿に取り分けると私達に差し出してきた。

「午後から気分転換に夢の国にでも行く?」

「行くー!」
 その言葉を聞いた天衣はテンションが一気に180度変わった。

「行くって、年中引きこもり女のお前が外に出るのかよ?」
「悪いの?」

「華鈴さんって日光浴びると煙になるんじゃなかったんでしたっけ?」
「私はアニメの設定の敵役か?」

「そうね。そうしましょ、なんか気晴らししないと」
 飛奈もそこでようやく重い腰を起こした。

 夢の国かー、何年ぶりだろ?10年以上行ってないかも。


「そういえば施設の人が年間に殺処分される犬が4000匹くらいいるって言っていたけど、殺処分ってどんなことされてるの?」

「知りたいの?」

「いや、あんな生き地獄のような環境になってるなら安楽死させてあげたほうがいいんじゃない?そう思って」

 私にそう言われた華鈴さんはパソコンを素早く操作し出した。そして『ああこれはダメなヤツだよ』と言ってくる。表示された画面を覗き込むと、殺処分される犬はドリームボックスと呼ばれるガス室に追いやられ、炭酸ガスで窒息死させられていると書かれていた。そこの壁には苦しんでもがいた跡と思われる引っ掻き傷などの爪の跡が残っているそうだ。

「ごめん、ちょっと気が狂いそう、、」

 聞かなきゃよかったと思い、頭を抱えながらソファーにドカっと倒れ込んだ。安楽死とはとても呼べない悲しい現実が待っているようだ。こんな事になっているなら反対意見が出て殺処分を減らす方向へと動くのが当然だろう。しかし殺処分を減らせば減らした分だけ別の問題が出てきている。

「もう犬を販売すること自体違法にした方がいいんじゃないですか?そしたら繁殖業なんての無くなるんじゃないですか?」

「そうね、でも需要がなくならない限りは無くならないわよ」

「そういえばペットショップで売れ残った子達ってどうなるのよ?」

「それも調べてあるわよ。大方は里親に返されて繁殖犬になって天命を全うするか、引取り業者に引き取られて里親を探してもらうかしてもらうようなんだけど、一つ気になるところがあって、、」

 華鈴さんが言葉を濁したようなので私はそこで身を起こし聞き耳を立てる。

「前の繁殖業者と繋がりがあるところっていうか、同じ代表者が経営している引取り業者があってそこはどうやらやばいのよ」

「どういうことだよ?」

「売れ残った子達を報酬をもらって引き取って、独自の方法で処分しているみたいなの」

「独自の方法って?」

「ハッキリした証拠が残っている訳ではないのだけど、アイツ等のメールのやり取りを見た私の想像なんだけど、と畜場で出た動物系固形不要物と一緒に焼却処分しているんじゃないかしら?」

「と畜場?」

「食用にする豚や牛を解体するとこだよ」
 天衣が頭にクエスチョンマークを浮かべていたので、補足してあげた。

「つまりどういうこと?」

「つまりこの件には黒幕がいて、私たちの戦いは終わっていないってこと?」
 飛奈は渋い顔をしてそういった。

「簡単にいうとそういうことね」


 2015年にはおよそ1万5千匹もの犬が殺処分の対象にされていたのというのに、昨今では4000匹にまで減少している。犬を飼育するには当然餌代などの維持費がかかる。売れる可能性のなくなった犬をいつまでも手元に置いておきたくない販売業者はお金を払っても引き取って欲しいと思う。
 そこにビジネスが生まれる。1匹1万で引き取ったとしても1万匹になると軽く年商1億円という算出が出来る。

「ホント金、金、金ですね」

「そいつらのアジトは割れてんの?」

「ええ、もちろん、やるの?でもここはヤバいよ?」

 梨名に勿体つけてないでハッキリ言えよ、と言われた華鈴さんは麻薬の時関係していた組織と同じ系列で繁殖業もその関係者らしい。と言ってきた。
 つまり引取り業者をやれば、流石にこの系列の組織に目を付けられかねないとのことだった。でも私の気持ちはもう決まっていた。全員を見渡すと私に力強い視線をぶつけて来る。どうやら皆んな気持ちは一緒のようだ。

「やる」
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