君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第一章「代償」

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 泰明は一瞬驚いたように目を見開いたものの、埒の開かないこの状況に諦めたのか素直に頷く。

「外にまだいるんですけど、良いんですか?」

 扉に手をかけた僕に神近くんが、少々投げやりに言葉を発する。ビクッと肩が跳ね上げ、僕は小さく悲鳴を上げると扉から後退る。やっぱり怖い。見えなくたって怖すぎる。

「ほんとお前、いい加減に――」

「良いですよ。祓ってあげます」

 泰明の言葉を神近くんが遮った。

「ほ、本当に?」

 僕は思わず、神近くんに詰め寄っていく。何が彼の気持ちに変化をもたらしたのか分からないが、やってくれるのであれば藁にも縋りたい。

「その代り、代償を払ってください。祓うだけじゃ、俺には不利益ばかりなんで」

 確かにそうだ。祓う側が取り憑かれてしまうことだって、十分ありえるのだ。某洋画のホラー映画でも神父が取り憑かれるシーンがある。それも実話だ。

 もちろん日本の霊媒師でも、そういった事があると都市伝説的に語り継がれている事例があった。神近くんの言い分は、オカルト好きの僕でも十分に理解できる。

「もちろんだよ。除霊するには力も使うし、危険性もあるんだから。タダでやってほしいなんて言わない」

 僕は神近くんの言葉に素直に頷いた。神近くんは少し呆気に取られた顔をしたものの、直ぐにニヤリと口元を緩める。

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