王妃になったので目標達成!〜ここから先は私のために何かしたいと思いまして。。。

えにし

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目標達成したので

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翌朝、ぐっすり。。。とはいかないが寝た。

今までの生活が長かったので開放されたからと言って突然だらける事はない。

だが、朝5時に目は覚めはしたものの、ベッドに寝たままぼーっとしていた。

(誰も起こしにこない。起きなくても怒られない。)

体を起こさないだけでも感動した。

起きなくて良い事実に感動した。

強制されない。

(うわぁぁぁ)

自然と顔もニマニマしていた。

笑っている事に気づくとより一層ニマニマしていた。

笑って良いんだ。

正妃になっても笑って良いだ。

嬉しくて、楽しくて、これから沢山の感動があるんだと思うとやっぱり目頭が熱くなる。

(私って泣き虫だわ。昨日もずっと泣いてた。泣いてない時はハイスペックといる時だけ。)

新たな自分を見つけた瞬間だった。

生まれた直後に正妃になれと決められ、厳重な管理のためピリついた環境にいた。

周りに居る者は誰一人として笑わなかった。

彼女の前だけでは笑わなかった。

初めて見た笑顔は王妃様だった。

王妃様との初めての茶会

今なら分かる。

だが当時は分からなかった。
だからこそ動揺した。

動揺を隠すので精一杯だった。
笑顔に対してどのように対応すればいいのか分からないから。
王妃様との茶会で笑顔には沢山の種類があると知った。

ある時は陽を照らしたような笑顔

ある時はそよ風のような笑顔

ある時は嵐が過ぎ去るのを耐えるかのような笑顔

どの笑顔も王妃様が見せてくれた。

茶会が廃止され、笑顔を見る機会は無くなった。
笑顔の奥にある心情を理解できないままずっとモヤモヤしていた。

結婚式が始まる前の挨拶で王妃様に会いに行った。

茶会が廃止となり、何かと理由をつけて公爵と公爵夫人が王妃様からの誘いを断っていた。
久しぶりの顔合わせとなる。
とても緊張していた。
どんな顔で会いに行けば良いのか。
デビュータントの贈り物。
王妃様が用意してくれていた。
未だ御礼を言えていない。

ドアの前でふぅと息を吐き、ドアをノックした。

中にいた侍女に名乗るとドアが開き部屋の奥に王妃様はいた。

部屋の中へと通され、最上礼をして挨拶、お礼の言葉、今後の誓いを順に言い終わり、最後にデビュータントの贈り物の御礼を伝えた。

王妃様の瞳は涙が滲み潤んでいた。
涙が陽の光に反射してキラキラしていた。

『サティー、あなたは本当に結婚しても良いの?』

王妃様の瞳がゆらゆら揺れる。

(不安と心配の表れ)

初めての茶会で初めて呼ばれた愛称。
公爵家では呼ばれることは無かった愛称

(王妃様は、今でもあの時のように。。呼んでくださるのですね)

彼女は不思議とポカポカする感覚を味わいながら、
『良いのです。今は。。。これで良いのです。』

王妃様はその一言で全てを悟ったように溜息を吐いた。

『サティー、こっちへおいで』

王妃に近くへ来るよう言われ一歩前へ出る。

ふわ

王妃は彼女をそっと抱きしめ背中を摩る。

『今日までよく頑張りました。目標達成おめでとう。』

あの日、あの時の見た笑顔が走馬灯の様に頭の中を駆け巡った。
抱きしめられた温かみを感じた。

あの時の私には理解できなかった。
何なのかさえも分からなかった。

でも今、分かった。
これが愛情なんだと。
心地良い。
優しい王妃様の香り。

啖呵を切ったかのように涙が溢れた。
止められなかった。

だって頑張ったから。
人なのに人ではない扱いに気づいてしまったから。
家族なのに家族ではなくて、愛情と思っていたものは偽物だった。

『いい?これからサティーが何をしようとも、それが、義母と娘の関係がなくなろうとも、私はあなたの味方よ。助けが必要な時はいつでも相談にきてちょうだい。分かった?』

王妃様は優しく抱きしめていた腕をギュッと強く抱きしめ直して告げた。

彼女は泣きながら頭を縦に振り『はい。』とだけ返事を返した。

彼女は初めて本当に甘えられる母の温もりを感じた。

彼女はベッドの中で昨日を振り返って、また泣いてしまった。

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